しかし可哀想な息子の方は彫像になってしまったかのようだった。彼が返事もしなければ身動きもしないのを見て、夫人は厳しい調子で続けた。
「あなたの決意や誓いとはこの程度のものだったのですか! あなたは立派にやり遂げてみせるとはっきり言いましたね。忍耐、策略、そして敵に悟られないことが必要な難しい仕事を。それなのにちょっと思いがけない事態が出現した途端、あなたは冷静さを失い、すっかり動転してしまう。私がいなかったら、あなたはあの女の前で正体を顕わしてしまっていたわ。私たち復讐は諦めねばならないわね。そしてド・ヴァロルセイ侯爵にむざむざと勝利を収めさせるのよ。もしあなたの顔が今みたいに開けっぴろげなままならね。あなたの顔をみれば考えていることが丸わかりよ。まるで開かれた本を読むようにね!」
パスカルは絶望的な身振りで頭を振った。
「お母さん、もっと聞いてさえいればよかったのに……」彼はもごもごと呟いた。
「何のこと?」
「あの女の話をですよ!……あ、あの娘さん、あの女の亭主が見覚えがあると言ったという、それって、マルグリット以外にはあり得ないと思うんです……」
「私もそう思うわ」
彼は茫然として、後ずさりした。
「そう思うって!」彼は口の中でむにゃむにゃ言った。「よくそんなに平然として、何の感情も交えずに言えますね。まるで当たり前のことのように、そんなことがあり得るかのように……。てことはお母さん、あの恥知らずな婆さんが仄めかしたことの意味が分からなかったんですか! あの女の下卑た笑い、それに底知れぬ悪意が目の中で踊っているのを見なかったんですか! なんであの女の話を遮ったんです! どんな酷い中傷を口にしようとしていたか、分からないのに!」
哀れな息子は額を両手で覆った。今にも爆発せんとするかのように。
「それなのに僕はあのおぞましい女を捻り潰さなかった」彼は繰り返して言った。「あの女を踏み潰さなかった!」
もしフェライユール夫人が、自分の感情のみに従っていたなら、息子の首っ玉に飛びつき、両腕に抱きしめ、共に涙を流したことだろう。しかし理性が彼女を圧し留めた。この素朴で平凡な一女性の心の中で、気高い義務の観念が声高に叫んでいた。それこそが家庭のつつましい女主人を支える礎であり、歴史がその名を記録する派手な放蕩女たちを遥かに凌ぐものだ。
夫人はパスカルに必要なのは慰めではなく励ましなのだと判断し、自分でも勇気を奮い起こした。8.1