◎ユダヤ神秘主義ハシド派の一言
(2020-05-31)
ハシド派は、ハシディズムのこと。到達した人々がいることが、以下の言葉でわかる。
『ある師について、彼は「私はこの国では寄留者である」(出エジプト二・二二参照)という、モーセの言葉にならって、まるで寄留者のようにふるまったと語られている。
遠方から、生まれた町を出てやってきた男のように。
彼は名誉にも、彼を益するなにものにも心を向けなかった。ただ、生まれ故郷の町に帰ることだけを考えていた。
彼はおよそなにものにもとらえられないが、なぜなら彼は、すべてが異郷のものであり、自分は帰らねばならない、
と知っていたからである。』
(忘我の告白 叢書・ウニベルシタス マルティン・ブ-バ-/編 田口 義弘/訳 法政大学出版局P252から引用)
世俗感覚で読めば、エジプトが異郷でカナーンが故郷だが、ここではそう読まない。
あるいは、故郷を出て都市で暮らしていた者が老境にさしかかって、故郷でセカンドライフを送ることでもない。
聖者にとっては、この世のすべてが異郷であり、エクスタシーたる根源だけが故郷である。
ダンテス・ダイジは、『私は私という心身の異郷の客』である悲しみを歌い上げたが、全くそれと同じ感慨を持つ者がハシディズムにもいたのである。
悟りとは帰郷のことである。