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バーキン片手に靖國神社

映画「パール・ハーバー」の恋人たち

2012-05-05 | 海軍


続きまして、「パール・ハーバー」です。
昨日、大上段から「911に向けての民意懐柔の準備ではないか」
などと書き殴ってみましたが、まあ、あまり本気になさらずに。

アメリカは常にどこかと戦争している国。
国としては、戦い続けることに国民が疑問を持たないような安直なアメリカ正義論を、
常にエンタメに紛らせて投入しておく必要があって、この映画もその目的で作られ、
たまたまそれが911の直前になっただけのことかもしれませんし(棒読み)

もう少し問題を卑小に見れば、この映画を製作したのはディズニーです。
どうせ失敗するだろうと日本におけるディズニーランドの経営権を、本国ではなく
オリエンタルランドに丸投げして、蓋を開けてみたらその大成功ぶりに歯ぎしりをした、
あのディズニーです。

日本人はディズニーが好きですが、ディズニーは日本が好きじゃないのです。これ本当。

「ライオン・キング事件」(手塚治虫のジャングル大帝を丸ごとパクった)をご存知ですよね?
なぜか、やたら中国を持ちあげていたムーラン、そしてこの「パール・ハーバー」。

強烈なレイシストで、反共産主義、反日思想の持ち主であったウォルト・ディズニーの、つまり
創業者の意志を受け継ぎ、ついでに当時ビッグな市場として今後の中国に資金投入するための
意向をくんだ自然な流れ、と観ることができるかもしれません。

つまり、国家というより「ディズニーの反日映画」なのだと。

ウォルト・ディズニーは、第二次世界大戦中や冷戦中、自ら版権を持つキャラクターを
軍や政府に無償で提供していましたし、当時製作された映画にはミッキーマウスが戦闘機に乗り、
零戦を射ち落とすシーンもあるそうです。(・・・・観てみたいけど)

ディズニーランドの日本進出に手を出さなかったのも、
「ウォルトが生きていたら絶対に反対した」という一事によるものだとわたしは思うのですが。

さて、今日は政治関係の話をそっちに置いておいて、この映画の人間模様について。

え?こんなどうしようもない恋愛ドラマの話なんぞ聞きたくない?
まあそう言わずに。

評判、悪いです。
ヒロインのイヴリン。
彼女の美点って、まず、なんですか?

美人?

おそらく、レイフもダニーも、彼女の美貌が好きだったわけです。
レイフは彼女に一目ぼれして、もう一度診察してもらうために人のカルテを使って診察を受けます。
ありがちなアメリカン・ムービーの手口です。
おかげで、お尻を彼女に見せる羽目になり、注射を二本もばっつりと打たれます。
そしてこの看護婦のイヴリンも、男が実はどんな奴なんだか、何にも考えちゃいません。

ただ目の前に現れては注射の作用で昏倒したり、シャンパンのコルクを鼻にぶち当てて泣く、
という間抜けぶりを披露する男に、いきなりキスを、それも自分からするのです。

このあたりがまずもってとんでもなくカルい。待ってた感満載です。

軍に看護婦として勤務することを、他の看護婦連中もそうですが、
「アーミーのボーイフレンド探し」程度にしか思っていない、という感じです。
取りあえず、あたくしの美貌に引っ掛かってきた気の良さそうな男がいたのでゲット、みたいな。

おまけに、恋人と元恋人がそろって東京空襲に参加することになったとき、この看護婦のしたこと。
自分が真珠湾攻撃のときに助けた通信将校に、
「ドゥーリトル隊の情報がわかる部署に連れて行って」と頼み、相手が渋ると、
「あなたの激動脈を指でつまんで止血をし、命を救ったのよ!わたしは」

・・・なんなんだこのヤクザ看護婦は?
自分の当然の任務を恩に着せて強請るつもりですか?
あなたは何のために看護婦になり、何のために任務に付いているのですか?

この、恋愛至上だか何だか知らないけど、公私混同を当たり前のようにやってのけるなど、
実際の従軍看護婦への侮辱でもあるし、こういういい加減さを何より嫌う日本人には
全く共感のできないシーンだったのではないでしょうか。


さて、このレイフとイヴリン、出会いがそんななので、愛したの何のと当人たちが言っても
「しょせんお尻がかわいかったからだろ」
程度の意味しか、この恋愛には認められないのです。
いや、実際の恋愛も、こんな他愛の無いものが大半なんでしょうけど。

だから、レイフが戦死したとたん、声をかけてきたレイフの親友ダニーをコロっと好きになります。

またこの映画の恋愛表現が、お定まりのアメリカ映画の踏襲。
わたくし、「愛している」なんて主人公がまじで言いあう映画を久しぶりに見ましたよ。
そして、後ろめたさもあって、なかなか素直になれない女を、男はもうひと押しするため、
軍規を破って無断で上空飛行に連れ出すのです。
戦闘機で。(げんなり)

所詮お尻でふらふらするようなレベルの女ですから、飛行機なんぞに乗せた日にはもうイチコロ。
見つからないように二人でパラシュート倉庫に逃げ込んだあたりでこの後の展開が読め、
(スリルがまた女を大胆にさせるってね)お約束のラブシーンが始まった頃には、
もう百回くらい観た映画のような気さえしてしまいました。

まあ「バック・ドラフト」の消防車のホースの上、みたいなラブシーンが欲しかったんでしょうねえ・・。


そんなこんなで大はしゃぎしていると、生きていたレイフが欧州戦線から帰還。
生きていたとはお釈迦様でも知らぬ仏のレイフ登場。
三すくみの三人。

いちばんここで可哀そうなのはレイフくんでしょう。
かれにしても、彼女のどこに惹かれたかと言えば綺麗だったからとしか言いようがないけど、
それにしても、こんなにあっさりと自分のことを忘れて、しかもちゃっかり親友とくっつくような、
その程度の女であった、と知ったことが最大のショックだったと思われます。

でも、レイフくん、これは仕方がないのよ。
イヴリンにとっては男性はこの世を生きていくための大事な命綱。
切れてしまえば次のを探すしかないのですよ。
ちょっと忘れるのが早すぎるけど、そんなこと言ってたらチャンスは無くなってしまうし。

可哀そうなレイフ、自分が彼女のことを思って、最後の夜を共にしなかったのに、
ダニーの野郎はしっかり彼女を妊娠までさせたことを知り、二重にショックを受けます。

いや、これは怒っていいよ。

「死んだと思ったから」っていうのは、実に狡猾な言い訳に過ぎない。
レイフのことをネタに盛り上がってしまった、ただし本人の意向はあっちに置いておいて、
というのが本当のところですからね。

男性二人が三角関係で殴り合ったりしていると、おあつらえ向きに真珠湾攻撃が起こり、
問題は一時棚上げに。(もしかしてそのための『パール・ハーバー』?)
この際二人で日本機を多数撃墜したので、ドゥーリトル大佐からスカウトされ、東京の空襲に
参加することになります。

・・・って、戦闘機乗りがいきなり艦爆に?

まあいいや、この程度のおかしなことを指摘していたら、次回で指摘する予定の「ヘンなこと」
はそれこそきりがありませんから。


そして、その出撃が決まったとき、最後に会いに来たイヴリンの腹黒さときたら・・・・。
まずレイフに向かってうらみがましく、
「ワタシを愛したことを忘れたみたい」
そりゃ忘れたいだろうよ。そしてその原因を作ったのはあんただ。
そして、「妊娠が分かった日にあなたが帰ってきた」などと、言わなくてもいいことを、
わざわざ父親であるダニーには言わず、レイフに言うのです。

わからん。彼女の意図がわからん。

「心はダニーに捧げるけど、夕陽を見たらあなたを思い出すわ。
あなたをこれからも愛してる」

って、何をしっかりコナかけてるんですかこのビッ●は?
そして、その直後ダニーと二人きりになって熱い抱擁を・・・・。
こっちにももちろん「愛してるわ」

はいはい。(げんなり)

これは、どっちが死んでも、生き残った方とどうにかなろうって下心満点じゃないですか。
結果、子供の父親であるダニーは戦死。
(因みにわたしはレイフが生きて帰って来たとたん、最終的にダニーが死ぬのを確信しました)

当然のようにイヴリンは生き残った方をむりやり父親にして子供を育てさせることになり、
後味の悪いハッピーエンドでこの映画は終わります。

レイフに対して最後まで同情が続かないのは、これですよ。
こんな調子でしっかりどちらをも確保している女の手のうちにまんまと嵌って、
自分の子でもない女の心変わりの結晶を唯々諾々と押し付けられている。
「歯がゆいやつだな。もうこんな女、フッちゃえばいいのに」と映画を観ているうちの、
52パーセントくらいはそう思ったのではないかと予想します。

思うに、この映画は帰ってきたレイフとイヴリンを結婚させるべきではなかったね。
イヴリンに同情と共感を得させようとしたら、ここは思いっきり男前に、

「一時でもあなたを忘れたとき、あなたは私の中で死んだの。
卑怯者になりたくないから、ダニーの子は一人で育てるわ」

そしてみんなが一人ぼっち、の方が、少なくとも悲恋としては受け入れられたと思うんですが。


さて、もし、二人とも生きて帰ってきて、ダニーとイヴリンは結婚したとしましょう。

こういう女性はね・・・・必ず夫婦が倦怠期になって喧嘩にでもなったとき、もう一方の男の
ところに行って「最近彼とうまくいっていないの」などといいつつちゃっかり浮気します。

これは確実。
だから、この映画の男二人、お互いのためにも、どちらかが死んで良かったんですよ。
死んだ方も子供だけは残せたわけだしね。

独身の方々、子供の日だっていうのに?夢のない感想ですみません。