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「パールハーバー」と映画「チーム・アメリカ」

2012-05-14 | 映画

先日「パールハーバー 世界の感想から」という、「パールハーバーシリーズ」をアップしましたが、
これはその前回に予告したところの「最終回」ではありません。
本日が正真正銘の最終回。
確認したかったのは、映画「チーム・アメリカ」が「パール・ハーバー」をどのようにディスって
(これは、disapproveで解釈お願いします)いるかということ。

巨額の製作費を投じて「ハリウッド・ガベージ」を作り上げたマイケル・ベイ、ジェリー・ブラッカイマー、
そしてディズニーエンターテインメント。
彼らへの後世の評価は決して芳しいものではありませんが、取りあえず、
かけた総製作費に比例するポップコーンの総収益くらいは元を取った模様です。

しかしながら、世界は広い。そしてアメリカはもっと広い。
必ず大々的にこの駄作ぶりを糾弾し、あるいは皮肉る媒体が在るはず。
アメリカ人は大半が馬鹿ですが、馬鹿でない人と、優秀な人のレベルは突き抜けています。
どこかの国のように国民全体が一つのものを支持するというようなことは、かつて湾岸戦争に
派兵を決めた瞬間のパパ・ブッシュへの支持率(確か95パーセントだったかと)以外には
あまりありえないことなのです。

同じアメリカ人であればこそのキツーい批判をパロディでかましてくれる
心あるアメリカ人が必ずいるはず。お願いだからいてくれ。

そんな思いで探したところ、この映画を見つけました。

「チーム・アメリカ ワールドポリス」

冒頭画像でお分かりのように、サンダーバードのような人形劇。
チーム・アメリカとは、世界の警察気取りな単なる私設警察のグループ名です。


ここが彼らの秘密基地。

 

テロリストがあらわれたという情報があればそこに馳せ参じ、悪者をやっつけるためには
手段を選びません。

 

歴史的建造物をも破壊しつくします。

 

この、周りが全く見えていない独善的な「世界の警察」を名乗る団体、その名が
「チーム・アメリカ」であるということ自体が、とんでもないアメリカへの皮肉となっています。
製作者の言によると
「自分たちが世界中から愛されていると信じ込んでいる」
彼らはアメリカ人の論理で地球を守ろうとするのです。
たとえそれが世界中から嫌われるやり方であっても・・・。

テロのせん滅のためには手段を選ばずどこにでもしゃしゃり出る、このチーム・アメリカ、
当然のことながら、彼らを強く非難し、糾弾する団体が・・・・



あれー?「パール・ハーバー」のドゥーリトル准将じゃないですか!
俳優協会の会長であるアレック・ボールドウィン。
俳優の代表として、チーム・アメリカへの抗議を表明します。

 

F・A・Gとは俳優協会のことのようですが、どうやら別の意味もある模様。

  
  
皆でイラクをテロリストせん滅のために破壊しつくしたチーム・アメリカへの非難をしています。
ちょっと・・・・これって・・・・(笑)

マット・デイモンだけがひらがななのは、え~・・・・・。

物語は、この「やたら政治発言をしたがる俳優たち」とチーム・アメリカとの戦いに、
ある意味、主人公とも言えるこの人物が加わり、俳優たちを味方につけることによって、
よりカオス化します。



実物よりかなりキュートでハンサムな金正日。
世界征服の野望を持ち、自国に世界のVIPを招待してそこで爆弾を仕掛け、各地に
911の235倍のテロを仕掛けることを企んでいます。





片やチーム・アメリカでは、俳優協会に対抗するため、「Everyone has AIDS」という
ヘンな曲を持ち歌にしている俳優のゲイリーをスカウトしてきますが、
「いやなら帰っていい」
と言うなり、本当にゲイリーは帰ってしまいます。

考えを変えてもどって来たゲイリー、実は金髪のリサに惹かれていたためでした。
ゲイリーには兄を失った悲しい過去がありました。

  

この告白に胸を打たれたリサはゲイリーと激しく愛し合います。(R-18)

片や、独裁者金正日。
誰も自分の気持ちなど分かってくれない、と孤独な気持ちをバラードで歌いあげます。



製作者にとって、彼は「バックス・バニー」のような漫画的なキャラクターで、
実在の人物を、腹を立てながらも愛さずにはいられない悪役に仕立てました。

さて、それではいよいよこの映画のハイライト、主人公ゲイリーが、一度リサの元を去り、
歌うバラード「Pearl Harbor is sucked」をご紹介しましょう。

英語原文と日本語訳を全文掲載します。

 

I miss you more than Micheal Bay miss the mark
When he made Pearl Harbor

I miss you more than that movie missed the point
And that's, an awful lot,girl
And now
Now you're gone away

And all I'm trying to say is Pearl Harbor is sucked
And I miss you

I need you like Ben Afflek needs acting school
He was terrible in that film

I need you like Cuba gooding Jr. needed a bigger part
He's way better than Ben Afflek and now

All I can think about is your smile
And that shitty movie too

Pearl Harbor sucked
And I miss you

Why Micheal Bay get to keep on making movies?
I gess Pearl Harbor  sucked

Just little bit more than I miss you

訳:
君がいなくてさみしい
マイケル・ベイがパール・ハーバーをやりそこなったよりずっと
君がいなくて辛い あの映画の失敗よりずっと

酷いもんだったさ、あれは
君は去っていった

言わせてもらうけどパール・ハーバーはクソだってこと
それと君が恋しい

君が必要なんだ ベン・アフレックに俳優学校が必要なように
あいつはあの映画で酷かったから

君が必要なんだ キューバ・グッディング・Jr.にはもっと大役が必要だったように
彼はベンアフレックよりずっとましだった そして今

君の微笑みを思うとあのクソ映画のことも思い出す

パール・ハーバーはクソだ
そして君が恋しい

なぜマイケル・ベイは映画を取り続けていられる?
パール・ハーバーはクソだ

君を失った僕と比べてもさらに少しクソだ

映画の字幕は曲訳っぽい部分が多かったので、自分で翻訳してみました。
キューバ・グッディング・Jr.は、ウェストバージニアの皿洗いで、黒人で初めて勲章をもらった
ドリス・ミラーを演じた俳優です。

この映画は、製作者に言わせると「ジェリー・ブラッカイマー映画の人形版」
なんだそうです。
当初、下地を「アルマゲドン」にしようという計画もあったのだとか。その理由は

「本人は気づいていないが、あれはコメディだ」

独善的なアメリカの描き方(アルマゲドンしかり、パールハーバーしかり)、
やたら派手な爆発シーン、
深みが無く、意味もなくいきなり激しく愛し合う男女の恋愛模様、

こうしたブラッカイマー作品への風刺と共に、世界の警察を気取るアメリカという国家、
(この映画のタイトルをもう一度思い出して下さい)、そして、
小賢しく政治や何かに口を出したがる、インテリぶった俳優たち。
彼らの嫌うものがこの映画ではコテンパンに描かれています。

せっかくなので、ストーリーの続きを少し。

 

金正日の思い描く「世界各地のテロ」の様子。
日本の屋台やハリウッドを爆破して、一体どうしようと言うのか・・・・・。



チーム・アメリカの本拠地は、左派監督のマイケルムーアの自爆によって破壊されます。
ゲイリーが基地に戻るとそこにはリーダーのスポッツウッドがいて、
「仲間に戻りたいなら言うことをきくのだ」とあることを要求します。(R-18)



一方、世界の元首の元に、金正日からの招待状が届きます。

 

天皇陛下ご夫妻については何も申し上げません。
しかし、右の方は、プロイセン王国のウィルヘルム二世?
国旗が・・・・

このあえて無茶苦茶な考証の数々。
これも、またパール・ハーバーなどに顕著だったなあ、とふと思い出してみる。

 

北朝鮮の金正日のパレスで(中華風)は、国家元首が集まり、まずはエンターテインメント。
やっぱりこいつら、中国と朝鮮の違いがわかっとらん。
ああ、そう言えばパールハーバーでも(略)
製作者たちは「資料を読んでもわからなかったので想像で作った」と・・・。
素直にそう言えばいいのよね、パールハーバーも。

 

そして、チーム・アメリカと、警備の俳優たちの間に銃撃戦が・・・。
そもそもなぜ人形劇にしたかという理由と言うのが
「俳優が大っきらいだからさ」

「俳優と言うのは一人の例外もなく自分を特別だと思っている。
世の中に俳優ほど勝手な連中はいないね。
どいつもこいつも大っきらいだ。だから使わない」

同じ製作者による「サウス・パーク」もこの映画と同様
「セレブリティをコケにする映画」という目的で作られました。

「人形にすれば殺せるだろ」

そして、シリアスな物語をリアルな感情表現で作るというのも

「人形だから 無理」

ということで放棄。

この人形の頭部にはICが埋め込んであり、口の動きや瞬きもコンピューター制御、
全てにとてつもない職人芸の極を注ぎこんであるのですが、それについては

「ここまで来ると怖いね。アホな脚本なのに」

そして、製作総指揮を「マトリックス」の撮影監督ビル・ポープに依頼することになり、
脚本企画のマット・ストーンとトレイ・パーカーは
「人形劇だよ」「経歴に傷がつくよ」と一応確かめたら(笑)ポープは

「構わない」

と引き受けてしまったそうです。
そして、その驚くべき一流のこだわりで、一切CGを使わない人形のアクションを作りあげました。

ところでこんなシーンがあります。



チームのメンバーが俳優であるゲイリーを嫌う理由を告白するシーン。
(恥ずかしくて訳せません…自己責任でどうぞ)
小さいときにキャッツを観に行ったときの体験が、彼を俳優嫌いにしたのです。

ポープは戦いの合間に登場人物が心情を打ち明け合うこういうシーンについて
「アクション映画の王道だ。しかしどのアクション映画にもばかげた部分はある。
その馬鹿馬鹿しさを過激な手段で指摘しているんだ」と語っています。

 

金正日のペットの黒ヒョウに襲われるチーム・アメリカ。
なんだか、牙、猫にしては長くないですか?・・・・・・一切CGを使ってないってことは・・・・
付けた?どうやって?

さて、このお馬鹿な映画のストーリーについては、興味を持った方が観るときのために、
これ以上説明するのはやめておきます。
(単に面倒になっただけとも言われている)
それにしてもマットとトレイが、これだけブラッカイマー映画を揶揄しておいて、

「アクション映画は、本当に大変だった。
おちょくってみて、ブラッカイマーの実力がわかったよ」

と、実にアメリカ人らしいコメントで抜け道を作っているのが笑えます。

劇場用予告編のテロップは、

「アレック・ボールドウィン!ショーン・ペン!ティム・ロビンス!ジョージ・クルーニー!
リブ・タイラー!
スーザン・サランドン!マーティン・シーン!ジャニーヌ・ガードファルド!
マイケル・ムーア!
ジョージ・W・ブッシュ!ジョン・ケリー!そしてキム・ジョンイル!

・・・は、全員これを観たら怒り狂うであろう!」



少し観てみたくなったあなた、御覧になるときはくれぐれもお子さんのいない時間にね。
R-18で残酷シーンその他、満載ですから。

それにしても「パール・ハーバー」を観なかったら、この映画もおそらく一生観なかったわけですが、
(まあ、観なくても何の支障もありませんが)また一つあらためて実感したのは、
ああいう映画は勿論、こういうものを生み出すのも、またアメリカ人、
やっぱりアメリカって底しれない国だ、ってこと。
全身全霊の真剣勝負で馬鹿をやる。
内容はともかく、わたしはこの製作者たちに、ブラッカイマー&ベイの235倍好感を持ちました。

そして、ベン・アフレック(パール・ハーバーのレイフ役)は本当に演技が下手だったんだ、
ということもあらためて確認しました。

それでは、俳優協会の会議のシーン、映画ではカットされたベン・アフレックの登場シーンを
「パールハーバー」を語るシリーズのエンディングに採用させていただいて、
このシリーズを終わります。

長い間お付き合いありがとうございました。