中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)の参加国が57カ国になったと報道されています。
AIIBは、日米が主導するアジア開発銀行(ADB)では、アジアにおいて増大するインフラ整備のための資金ニーズを賄いきれないとして、代替・補完的に応えるということを目的に中国が設立を提唱して発足したものですが、その背景にある思惑は違うようです。
「アジアインフラ投資銀行(AIIB)」
AIIBには、当初、先進国の参加はありませんでしたが、3月12日にイギリスが参加表明するとドイツ、フランス、イタリアが同じように参加表明し、G7の結束が崩れました。
これらのヨーロッパの国々は中国との経済的な面だけで参加を決めたようですが、日本とアメリカは運営方法や融資の審査体制に不透明な点が多いとして参加を見送っています。
AIIBの総裁には中国以外からは就けません。中国人の総裁は共産党員であり、習近平政権の意向のままに運営され、参加国からの発言権が認められることは先ず考えられないということです。
経済界や評論家の中には日本も参加しないと「乗り遅れる」と言って不安を煽る向きもあるようですが、もし日本が参加すれば経済力に応じた拠出金が求められ、その額は最大で約30億ドル(約3600億円)に上ると見られています。
多くの専門家の一致した意見は、拠出金を払わされるだけで、中からガバナンスを変えることも、日本の企業の受注も困難であり、中国政府にAIIBの正統性を与えるだけで、それこそ、中国の思うつぼと言うことになりそうと言うことです。
このようなことから日本の参加見送りは正解と言えます。
「一帯一路」
今、中国は「一帯一路」構想を進めています。
「一帯一路」とは、大まかにいうと、中国西部から中央アジアを経て欧州に達する「シルクロード経済ベルト(帯)」と、中国沿岸部から東南アジア、南アジア、中東・東アフリカを経て欧州に至る「21世紀海上シルクロード(路)」と説明されています。
AIIBの背景にあるのはこの「一帯一路」構想」で、公表されたイメージ図では、南シナ海から南太平洋に向かう海上ルートと陸ルートを三つに分けたイメージ図では、AIIBの創設メンバー57か国のうち、南アフリカやブラジルなどを除いて、「沿線国」はほぼこの構想に取り込まれる形となっています。
近年、中国経済は減速しており、その立て直しのために過剰設備をAIIB出資国に売って、経済的な影響力の増大を図り、巨大経済圏を作りたいというのが習近平政権の構想なのです。
日本がAIIBに参加しないことを中国は悔しがっているそうです。
日本に対しては、いつでも門戸を開いて参加を待っているようですが、欲しいのは拠出金だけでしょう。
当面は参加しないで、「お手並拝見」と冷静に推移を見守っていればよく、現在のアジア開発銀行を従来通り主導して連携の道を探れば良いことです。
安倍政権には、中国の隠れた思惑を見抜いていただき、慌てて参加することのないように、くれぐれも国益を踏まえた判断を願いたいものです。