◎古代インドとイラン
(2007-11-19)
古代インドのベーダなどでは、インドの神々とイランの神々は混在しているので、イラン原産のゾロアスター教のものであるマイトレーヤが、もともと仏教の弥勒であるとする説がある。
その後弥勒は、仏教のものとして、中国に入り、一方マイトレーヤは、マニ教にあって、イランから、8世紀頃アッバス朝の圧迫により、シルクロードを東進。則天武后の時代の中国に進出した。中国へのマイトレーヤ輸入はこの時期であって、それ以前ではないと思われる。
という理由は、もともと515年の北魏の大乗の乱は、弥勒下生の信仰を持つ宗教秘密結社の乱なので、中国には、弥勒信仰はもともと存在したからである。
そして、唐の武宗の宗教弾圧(845年会昌の法難)により、マイトレーヤのマニ教は地下に潜り、仏教の弥勒信仰と結びついて、弥勒教となった。ここで初めてマイトレーヤが中国で弥勒として習合したなどと説明する人もいるが、実はもともと古代インド・イランの昔から同じものであったように思う。
弥勒信仰は、北宋の方臘の乱や、元末の紅巾の乱や、清の義和団の乱の主体となったので、民衆叛乱の母胎となったといえることから、その後の中国の為政者から見ると厄介な信仰となった。
このようにマイトレーヤは、20世紀になって、異国趣味のイギリスの神智学グループがエキゾチズムを披瀝するために、わざわざインドの神々から引っ張りだして来たわけではなく、色々な国で、もともとわりと重要な高級神霊であると評価されてきたというのが実態ではないだろうか。