あまりに書くことが多い「パール・ハーバー」、全くネタの宝庫でした。
今日は、最初から書くのを控えていた「あまりにも奇妙な日本軍と日本人」の描写について、
思いつく限りの突っ込みどころをたんたんと列挙していくことにします。
ところで、冒頭の赤城から出撃した日本機の映像なんですが・・・。
ここでやる気を失っては先が続かないのですが、一目見ただけで目が点に・・・。
まず、これは編隊飛行なんでしょうか。
先頭は緑色ですが、零戦?
二機は97式艦攻?
零戦だとしたら、これは52型ですよね?
97式艦攻だとしたら、真珠湾攻撃に参加した淵田少佐の乗り機、三号型は緑色だったはず。
零戦もこの時はまだ21型で、緑ではなかったはず。
それよりなにより、どうしてこんないろんな色の飛行機が編隊を組んでいるのか?
艦攻二機は小隊長機のマークをつけているし・・・。
この映画には、プレインズ・オブ・フェイムで保存されている零式艦攻五二型の実機と、
ロシアで復元された二二型の飛行可能なレプリカ使用されています。
つまり、実機を飛ばしているわけで、その意気やよし、なんですが、いかんせん実際に
攻撃に参加した零戦とは色からして全く違っているという・・・・・・。
この件に対してのマイケル・ベイの言い訳。
「零戦のイメージは、緑だから」
おい・・・。
イメージっていうより、飛ばせる実機がたまたま緑だったからじゃ?
このいい加減さは、軍事考証のみにとどまるものに非ず。
この映画がちゃんと史実を描いてリアリティを出すことを放棄していることは、同時に
マイケル・ベイの学校時代の成績をいたるところで如実に表わす結果になっており、
本人にとってこの映画を撮ったことは生涯の汚点となって、
これからも彼の評価を落とし続けることを確信するものです。
日本公開のときにここで大爆笑にならなかったんでしょうか。
わざわざ松林のゴルフ場に風よけにも日よけにもなっていないおかしなテントを立てて、
しかもでかでかと馬鹿でかい字の(しかも白抜き)スローガンの幟を・・・・。
「尊王」「憂国」「皇国」これはまあ意味は分かるとして「勇我」ってのは何ですかい?
あんたら、現地の中国人スタッフにこの幟作らせましたね?
そして、なにより、この見張の兵隊の佇まい、これは何ですか?
何でこの兵隊はこんな股下の長い、みっともないサルエル・パンツを着用しているんですか?
そして、脚を開いているのはまあいいとして、なぜ銃口を手で握りしめているのですか?
そもそも、この軍服は、海軍兵でも陸軍兵でもなく、まるで中国兵ではないですか?
あんたら、現地の中国人スタッフにこの衣装を(略)
日本軍が作戦会議を野っぱらでしている横には、着物の子供たちが、
妙な形の凧をあげて遊んででいます。
この凧は・・・日本のものじゃありませんね。
あんたら現地の中国人に(略)
いろんな映画評でやり玉に挙がっていた不思議な大本営会議の図。
まず、この妙な形の中国式鳥居の下に海軍旗を吊るしている表現を、マイケル・ベイはどこで
インプットしたのか。
少しわかりにくいですが、皆が見おろしているのはプールで、そこには船の模型が浮かんでおり、
褌に海水帽を被った兵が、その舟を手に持った棹竹で動かして、会議をしているという・・。
そして、プールの正面には黒々でかでかと
「軍極秘」
ってあなた・・・・。これ、誰に向かって表明しているの?「軍極秘」。
そもそも軍極秘なら、子供が凧上げしている野外で会議はせんだろうと。
この最大に皆に突っ込まれていた会議シーン、なぜこんなことになったかについては面白い
話が(全く面白くはありませんが)ウィキペディアにありました。
戦時中に制作された「ハワイ・マレー沖海戦」(1942年)の特撮中の宣伝用スチル写真
(特撮用プールに入り、攻撃を受ける米戦艦の模型を準備している)を見て、
作戦会議の写真だと勘違いしたものと推測されている
山本長官を演じるのはマコ岩松。日系の役者です。
昔「ソニーがアメリカに攻め込んで~」みたいなミュージカルをやってたような気がしますが、
69歳のマコ、しわくちゃで貧乏くさく、さらにわざわざカメラは室内では下からライトを当てられ、
実に老獪そうで老醜の山本司令を日本語も怪しく演じています。
司令部の日本人は全て選んで、どうしようもない爺さんばかり。
アメリカ側はドゥーリトル中佐を始め、キンメルですらムンムンなばかりに精力的で、
しかも、真珠湾のあった12月にもかかわらず夏の白い軍装でパリッと登場。
日本側のあくまでも地の底から呪術でも行いそうな不気味な描写は徹底しており、
この対比の持たせかたに何の悪意も感じられないのなら、あなたはこの映画の意図を
全く理解していないと言わざるを得ません。
日本海軍の、老人ばかりを使った(平均年齢70くらい)シーンの後にくるのがこれ。
これなど対比の意図が露骨過ぎて、怒りで体が震える気さえしました。
美しい娘たち、彼女らを歓迎してデッキを走る水兵たち。
日本人に対する露骨な人種差別を押し出していることへの言い訳として、この映画は
どうでもいいところにやたら黒人の出演者を挿入して、アリバイを作っています。
アリゾナのコックで、艦長に信頼される水兵(黒人で初めて賞をもらったらしい)。
ルーズベルトの車いすを押しているのが黒人の執事。
前者はともかく、これ、実話ですか?
人種交配論をぶち上げ、実は差別主義で公民権運動勃興の妨害をしたルーズベルトが、
自分の車いすを黒人に押させるとは、とても信じられないのですが・・・・。
この頃のアメリカでの黒人差別は半端でなく、そもそも人間扱いすらされていなかったはず。
そして虐げられていた黒人社会では「日本人が白人をやっつけた」と
むしろ真珠湾を喜ぶ声もあったというくらいだったのですが、
この映画における世界では、アメリカは人種差別をしたことは無いと言い張っています。
この、ディズニーの世界では。
実は、あれからドナルド・ダックが日本軍をせん滅させて大笑いする動画を見つけてしまいました。
戦闘機に旭日旗がついているので、ディズニーも言い訳できません。
ある意味「東京上空30秒前」より露骨で、現在のディズニーの見せている顔が
全く信用できなくなるしろものです。
だからわたしはディズニーが嫌いなの。
戦時中はこうやって、子供に人種差別を刷り込んでいたことを隠し、
平和になったら素知らぬ顔で、愛だの友情だの、お安い理想社会を売るディズニーが。
そして、この映画は、ディズニーらしく、こうやってアリバイ操作をしながらも露骨です。
このありえない前時代的な日本軍の姿、敢えて醜悪な人選をしたとしか思えない司令部、
(トラ!トラ!トラ!の山村聡のような男前など意地でも使うもんかという意志が見えます)
スパイの日本人は、とても日本人に見えない、しかも佇まいの醜いしわくちゃの爺さんで、
加えてこのろくに考証をしていない日本軍の総じてカッコ悪いことといったら・・・。
「トラ!トラ!トラ!」における日本軍のシーンがやたら凛凛しく、何も知らない息子すら
「かっこいいよねえ」とつぶやいたという、あのような描写はここでは全く無視されます。
(スタッフは絶対にこの映画を観ていると思うのですが)
どこかで、「この最低の映画の良い点とは」という問いの答えに
「あまりに酷いので、他の戦争映画、ことに『トラ!トラ!トラ!』の評価が爆上がりした」
というのがありましたっけ。
あれもあれで、いろいろとあったようですが、このアメリカ側のファンタジーだけで作られた、
奇怪な映画に比べると、超リアリズムに思えてくるから不思議です(笑)
意外と?書くことが多くて、間違い探しを一回で終わることができませんでした。
残りは第二次攻撃に回します。
それにしてもこれ・・・。
レイフがイヴリンの気を引こうとして「6時間かけて作ったんだ」と手渡す折りヅル。
ここでなぜ使われる小物が「オリガミ」なのか?
わざわざ日本伝統のものにしたのか?
しかも、この折りヅルは、6時間かけた割に作り方が間違っていないか?
仕込みも小物の製作をするスタッフにも日本人など勿論一人もいなかったってことですかね。
(怒りを貯め込みつつ続く)