◎浦島太郎の玉手箱
(2011-06-16)
今を時めく放射線障害に宇宙船内の飛行士はいつも晒されており、かつ無重力という特殊な環境で、宇宙飛行士の老化の進行は早い。
さて、体内で、フリーラジカルとは、余分な電子をもっているために、他の分子から電子を奪い取る力が高まっている原子や分子のこと。これは、イオンよりも活性度が高く、分子を引き離したりして、生細胞を完全に破壊してしまうことがある。
フリーラジカルは、酵素を使ってブドウ糖からエネルギーを作り出すときに細胞の中に出現する。このフリーラジカルが、他の分子から電子を奪うのが酸化で、酸化の連鎖は、細胞の膜を傷つけたり、DNAを損傷させたりする。
身体内の酸化が進むのは、老化であって、より損傷した細胞が増えた状態である。
放射線にさらされると体内の酸化が進むので、東日本の人々は老若男女を問わず、平常時より老化が進む環境に晒されているということになる。放射線障害では、放射線により、DNAが損傷し、体内の酸化が進行して、居住地域による程度の差はあれ、より老化が進みやすい状態となる。
若くして老化が進む典型例として宇宙飛行士の宇宙滞在がある。
宇宙飛行から帰還した宇宙飛行士は、次のような状態になることが知られている。
1.骨からカルシウムが溶け出して骨量が減少する(骨粗しょう症)。
2.赤血球の数が減って貧血状態
3.背骨を支える筋肉と下肢の筋肉が衰える(筋肉が落ちる)
4.腸の働きが悪くなり小腸からのカルシウムの吸収効率が低下
5.免疫系の働きが悪くなり、体調が不安定。
6.暑さ寒さをとても敏感に感じるようになり、眠りが浅くなる。
7.視力が低下してものがぼんやり見える。
これらの症状は、全体として見れば急激な老化であって、浦島太郎の玉手箱状態である。宇宙飛行士の体調不良は宇宙酔いだけでなく、もっと深刻だ。
(参考:宇宙飛行士は早く老ける?/ジョーン・ヴァーニカス/朝日新聞社)
そこで、我々の放射性障害に対する対策は、宇宙飛行士がとっている体調回復策を参考にすることができるのではないかと考えた。(対策篇に続く)