国際情勢の分析と予測

地政学・歴史・地理・経済などの切り口から国際情勢を分析・予測。シャンティ・フーラによる記事の引用・転載は禁止。

キプロスの分離壁の一部が撤去:国際金融資本の世界覇権崩壊に伴って分断国家の統合が世界的規模で進行中

2007年03月10日 | トルコ系民族地域及びモンゴル
国際金融資本の世界支配が揺らぐと共に、世界に残された分断国家の一つであるキプロスでも再統合の動きが出てきた。キプロスは緩衝地帯沿いと南部のギリシア系地域の二カ所に英国の軍事基地を有しており、そこは英国海外領土となっている。しかし、南北のキプロスが統合されることになれば、英国の軍事基地も撤収されて英国から領土がキプロスに返還される可能性が考えられる。キプロスの軍事基地は英国本土からジブラルタル・マルタ島を経てイスラエル・スエズ運河などに向かう海路の要衝であり、英国・イスラエル・国際金融資本連合の地中海の海上覇権(地中海帝国)には無くてはならないものであった。ジブラルタルとマドリッドの間の航空路線が2006年12月16日に開設されて分断が徐々に解消されつつあるのと同様の、地中海帝国解体の動きと考えて良いだろう。 冷戦時代に統合に向かった東西ドイツ、南北ベトナムも含め、第二次大戦後、あるいはそれ以前に生まれた多数の分断国家・分断地域はいずれも地政学的要衝にあり、分断状態による安全保障上の脅威のために国際金融資本系の軍事力の存在に依存してきた地域が多い(例外はパキスタン-インド)。イラク戦争の泥沼化とドルの国際基軸通貨としての地位低下に伴って、最近になって北アイルランド・ジブラルタル・キプロス・インド-パキスタン、南北朝鮮、台湾-中国で対立が緩和しつつあることは偶然ではないだろう。これらの対立は、分割統治という国際金融資本の得意技によって煽られ維持されてきたものだと考えられる。また、国際金融資本に大きく依存してきたイスラエルとシンガポールは周辺国の圧力を受けて現在急速に弱体化しつつある。スエズ地峡とマラッカ海峡という地政学的要所を支配するためにユダヤ人・華僑を送り込んで建国された両国は国際金融資本にとって最後の砦であり、それ故に攻防戦が激しいのだろう。盧武鉉大統領による南北朝鮮の統一推進路線についても、このような世界的な分断国家の解消推進の一環と見ることが出来る。EU結成による欧州統合も、大きな視点で見れば国際金融資本によって分裂・対立させられてきた欧州大陸国家の分断解消と言えるかもしれない。また、分断国家解消は単なる統一ではなく、民族や言語、文化、風俗、地理的境界による新たな分断を今後生み出す可能性もあることに注意が必要だろう。 . . . 本文を読む
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