秋の夜長、静かに読書をしていると澄んだ虫の音色が心地よく聞こえます。
この虫の音色を嫌いな人は少ないのではないでしょうか?
しかし、虫は虫でも「腹の虫「や」虫の知らせ」、「虫が好かない」など、目に見えない嫌な虫もいます。
今日はそんな「虫」の語源について調べました。
「虫」の語源
例えば、何の根拠もないが、何か悪いことが起きそうな不安を感じる慣用句に「虫の知らせ」があります。
ここに出てくる虫は中国の道教に由来する「庚申(こうしん)信仰(三尸(さんし)説」からで、人間の体内には三虫(さんちゅう)が居るとされています。
それによれば、「三尸の虫(さんしのむし)」とは、鬼霊と相通じていて、常に外邪を引き入れ、害をなす。
其の名を彭倨(ほうこ)・彭質(ほうしつ)・彭矯(ほうきょう)といい、人間が正しいことをするのを忌み、悪いことをするのを喜ぶ」とあります。
この三種類の「虫」は、人が庚申(こうしん)の日に眠りにつくと体から抜け出して天上に上がり、直近にその人物が行った悪行を天帝に報告する。
天帝はその罪状に応じてその人物の寿命を制限短縮するという信仰です。
ではこの「三尸の虫(さんしのむし)」は体内のどこにいるのか?
・一つは上尸で、頭にいて眼を悪くしたり、シワを作ったり、白髪を作ったりします。清姑(せいこ)彭倨(ほうこ)などとも呼ばれます。
・二つは中尸で、腹にいて五臓を害し、食欲を強くします。白姑(はくこ)彭質(ほうしつ)などとも呼ばれます。
・三つは下尸で、足にいて精を悩ませます。血姑(けつこ)彭矯(ほうきょう)などとも呼ばれます。
これが「三尸虫(さんしちゅう)」で、左から下尸の彭矯(ほうきょう)、中尸の彭質(ほうしつ)、上尸の彭倨(ほうこ)です。
道教が日本に伝来して以降、日本でも「虫の知らせ」の他、「虫が良い」、「腹の虫」など、この「三虫」を基にした言葉が生まれています。
「虫の知らせ」の場合は、体内に棲んでいる虫が「何かしらの情報を知らせてくれる」と考えたわけですが、
他にも、
・「虫の居所が悪い」・・(機嫌が悪いこと。体内にいる「虫」の居場所が落ち着かないと、その人の機嫌も悪くなる)
・「獅子身中の虫」・・・・(身内でありながら害をなす分子で、本来運命共同体であるはずの体内の「虫」が反旗を翻して体全体に悪影響を及ぼすこと)
・「弱虫」
・「泣き虫」
など、これらはすべてこの虫が関与しているとして出来た言葉となっています。