三木奎吾の住宅探訪記 2nd

北海道の住宅メディア人が住まいの過去・現在・未来を探索します。
(旧タイトル:性能とデザイン いい家大研究)

【地盤が変容する天変地異と耐震努力の臨界点】

2017年08月12日 06時26分48秒 | Weblog



今回の熊本地震は絶え間ない地震動と、大地震が2回という
現代ニッポンが経験しなかったような被災でした。
地震から1年数ヶ月経過したいま行ってみても、
山塊崩壊の様子であるとか、いまでもちょっとした地震が来れば
すぐにでも地盤面が崩落していく状況を目の当たりにした。
3枚目の写真など、現場は立ち入り禁止になっている地域ですが、
建築的調査ということで特別に見学できた地域では、
次回の崩落面が地割れとなって現出していて、
谷側に向かって地面が割れていく様子を、体感することもできました。

日本は火山列島であり、繰り返された火山噴火、地震が地形に作用して、
絶えず国土の風景が変わってきたことが体感できた。
カルデラ級の大火山噴火の痕跡すらも、ここ九州やわたしの住む北海道でも
容易に目にすることができる。阿蘇は9万年前のカルデラ噴火で
その火砕流が福岡県の平野部にまで到達していたという。
今回の視察では、人間ができることとそれをはるかに超えた大地の変容ぶりとの間で
どのあたりをメドとして努力すべきなのか、
ひたすら力尽くで自然の猛威に対して対応することと、
いわゆる「いなす」知恵との間で、人間社会はどう対応すべきなのか、
その臨界点について考えさせられました。
できる努力として、耐震性能を上げることには大きな意味がある。
それによって、たぶん、9割方以上は命と財産を守ることはできる。
しかし、それでもなお及ばない範囲というものは存在する。
通常、住宅を新築するときには地盤調査が当然のように実施される。
しかし、地震が起こった後、その地盤がどのように変異したかについて、
調査を行うということは、大きな被害がない限りはあまり行われない。
今回熊本地震では、とくに写真のような阿蘇地域とか、
熊本城地域での状況を見るに付け、
地盤面自体が大きく変容している様子が目の当たりにできた。
城郭建築は軍事的防御の目的で石垣であるとかの「堅牢性」を高めるけれど、
今回の地震では、その地盤面自体が全体として20cm超のレベルで地盤沈下した。
その地盤内でどのような変異が起こっているか、
あえてコストも掛けて調査するケースはないだろうと思います。
新築時に安定した地盤とされた敷地が、こういう天変地異で変動することもある。
現代の住宅建築があまり想定していなかったことが現実に起こる。
そのような土木建築でのコストパフォーマンスの見えにくい局面で
社会としてどのような対応が、より賢い選択であるのか、
そういったレベルでの知恵が求められてきているように思われました。
どう「いなす」べきなのか、知恵が必要だと。
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