◎すべてのものが、この一者の瞑想によるものだ
エメラルド・タブレットは、至福千年の基本思想。アメジスト・タブレットは、人類がすんなり至福千年に移行すれば、制作されることはない。アメジスト・タブレット・プロローグ(ダンテス・ダイジ)を讃してジェイド・タブレットを書いてみた。
12世紀頃西欧に現れたとされるエメラルド・タブレットは、ヘルメス・トリスメギストスの作とされ、心理学でもなく、哲学でもなく、物質変成の化学でもなく、クンダリーニ・ヨーギの見る現実そのものである。
ただし、西洋錬金術師達には様々に研究されたが、短すぎて内容に乏しいことから、ダンテス・ダイジの評価は低い。
『一、こは真実にして偽りなく、確実にしてきわめて神聖なり。
二、唯一者の奇跡の成就に当たりては、下なるものは上なるものの如く、上なるものは下なるものの如し。
三、万物が一者より来たり存するが如く、万物はこの唯一者より変容によりて生ぜしなり。
四、太陽はその父にして、月はその母、風はそを己が胎内に宿し、大地は乳母なり。
五、そは万象における完全なる父(テレスマ=原理)なり。
六、その力は大地の上に限りなし。
七、汝は、火と大地を、精と粗を、静かに巧みに分離すべし。
八、そは大地より天に昇り、たちまち降りて、優と劣の力を取り集む。かくて汝は全世界の栄光を己がものとして、闇はすべて汝より離れ去らん。
九、そは万物のうちの最強者なり。すべての精に勝ち、全物体に浸透するが故に。
一○、かく、世界は創造せられたり
一一、かくの如きが、示されし驚異の変容の源なり。
一二、かくて我は世界霊魂(アニマ・ムンディ=叡知)の三部分を備うるが故に、
ヘルメス・トリスメギストス(三倍も偉大なるヘルメスの意)と呼ばれたり。
一三、太陽の働きにかけて、我は述べしことに欠く所なし。』
(魔術師たちのルネサンス/澤井繁男/青土社P135から引用)
ヘルメス・トリスメギストスのことは、エジプト神話のトート(トース)と見ている(ユングとタロット―元型の旅/サリー ニコルズ/新思索社P85)。
上記引用文の『三、万物が一者より来たり存するが如く、万物はこの唯一者より変容によりて生ぜしなり。』の部分は、サリー・ニコルズは、『すべてのものがこの一者による。この一者の瞑想によるものだ。すべてのものがこの一者から生まれる。』(ユングとタロット―元型の旅/サリー ニコルズ/新思索社P86から引用)と訳している。
一者から万物が流出するのは、ユダヤ教の黒い焔で見るとおりであって、変ではない。
この一者の瞑想によるというところが、冥想の戯れ風であって、面白い。
『八、そは大地より天に昇り、たちまち降りて、優と劣の力を取り集む。かくて汝は全世界の栄光を己がものとして、闇はすべて汝より離れ去らん。』(魔術師たちのルネサンス/澤井繁男/青土社P135から引用)のところが、クンダリーニ上昇の秘儀と思われるが、これだけの記述では何もわからない。行法もないし、師のこともない。キリスト教社会では、ここまでが限界だったのだろう。