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映画「パール・ハーバー」~東京大空襲編

2012-05-10 | 映画

映画「パール・ハーバー」前半までのあらすじ

卑怯なイエローモンキー、日本軍の奇襲攻撃で真珠湾では多くの人命が失われた。
アメリカは、軍がしり込みする中、一人気を吐いて「やられたらやり返すのだ」と
復讐を呼び掛ける
合衆国大統領FDRの強い意志の元、その攻撃目標を東京に定めた。


この映画を観て、まだ大半のアメリカ人と言うのがこういう与太話を信じているのだとしたら、
大国アメリカの衆愚政治はまだまだ有効であるという気がいたします。
かつて学生運動によって厭戦感が蔓延し、結局負けてしまったベトナム戦争のような失敗の轍を
二度と踏まぬように、好戦国家アメリカとしては、歴史の改ざんでも何でもいいから、
とにかくアメリカのすることは全て正しい、と民衆に刷り込み続ける必要があるわけで、
それもある程度成功しているということなのでしょうか。

(「日本人ざま観ろ!リメンバー・パールハーバー」って言っているやつが地震の後にもいたな)

さて、これが公開されてすでに11年が経過しました。
この頃ディズニーが期待していたほど、ことエンターティンメント文化に関して中国と言う国は
美味しい市場にならなかったようですね。
トラタヌしてた皆さん、ご愁傷様です。ヽ(^。^)ノ

モラル崩壊した、つまり大半は文明人とも言えない、つまり、エンターティンメントによって
精神を喜ばせるものと金銭を皆が喜んで等価交換できるような文化の下地が、
中国にはその面積に比例するほど育っていない、ということにようやく気付きましたね。
分かりましたか?日本と言う国が良くも悪くも、エンタメ市場としては一番「堅実」なことが。


さて、映画に戻りましょう。

「真珠湾攻撃」の仕返しとしての「東京大空襲」。

これはまた、アウトラインのすっきりしすぎた話ですね。
まるで、勧善懲悪の西部劇みたいです。
それもそのはず、この映画は「ヒーローもの」だからです。
ヒーロー、それはこの二人のアメリカ人パイロットではなく、アメリカそのものです。

実際のところ、開戦以来アメリカ本土には帝国海軍の伊潜が次々と襲撃を行い、
伊潜に積まれた艦載機による空爆なども行われ、アメリカ人にとっては衝撃の連続でした。
この頃のアメリカの潜水艦は、ことごとく伊潜に敗退していた状況です。

前回、ルーズベルトと軍上層部の対話に付いて書きましたが、つまりあのシーンは、

軍「本土が攻撃されているのだから、日本本土を責めるのは無理では?
ソ連の領土は、日ソ不可侵条約ため、爆撃のための基地使用は行えません。
また、我が海軍の空母艦載機は航続距離が短く、爆撃のためには空母を日本近海に
接近させる必要があり、大変危険です!」
ルーズベルト「東京を空襲するのは、人心を鼓舞させるためだ!」(立ちあがってみせる)

ということではないかと、このたび理解し、皆さんに分かりやすく書きなおしてみました。
つまり、開戦以来押されっぱなしだったので、ここで一発派手にやりましょう、という、
言わばパフォーマンスが目的の攻撃だったわけです。


ですから、実は命令する方は
「東京さえ派手に攻撃してくれたら、メンバーは生きて帰れなくても仕方ない」
というのが真意。早い話、戦意高揚のための決死作戦。スケープゴートです。

おそらく、ジミー・ドゥーリトルは、それがそういった目的のための作戦で、
生還の可能性がこの作戦には無いことも十分理解していたと思われます。
その意味では、死を覚悟した出撃で、作戦を成功させたうえ生還した彼個人に付いては、
全く見事な軍人であったと称えるべきでしょう。

前回ドゥーリトルが「もし機がやられたら、捕虜にならず自爆する」と言ったことを
アメリカ人の分際で笑わせるんじゃない、と言ってみましたが、



空襲の後、中国大陸に着地せよという、全く人命を軽視したこの命令を粛々と受け、
自らも出撃したドゥーリトル准将が、このような覚悟を持っていたとしても不思議ではない、
と、日本人としては思わないでもありません。

さて、ヒーローものにありがちなこととして、「リベンジのための特訓の経過」があります。



陸軍機に対し、空母からの離艦と重量の減らし方?の指導に、海軍さんが出張してきます。
この表現は、「東京上空」でもありましたが、アメリカも陸海軍間って仲良くなかったんですかね。
「東京」では海軍さんを迎える陸軍パイロットの間に妙な戸惑いを表現していました。



飛行機の重量をできるだけ減らし、赤い線から向こうは海のつもりでこの手前で離陸せよ!
という特訓が行われますが、なかなかうまくいきません。
それを最初に成功させるのが、なぜか戦闘機パイロットだったダニーという設定です。
皆が見守る中、赤いラインを飛び越し、ミッションの成功に向けて一歩乗り出すD隊。
一人成功すると、なぜか後続の飛行機は次々と難なく離陸ができるようになります。



空母ホーネット。
「東京上空」では本物が使われていましたが、その後海軍によって撃沈されたのは周知の通り。
この映画は、CGを駆使して、あるものを無いように、無いものを存在するかのように見せています。



艦上で初めてミッションの内容をメンバーに説明するドゥーリトル少佐。
「こんな少人数で東京を攻撃して、しかも生きて帰れるかどうかも分からない、
それに値する価値がこの作戦にはあるのですか?」
とダニーが聞いています。

それに対する隊長の答えが
「真珠湾がハンマーの攻撃だったとすると、アイスピックでしかない。
しかし、相手の心臓を刺す攻撃だ」

水を差すようでなんですが、この作戦もルーズベルトが期待するほどのものにはなりませんでした。
アメリカ国内はこの空襲の報告によって沸き立ちます。
しかし、この東京初空襲に対抗して、6月21日には伊25が、
オレゴン州アストリアにあるスティーブンス海軍基地を砲撃し、被害を与え、さらに、
9月には日本海軍の潜水艦の艦載機がアメリカ西海岸オレゴンを2度空襲しています。

しかも、アメリカ政府と軍は、人心への影響をかんがみ、この空襲の事実を公表しませんでした。
アメリカも「大本営発表」はあったのですね。当然ですが。

つまり、この映画で高らかに彼らの戦果を称えているわりには、実際の戦況の転機には
なりえなかったし(何度も言うように、それはミッドウェー海戦であったというのが世界認識です)
勿論彼らが言うように真珠湾の仕返しというようなものにもならなかったということです。

さて、ドゥーリトル隊を運ぶ米艦隊が日本近海に近づいたとき、出撃予定の12時間も前に、
艦隊は日本側に発見されてしまいます。
そして予定より遠いところから慌てて予備燃料を積み込み、発進することを余儀なくされます。
実際は漁船に発見されたのですが、漁船に発見されて慌てて発進じゃサマにならないから、
艦隊に発見されたことにしています。

そこで、後方の銃座の銃をおろし、ほうきの柄を黒く塗って銃に見せかけることに・・・(/_;)

実話ですか?

だったら、何のために?
ほうきであろうがなんであろうが、日本軍は撃ってくるでしょうに。

さて、いよいよ、攻撃目標に到着!

 

なんと、この笹原さんがオーナーの工場は、アメリカの爆撃隊御一行様のために
「ここが兵器を作っている工場ですよ!」とばかりに工場名を看板にしてくれています。
右写真は読みにくいですが、リレビック発電所だと書いてあります。
なぜ発電所の名前が英語なのかは全く理解できませんが、彼らはこの二か所に爆撃したところで
何故か日本国内でまるで市街戦の真っ最中のような土のうを積んだ陣地から、
日本軍の攻撃を受けます。



「乾坤」(のみ)「八紘」(のみ)「護国」「日本帝国万歳」(スペースの関係で大を省略)
などのスローガンがやたら貼られた基地には、臨戦態勢の陸軍兵が、
どう見ても日本製に見えない対空砲をガンガン撃ってきます。

映画ではこれによって銃撃された搭乗員が死亡するような描き方をしているのですが、
実際は対空砲の犠牲になった隊員はいません。

そして、ピンポイントで軍需施設だけを攻撃したような描き方をしているのですが、
実際のところ、隊長のドゥーリトル機は、いきなり攻撃対象を間違え、
全く無関係の学校や一般家屋を盛大に爆撃しました。
結果、早稲田中学の生徒が二名死亡。

ある一機は横須賀のドックに係留中の艦船や、重要施設の爆撃に成功し、爆弾を捨てて
離脱した臆病者は一機だけ、発進した16機中15機は何らかの爆撃に成功しました。
中国大陸に向かう途中も、残りの銃弾を全て「ジャップ退治」に消費すべく、彼らは遭遇する
全ての漁船などに銃撃を加え、死傷者が出ました。

中国大陸にたどり着き、捕虜になった隊員の中には、明らかに一般人に狙いを定め、
各地で銃撃を加えて回った16番機の乗組員がおり、彼らは、この攻撃が国際法違反に
あたるとされ、処刑になっています。

(一説では、原爆投下はこの処刑への仕返しであったとされます)

この攻撃における一般市民の死者数、87人。家屋喪失262戸。



過酷な命令を出しておいて悩んで見せるルーズベルトの図。
白いバラを差し出すのは、黒人の執事。
美しい光景ですね(棒読み)

 

中国大陸までたどり着いたものの、日本軍の陣地が点々と・・・。
「敵の陣地だ」
などと字幕には書いていますが、実際は「ジャップ」「ジャップ」のオンパレードなんですよ。
遠慮しないで字幕もジャップって翻訳しろよ、ああ?(ガラ悪くてすみません)
しかし、燃料不足でジャップの真っただ中に不時着するレイフの乗り機。

たちまち怪しい風体の日本兵があらわれ、銃撃戦になります。

 

ちょっと・・・どう見ても帝国陸軍の兵隊には見えませんなこりゃ。
まず、鉄兜の色が黒。大陸ではつきものの偽装網も着用していない。
両肩にかけているはずのベルトが無い、そして襟にある筈の赤の階級章がない。
ボタンの色も黒。
そもそもこんな緑ではなく、もっとカーキに近かったはず。
まあ、色は鮮明ではないからいいとしても、なにしろこの軍服はどう見ても、
ヘルメットだけ変えた中国軍の恰好にしか見えません。

さらに、この日本人たち
「人がいるぞ」と「立て」しかしゃべれません。
特に全ての命令を「立て」で済ませようとします。



テレビの枠が映ってしまったのに、カットしていません。(疲れてきた)
何故か、そこにダニーの操縦する機があらわれ、この一団の中から日本兵だけを撃ち殺す、
というシモ・ヘイヘも真っ青のスナイパーぶりを発揮してレイフを救います。



しかし、着陸の際、瀕死の傷を負うダニー。
苦しんでいると、またもや「人がいるぞ」「立て」とどなり散らす野蛮なジャップがやってきて、



なぜかいちばん重傷を負っているダニーに、わざわざ重そうな木を背負わせます。
他にピンピンしている搭乗員が何人もいるのですが、見向きもしません。
そして、その搭乗員たちも、陰に隠れたままダニーを助けません。
死んだふりしていたレイフが、またもやカルロス・ハスコック並みのスナイパーぶりを発揮して、
ダニーにあたらないように、両側の日本兵だけを的確に狙撃して彼を救います。



さて、このヒーロー活劇の
「俺たちゃ真珠湾のリベンジとして、しかも正々堂々と、
軍事施設だけを攻撃して帰って来たんだ!」
という論調とは裏腹に、アメリカ、そして連合国が

「白人様に逆らった黄色い猿」

に対して、どんな扱いをしたか、ここで一部列挙してみます。
いずれも、戦闘行為だけにとどまらない、人種差別と、復讐に燃えた、卑劣なものです。


「バターン・死の行進」への復讐。
すでに収容所段階から陰湿に行われており、フィリピンのルソン島にある第一捕虜収容所では
日本兵捕虜にはほとんど食事を与えず、一万二千人もの人たちが栄養失調で死亡している。

ブーゲンビル島のラバウル基地内にあった第八海軍病院は、国際法の規定によって
屋根に赤十字の標識が描かれていたにもかかわらず、アメリカ軍機はこの病院を爆撃したのち、
さらに銃撃まで加えて、医師、看護婦、患者ら千四百人を殺傷している。

沖縄戦でのアメリカ兵による住民虐殺。
この戦いに赴き撃沈された戦艦大和以下四隻の艦艇の乗組員たちは、海に投げ出されて漂流中、
無抵抗な状態であるにもかかわらず、執拗な機銃掃射の凶弾に次々と撃ち殺された。

オーストラリア軍も「日本兵の捕虜は取らない」をモットーにして、アメリカ兵とともに
ニューギニア戦線の至る所で、投降してきた日本人負傷兵を皆殺しにした。
高高度にある飛行機から捕虜を突き落としたという報告もある。

ニューギニア近海でのビスマルク海戦では、米豪合同軍の空爆によって沈没した輸送船から
脱出し、ボートやいかだなどで漂流している約千名の陸軍兵士に対し、米豪軍の戦闘爆撃機は
銃弾を基地に補給しに戻ってまで、繰り返し機銃掃射を浴びせたと言われる。
この虐殺の模様は飛行機に同乗した映画カメラマンによって撮影までされている。

そして、東京大空襲(死傷者12万人)。
広島、長崎への原子爆弾投下(死者21万人)。

東京大空襲を指揮したカーチス・ルメイの前任者ハンセル少将は、
高高度からの軍事施設への精密爆撃にこだわったため解任されたと言われています。



この映画のメイキングムービーを観ましたが、そこで語られるのは常に「撮影の苦労」
(確かに苦労はしたみたいですね。お金もふんだんにかけて(笑))
まさに戦場のような撮影現場では、爆発のリアリズムや、実機を使った戦闘シーンを
いかに迫力あるものにするかに全精力が傾けられ、映画のストーリーそのもの、
ましてや真実とか史実とか、そういった根本の部分など、彼らにとってはすでに
「どうでもいいこと」になってしまっている様子がよくわかります。

これを観た日本人がどう思うか、世界中の歴史に詳しい人々が観たらどう思うか、
そんなことは、彼らにとって、全く「どうでもいい瑣末なこと」になってしまっているのです。

日本を描いたシーンが、果てしなくいい加減で考証の痕跡もないのは、逆説のようですが、
この映画が
「わざわざ日本を貶めるための反日的な意図があったわけではない」から、とも言えます。

つまり、敵は現在の日本とは全く別の、「日本軍」というまるでドイツにおける「ナチス」
のようなものであり、そして彼らが戦ったのはまるで天災のような「災難」であると。
それに雄々しく立ち向かい、戦い、そして勝ったアメリカを称え、誇らしく思う。
それが達せられれば、はっきり言って日本人がどう思おうと知ったこっちゃないからです。

 



さて、再び映画に戻って・・。
というわけでダニーは死んでしまいます。
「パールハーバーの恋人たち」の項で、「唯々諾々と心変わりの相手の子供を押し付けられて・・」
と書きましたが、実は、見落としていたダニーの一言があったんですね。

"You're gonna be a father. Please"
"No.You are"

これが二人の最後の会話。

「死んじゃいけない」は、全くの意訳で」
「お前は父親になるんだ。お願いだから・・・」
「だめだ。お前がなってくれ」
つまり、この一言でレイフはダニーに父親になることを頼まれてしまったんですね。

頼まれたんなら仕方ないな・・・。

彼ら男同士の幼いころからの固い友情の結びつきを思えば、それは仕方の無いことなのです。

だけど、それにまんまと乗っかる女、こいつだけは、やっぱりゆるせ~ん!

 



家の庭にあるこれ、もしかしたら、ダニーのお墓?
中国大陸から持って帰ったダニーの遺体、よりによって物置の横に埋めちゃったのか・・・。

合掌。

あと一回、書きたいことがあるのですが、「あること」を確認してからの記事になります。
いつになるかわからないけど

最終回に続く。