彼は名刺を差し出した。それには彼の名前の下に次のように書かれてあった。
『清算---破産処理』
『公務に携わっている』という言葉が生み出す効果は計り知れないものがある。すぐに連想されるのは二枚舌を使ういかがわしい人物、法律を巧みに解釈する危険な人物、差し押さえ執達吏及びその立会人の先触れといったものなので、丁重に扱うのが無難というものだ。
「ああ、貴方様は公務の方でいらっしゃいますか」と老僕は言った。「それならば話は別でございます……どうかこちらへ御足労願いとうございます」
願われたフォルチュナ氏はその男について行った。案内されたのは二階の大サロンで、マダムを呼びにやりますので座ってお待ちくださいとのことだった。
「ようし!」と彼は思った。「始まりは上々だ」
一人で座っている間に彼はサロンにあるものを一々調べ始めた。これから戦場となる場所を点検する将軍のように。
この部屋からは、夜の間に繰り広げられた痛ましい騒ぎの痕跡は見えなかった。半分壊された大燭台が暖炉の上に乗せられている以外は。この燭台はパスカル・フェライユールが身体検査をされそうになったとき、これを武器に身を護り、逃げる際に中庭に捨てていったものであった。しかしこのようなことはフォルチュナ氏の脳裏には浮かばなかった。彼が不審に思って目を留めたのはシャンデリアの上に配置された巨大なシェードであった。それが何のためのものか理解するのにしばらく時間がかかった。
圧倒されるほどではなかったにせよ、この屋敷の贅沢さは彼を驚かせた。
「王侯貴族並みだなこりゃ……」と彼は呟いた。「頭のいかれた連中はシャラントン(セーヌ川とマルヌ川が合流する地域。古くから戦場となってきた)だけにいるとは限らんようだ……。マダム・ダルジュレがかつては貧しい暮らしをしていたとしても、今は全くその気配はないな」
やがてごく自然な流れとして、このように豊かな暮らしをしている女性が一体なぜド・ヴァロルセイ侯爵の共犯者になったのか、という疑問が浮かんだ。あのような卑劣で汚らわしい行為に加担するとは。フォルチュナ氏でさえ激しい嫌悪を覚えるような……。
「してみると彼女は共犯者ではないのかもしれん?」と彼は考えた。そして、運命の悪戯によってド・シャルース伯爵が置かれた立場---まだ認知していない娘と口にすることさえ拒否していた妹との間に置かれてしまった---のことを考えると、哲学的な瞑想に入り込んでいた。この数奇なめぐり合わせを思うと彼は身震いし、彼の内で漠然とした予感のようなものが、この状況を読み解く核心はそこにある、と密やかな声で囁いていた。