◎クンダリーニ・ヨーガの全貌-2
◎古今東西-1 ウパニシャッド・ヘルメス文書
『ニルヴァーナのプロセスとテクニック』の記載ほど明快に書いているわけではないが、文章で一言触れられているものには次のようなものがある。
まずはウパニシャッド。
『世界古典文学全集/ヴェーダ・アヴェスター/チャンドーグヤ・ウパニシャッドのサナートクマラの章』
(彼がこの肉身から出ていく場合、彼はこれらの光線とともに上昇する。彼はオームと言う、あるいは〔一言も発しないまま〕上に連れ去られる。意が消滅する間に、彼は太陽に達する。それは、実に〔ブラフマンの〕世界の門であり、知者達の入口であると同時に、無知なる人々の入るのを拒む門扉である。)
次に古代のヘルメス文書。
『ヘルメス文書/朝日出版社の中のヘルメス選集XIの部分』
『次に、自らかくのごとく知解するがよい。お前は、自分の霊魂に、インドへ赴くように命ずるのだ。すると霊魂は、お前の命令よりも速やかにかしこに居るであろう。
また霊魂に大洋(オーケアノス)へ向かうように命ずるのだ。すると霊魂は、再び同様に速やかにかしこに居るであろう。それは場所から場所へと移動して行くようにではなく、あたかも(いきなり)かしこに居るようである。
また霊魂に天へと翔けるように命ずるのだ。すると翼さえも必要としないであろう。いや霊魂を妨げるものとてないであろう。大洋の火も天空(アイテール)も、天の回転も、他の星辰のなす天体も(妨げはしないだろう)。
霊魂はもろもろの天体を突き抜けて翔けり、最後の天体にまで達するだろう。しかし、もしお前がそれ(最後の天体)をも完全に突き抜け、その外にあるもの・・・・世界(コスモス)の外に何かがあるとしてだが・・・・を眺めたいと思うなら,それも許されている。』
更に古代ギリシアのプロティノス。
ギリシャの哲人プロティノスの末期の場面。エウストキオスはプロティノスの弟子。
『さて彼がまさに逝去しようとして----エウストキオスがわれわれに語ったところによると----エウストキオスはプテオリに住んでいて、彼(プロティノス)のもとに到着するのが遅れたので、「君をまだ待っていたのだ」と彼は言って、それから「われわれの内にある神的なものを、万有の内なる神的なもののもとへ上昇(帰還)させるよう、今自分は努めているのだ」と言い、一匹の蛇が彼の横たわっていた寝台の下をくぐって壁にあいていた穴に姿を隠したときに息を引き取った。』
(プロティノス/中公クラシックスから引用)
このようなほのめかしに近い表現はギリシア神話のパエトーンの天の車を始め古今東西に多数存在する。
クンダリーニ上昇から神人合一の秘儀は、世間に公開することをついこの間まで許されていなかったので、大半がほのめかしなのである。錬金術書でも直接表現ができないので、卑金属を黄金に変えるという話にすりかえて、連綿と研究が続けられてきた。中国の仙人譚では、同様の事情で白日昇天という比喩にすり替えて世間の目をくらましてきた。仏教でもクンダリーニ・ヨーガは密教とされ、その核心部分は秘密なので、「密」教である。
当たり前のことだが、これは学問のための学問ではないので、ノウハウが必ず文書に残されているのものでもないし、しばしば口伝で伝わってきた。口伝は伝えられた本人が真意がわからずとも、いつかその口伝を伝えられた者の中にその真義を理解する者が出ることがあるという便利な?ものである。