三木奎吾の住宅探訪記 2nd

北海道の住宅メディア人が住まいの過去・現在・未来を探索します。
(旧タイトル:性能とデザイン いい家大研究)

【働き方改革は「職人仕事」を消滅させるのか?】

2019年04月19日 06時20分43秒 | Weblog

・・・テーマのような論議があまりにもなさ過ぎるのではないか?
先日来、建築の仕事で長年働いてきたいろいろな方と会って話してきて、
日本の行く末を大きく懸念されている人が多い。
ある方は、ドイツの技術力の源泉としてのマイスター制度が健在であるのに
日本社会は、その技術力の源泉である「職人仕事へのリスペクト」を
いま、大きく毀損させることに狂奔しているとされていた。
日本が日本たる最大の源泉はこのことにあるのに、
それを「労働行政」という観点から一掃させようとしている、とされた。
ちょっと前まで「ゆとり教育」という官僚統制型の施策が行われ、
あっという間に揺り戻しにさらされた「制度いじり」があったけれど、
この「働き方改革」にも同じ雰囲気が漂っていると思わざるを得ない。
職人仕事の世界は、かれらから見れば非論理的な「探究」の世界であって
労働行政的には「根絶したい」ものと見えやすいのだろうと。
官僚的視点から見てたぶん、いちばん制御不能に見えるのは、
「職人仕事」なのだろうと思えます。

しかし逆に、職人仕事的に「働き方改革」を志向する、
っていうような逆転発想もあってしかるべきではないだろうか。
職人仕事というのは、資本主義的な「即・換金」思想ではない価値感。
ひとの役に立つモノづくりを真摯に探究する営為。
お金というのは、あくまでも結果評価の世界であって
職人仕事は、そういう金銭価値とは違う価値観で労力を使うもの。
よりよいものを作り出すには、一見ムダにしか思えない
そういった労働を積み重ねる中から生まれ出てくるもの。
人が人の仕事に深いリスペクトを感じるのはその部分の「磁力」が強い。
すぐれた職人仕事を深化させられる方向で「働き方」を見直してみる
そういった「働き方改革」という視点を社会は持てないだろうか?
いま、多くの人からそうした意見が湧き上がってきている。

きのうも、大工仕事で「技能オリンピック」に参加されて
みごと金メダルを獲得された方の話を聞く機会を得た。
かれは、企業勤務ではない独立的職人稼業だったのですが、
そのオリンピックに参加するための費用を考えれば
多額の負担の怖れもあって活動を当初は「辞退」されたそうです。
同じオリンピックに参加した同期の人たちは企業勤務者ばかりで、
かれらへは、そうした費用を企業が負担した。
しかし個人事業主の職人である彼には、そうした支援はなかった。
結局オリンピックに参加するための「渡航費」や参加中の総費用は
多くの人の善意のカンパによって成就したと言うこと。
技術は職人仕事という「探究」によって成立する世界だけれど、
日本社会では、個人事業主としての「職人」仕事というものが
今後とも成立していくのだろうか、と思わされた。

働き方改革について、いま職人仕事がどうしたら存続可能か、
真剣に論議し、逆に職人として働くことを社会全体がリスペクトする方向に
大転換させていくことは出来ないのだろうかと強く感じる。
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【階間利用のエアコン暖冷房】

2019年04月18日 07時42分07秒 | Weblog


本日は再び、アース21総会での鎌田紀彦氏講演より。
先日書いたように、鎌田先生としては基礎断熱から
「温熱環境コントロール」すべき気積がより少ない「床断熱」を
志向していく考え方を発表されていました。
寒冷地として、必要な「暖房用エネルギー」の絶対量があるレベルで
不可欠である北海道のビルダーとしては、
エアコン1台での室内環境制御が長期にわたって担保可能かどうか、
なかなか声が出ない、というのが「場の雰囲気」であったとはいえます。
事例として出されていたのは、新潟のオーガニックスタジオさんの事例。

基礎断熱された床下空間に暖房装置を設置することで
冬期の室内環境を全室一体のものとして室温・環境制御することは
基本的に寒冷地住宅技術の骨格を形成してきた。
暖気は上昇するという基本の性向を活かすものなので、
直感的にも理解しやすかった。
その基礎断熱をキャンセルして1階床断熱で代替させると、
土間下空間が消失するので、これまでのような
チャンバー的な床下利用想定ができなくなる。
そこで同様の活用ができそうだと目をつけられたのが1−2階の「階間」。
ここに、できればダクト式エアコンを入れ込んで
上下階に加温、冷却空気を供給するという考え方。
説明書きにも書かれていますが、
「暖房時は1階天井のブースターファンを作動させる。
2階は自然ガラリで十分。冷房時には2階は床のブースターファンを
作動させ1階は自然ガラリを使う。」という作動設定。
施工上の注意ポイントとして
「冷房時、階間部の外壁での夏型結露を防ぐため、防湿シートの内側に
50mm程度の断熱材を施工する」とされていた。
ブースターファンというのは2枚目の図のような
ファン付き吹き出しガラリのことを指している。
鎌田先生からは、その使用感も良好だという発言がありました。
たぶん、北海道のビルダーでは使用実績が少ないでしょうから
「そうか」といった反応感がありました。

全体的な印象として、
暖房と冷房の必需期がほぼ半々というような気候常識を
前提とした機能選択という印象が強く、
北海道全域としてどうなのか、というのが率直な印象。
ただ、原理原則としては理解はできる、といったところでしょう。
このあたり、空調コントロールについては地域差があり、
全国一律的な対応ではなくなっていく感じがします。
住宅は考えれば考えるほど、その地域に根付くという印象が強まる。
設備設計、選択については地域分化が必然とも思われました。
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【冬の快適性を図る指標「PMV」を理解しよう!】

2019年04月17日 05時59分37秒 | Weblog


人間があたたかさや湿度条件などを「どう感じるのか」を科学する。
感覚領域までの研究。・・・


専門家向け ‒ 前真之のいごこちの科学2019.4.15
前 真之のいごこちの科学 NEXT ハウス vol.013
vol.013/冬の快適性を図る指標「PMV」を理解しよう!
いごこちの科学 NEXT ハウス

さらなる省エネ・省CO2が住宅の重要なテーマとなる寒冷地。
本企画は、独自の視点から住宅性能研究の最前線を開いている、
東京大学の気鋭の研究者・前真之准教授に、
「いごこちの科学」をテーマに、住まいの快適性能について
解き明かしていただきます。 シーズン1に続く第2弾として2015年からは、
それまでの連載の発展形
「いごこちの科学 NEXT ハウス」としてリニューアル。
「北海道・寒冷地の住宅実例から考える室内環境について」をテーマに、
断熱、開口部、蓄熱など、さまざまな視点から 寒冷地における
室内環境の改善ポイントを解説しています。

東京大学大学院工学系研究科 建築学専攻・准教授 前 真之 (まえ・まさゆき)
東京大学大学院工学系研究科
建築学専攻・准教授
前 真之 (まえ・まさゆき)

厳しい冬も終わりに近づき、春の気配が感じられる時期になってきました。冬を快適に過ごすことができれば、厳しい寒さも苦になりませんよね。この連載では何度も温熱環境と快適性の関係を取り上げてきましたが、今回はもう少し深く、人間の温熱感を見ていくことにしましょう。

続きはこちらをご覧ください。
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【インテリア選択はその人の「暮らし方」表現】

2019年04月16日 06時55分51秒 | Weblog
家の「見方」がチョー重要。家を見て
「こういう空間でこのように暮らしたいのだ」と見定められるか?・・・

きのうは鎌田紀彦先生の最新の住宅断熱手法について、でしたが
活発な意見交換が相次いで、わたしのブログ読者の傾向が明瞭でした(笑)。
どっちかといえば、住宅建築のプロのみなさんが中心。
なんですが、ユーザーのみなさんも同じ言語空間ではないけれど
「なんとなく」伝わってくるものを感じられるようです。
考えてみれば、わたし自身も自宅を建築した頃、
住宅雑誌はすでに発行していたのですが、まぁたしかに
「プロのひとたちが活発に意見を交わしている論点」というのは、
大きな「よりどころ」ではあったように思います。
ただしそこは「頼む立場」として、自分自身の感受性世界が判断の基本。
せっかくの自分が払っていくお金に関しての決定なので、
プロの先端的論戦を「わきまえた」上で、独自の判断をしたいと考えた。
結局は感受性の大きな選択のひとつとして、自分の世界を
一生に一度だけ、自分で選択できるのが住宅建築の機会だと思ったのですね。
当然だと思います。
そういった「技術論議」に参加したりして意見を戦わせるのは
建て主としての価値感とはまた違いがある。
そういうやり取りの中で、方向としての大きな技術傾向の中から、
自分に似合った感受性を探し出してみたくなる。
そういうときに「たくさんのイメージ」を見る,比較対照する、
っていうようなことは、無意識に行っていくものだと思います。
実際の空間を体験するということが基本ではあるけれど、
それには「もれなく営業行為がついてくる(笑)」のには閉口させられる。
ReplanやWEBマガジンなどで「よきものを見る目を養う」ことが不可欠。

住宅の実物を見る、というのがやはり基本でしょう。
わたしたちReplanでは、基本的にユーザー目線で住宅を伝えたいと
そう考えて誌面を構成しています。
実際の肌に伝わってくるような「空間の雰囲気」を表現したい。
作り手と施主さんの家づくりの対話の様子がいちばんのポイントだと。
で、インテリアを構成している要素の組み合わせ感覚、
そういった「よすが」から、作り手の感受性を見定めることが大切。
写真の住宅は岩手のビルダー、D-LIFEさんのオープンハウスから。
床壁天井とキッチン、さらにそこで選択されているテーブル・椅子
などの空間構成要素が一瞬にして伝わってきます。
この家は、施主さんが完成引き渡し前に公開を許諾した建物。
このような空間構成をある建て主とD-LIFEさんは
現実に打ち合わせしながら、実現させてきたワケです。
わたし的には、黒っぽいけれど木目も表現された床材・天井材と
キッチン・テーブルの色合いという背景のなかで、
いちばん人間の行動感覚に近しい「椅子」が目に付いた。
座卓面は透明な素材によるプラスチックなんですね。
それに対して、背景と連なっていく脚にはスチールが採用されている。
「そうか、こういう背景のなかでこのような意識で暮らしたいのだ」
っていうようなことが「伝わってくる」。
なんと呼ぶかは別として、現代の中でこういうふうに過ごしたいという
そういったホンネの欲求をそこに感じるのですね。
もちろん、そういう暮らし方がどのような「温熱環境」のなかで
実現しているのか、というのは要チェックの最たるものではある。
ただ、ユーザー側としてこういった「暮らしの感受性」について
多くの事例を体験しながら、きちんと自分を見つめることは重要ですね。
家の「見方」って、チョー重要だと最近強く気付かされる・・・。

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【基礎断熱からハイブリッド床下断熱へ】

2019年04月15日 06時55分06秒 | Weblog


さて、最近もたくさんの「取材」をしてきていますが、
なかなかまとめる時間が取れない。
きょう取り上げるのは、先週水曜10日のアース21総会での
鎌田紀彦先生基調講演からの「基礎断熱から床下断熱への回帰」テーマ。
北海道では「暖かい家」への技術進化の過程で
床下断熱からほぼ常識のレベルで基礎断熱が一般化してきた。
「凍結深度」以下まで基礎を掘り下げる必要がある地域特性があって、
その基礎造作の「特殊性」に着目し、その基礎外周で
断熱材を張り付けてコンクリート打設を行えば、
その土地の「年平均気温」程度と言われる「土壌の熱」を取り込んで
いわば「土壌蓄熱」を利用できて、床下の湿度管理などの
木造住宅がかかえてきた問題点をもクリアできるということ。
人類伝統とも言える「竪穴」利用ともアナロジーできるので、
きわめて「安定的」と支持されてきたと言えるかも知れません。
こうした流れになって来たのには、それこそ新住協や鎌田先生自身も
それを大きく提唱してきた流れもあったと思います。
しかし、講演でも指摘されていましたが、
「地盤の熱容量が大きいため、家の中の室温と同程度の温度まで
平衡状態になるまでには、大きな熱量が必要になってしまう。
熱供給が行われなければ、土間表面温度は低下していく。」
「床下暖房していてもこの熱供給は不可欠。熱供給能力を大きく
キャンセルできる高性能住宅では、能力が小さくなってきている分、
暖房を停止するとうまくいかない」(以上要約)
というような問題意識に到達されている。

ということから床下暖房の方がより合理的ではないかという流れ。
暖房空間の体積をより小さくできるので
暖房設備容量をさらに削減していくことが可能になるとされている。
しかし、一方で各種配管設備など床下の凍結対策は
寒冷地では絶対不可欠で、また気候変動の「極端化」が進行しているので
温暖地域でも万一の場合がありえる。
そこで水道配管などを収める「水回り」空間を一定の範囲内に収める
設計プラン上の工夫をした上で、その周辺区域だけを
「基礎断熱」として集中配置することで、その他の床下断熱部分との、
いわばハイブリッドタイプの断熱を提唱されたのです。
こうした提唱はこれまでも鎌田先生からあったのですが、
今回札幌で棟晶さん建築の2.5×6間の「新住協モデル」で実験されています。

いまのところ、北海道では技術的にほぼ完成した基礎断熱採用が
はるかに優勢ですがコストダウン圧力が今後さらに高まっていって
暖房用熱量のさらなる削減が求められていく可能性が高い中、
こうした技術進化も求められてくるのではないかと思っています。
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【サクラ前線と平行北上中 さざんかとの競演】

2019年04月14日 03時59分51秒 | Weblog
写真は福島県の高速東北道・吾妻SAで見掛けた豪華ツーショット。
あるようで、あんまり見掛けることがなかったので、思わず。
わたし的にはこの2つの樹種はゴールデンマスターでして、
どちらも北海道ではほとんど見ることができない品種かと。
さざんかは冬の時期に目を楽しませてくれる樹種として、かつ
排気ガスなどに強い樹種としてJH道路公団は高速道路街路樹として多用している。
一方の桜、たぶんヒカンなのか、ソメイヨシノなのか、
どちらもヤマザクラが主流の北海道では,目にすることが少ない。
住宅雑誌として、本州地域でも発行を初めて以来、
目にすることが多くなってきた樹種ですね。

とくに関西の知人から、「冬の北海道にはさざんかが咲き乱れていると思っていた」
という驚愕の言葉を聞いたことがあるのですが(笑)
冬の花として、本州の方には、さざんかは季節感の中心にあるようですね。
まぁもちろんですが、冬の北海道では植物の開花気温を上回ることはないので、
あるのは雪の見事な咲きっぷりくらいですね(笑)。
ことしはサクラ前線、やや早い感じなので北海道でも令和改元前にも
開花があるかも知れませんね。楽しみであります。
今回の出張ツアーでは社用車の点検の件もあって、
東北南北を縦断して、札幌まで長躯走ることになっております。
各地でのビジネス要件もあるので、あちこちを転々としながらですが。
起点は仙台ですが、いったん郡山まで南下した後、
山形を経由して青森まで一気に北上。
その後、フェリーに乗って北海道函館に渡って、札幌まで長距離移動。
まぁ慣れてはいますが、さすがに走行距離は1,000km近くになりそう。
こんなふうに目を休ませながら、宿泊も重ねつつ、
季節のなかを走っております。さて、きょうもがんばるぞ、っと。
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【やはり店舗販売はPOPがキメ手】

2019年04月13日 06時09分33秒 | Weblog
きのうは高速道路を走りまくっておりました。
福島県での要件から山形という次第。
ということで、チョコチョコと高速PAで運転体力回復の休憩。
こういった機会では、店舗側からすると
いかに「疲れている客」の心理に即した「癒やし」を提供するか、だと。
それには主役はやっぱり食品系ということなる。
で、そういうものの仕入に工夫を凝らして頑張るのが基本でしょうが、
それをどう伝えるか、は相手が常に流動する人たち相手なので、
POPを通しての対話が基本になるのでしょうね。
わたし自身、こういったPOP広告には強い関心がある。
画像真ん中の「おしょうゆ」など、見たことも聞いたこともないのですが、
このシチュエーションで見ると、興味を惹かれる。

で、わたしはこの醬油だけパスして
ほかの2品は思わず購入してしまった(笑)。
いちばん惹かれたのが右側のヤツ。
ちょうど、東北の麺類、稲庭うどん、山形蕎麦、白石うーめんと
スタッフと、あれこれ話題にしていたところに持ってきて
今度は福島かよ、それもねばりと腰を強調する作戦に
「それは試してみたい」という刹那心理が強まってしまった。
醬油はまぁ、たくさん在庫もあるし、ということでパスしてしまった。
高速PAでの消費では、あんまり家庭での「常備品」はどうなのかなぁ。
もうひとつの「空けたらもう手が止まらない」ヤツは、
疲れた心理に即応していて、伸びた手が止まらなかった(笑)。
クルマを運転していると、ついストレスの解消のために
こういった「手が伸びる」ヤツには弱くなるのでしょうね。
今回はワケあって、札幌までクルマで出張がてら帰る。
そういうことで、普段は絶対に荷物が増える買い物はしないのに
ついつい手を伸ばしてしまった次第です。
でも、POPの売り言葉、眺めるのは愉しい。
いろいろ勉強にもなりますね。
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【鎌田紀彦氏、アース21で「和解」の講演】

2019年04月11日 06時35分59秒 | Weblog


きのうは札幌で地域工務店団体「アース21」の年次総会開催。
その「記念講演」に、新住協代表理事で室蘭工業大学名誉教授の
鎌田紀彦氏が登壇されていました。
これはアース21の会長である(株)キクザワ・菊澤社長の2年越しの
講演依頼に対して応えたもの。
アース21とは、北海道の高断熱高気密住宅革新の中核主体になった新住協が、
鎌田紀彦教授を中心にしてその研究を深めて行くに際して
さまざまな実験的な取り組みでその研究に全面的に協力し、
技術開発の最先端に立っていた工務店の中心的メンバーが設立した団体。
住宅性能技術だけではなく、地域工務店としての経営的な課題についても
相互に協力し合って、忌憚のない意見交換をする
そういう目的で、いわば新住協からスピンアウトして派生した工務店団体です。
その過程では鎌田教授とも話し合って、その趣旨に対して賛同を得、
双方で合意が形成されてスタートしたものでした。
しかしその後、アース21が独自に「住宅性能技術についても研究広報活動している」
といったような誤解が生まれ、残念ながら非協力的な期間が継続してきていました。
そういった誤解を払拭すべく、菊澤会長を初めとした関係の再構築努力が
継続してきて、今回記念講演を鎌田先生が受諾して実現したもの。
スタート時点の「住宅技術革新」の原点を再確認して
今後とも研究開発を進め、さらに普及啓蒙に協力してあたっていくことが、
きのうの鎌田先生の講演でも明確に発言されていました。

写真は、鎌田先生と談笑するアース21創設者の橋本政仁氏。
残念な関係が継続してきたことを忘れるように
ツーショットに収まっていただけました。
鎌田先生にも、本日このようにわたしのブログで紹介する旨の
了解もきちんといただいた上で、本日発表させていただくことにしました。

きのうの講演では、最新の研究段階の紹介があると同時に
高断熱高気密運動のスタートアップの昭和55年頃から平成初期の
初期10年間の状況について鎌田先生の方から、その核心的テーマについて
再確認の話題提供がありました。
北海道での住宅技術開発は、まさにイバラに満ちた道程。
暖かい家を願う多くの地域住宅ユーザーに応えようとする産学官連携があった。
ナミダタケ事件などの多くの困難を乗り越えてきたのは、
この初期10年間に集約的に、先生を中核にした研究と地域工務店の実験的建築が
相互に強い連帯・連携があったからこそ実現できたことだと。
さらにこうした努力開発の成果を「共有技術資産」として
オープンに社会に公開していった姿勢に大きな根拠が存在する。
同時代を協働的に過ごしてきた一員として、
今回の鎌田先生とアース21の「邂逅」には特別の感慨で立ち会っておりました。
謹んでこの事実を報告できることを幸せと考えております。
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【能楽堂2題 中尊寺境内&東北芸工大】

2019年04月10日 06時32分01秒 | Weblog


わたしは全国各地で建築を見るのですが、
能楽堂はそのなかでも好きな建築のジャンルと言えるでしょうか。
どっちかというと、伝統系の方に感性が反応するので
コンクリート建築にはどうしても冷たさを感じてしまって
思い入れを持つことができにくいタイプのようです。
先日来、っていうか、過去何回かこの上の写真の山形にある
東北芸工大キャンパスの能楽堂は見ているのですが、
コンクリートで造作されているせいか、
空間に対しての「思い入れ」の部分で、拒否されているように感じられる。
この能楽堂は水盤としての貯水池に浮かぶように立っている。
同様に池を通って本部棟にも出入りする構成になっているのですが、
どうも北海道人として、冬の寒さのほうが先にアタマに入ってくるので
水盤のデザインに対して無意識に拒否感が働くのでしょうか?
このあたり自分でもよくわからない。<今時期は水盤から水は抜いています>
設計意図としてこの水盤について
〜本館前には水を置き、その中央に網走刑務所(博物館網走監獄)の鏡橋を模した
鏡橋を設置した。この橋は受刑者が刑に服する時のように、
学生が鏡橋を渡るときに水を鏡として自分を見つめて正しい目的に
向かってほしいとの願いを込め設置した。
このほか、2001年に開学10周年を記念して本館脇に建てられた
水上能楽堂「伝統館」では、例年5月に能楽が舞われる〜
というようにWikiには説明が書かれています。
この設計意図に、楽しさの要素が見えにくいので
コンクリート素材ということもあり冷たい、という印象を持ってしまうのでしょうか?

やはりそれに対して伝統的な能楽堂には
まず、素材としての木の経年変化の表情が感じられ
観客席との距離感や素材としての土の軟らかさが伝わってくる。
この観客と演者との間隔、距離、その素材というものも、
大きな建築的要素なのだと気付かされる。
たしかに水盤には,薪能などの場合の「反射光」が印象的になるだろうと
容易に想像でき、それを見てみたい欲望もあるけれど、
日常的光景として考えると、冬場は痛々しく感じられはしないか。
蒸暑の夏を持つ盆地である山形では、たしかに夏の爽快を求めるのも
ムリからぬ部分はあるけれど。
どうも北海道人の「あたたかさ」志向の大きさを自ら感じている次第。
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【テクノ設備は生き延びる手段か、欲望維持か?】

2019年04月08日 07時22分13秒 | Weblog


写真は先日訪問させていただいた「山形エコハウス」。
外観的には非常にシンプルに、それこそ環境共生型のカタチ。
太陽に向かってすなおに正対させて、太陽光を最大限受容することを
エネルギー循環的に追究している。
屋根には太陽光発電を仕込み、同時に太陽熱温水装置で
家中の必要な温水も作り出すという志向性。
まぁ、現代が考える「エコ」という意味合いが表現されている。

一方で半地下室には、ごらんのような設備配管が配置される。
真ん中はペレットストーブですが、
太陽熱給湯など、配管関係は複雑縦横になっている。
個別の配管経路には名札も張られていて
それなりに理解はできるけれど、ふつうのユーザーがふつうに使いこなせるのか、
想像力はなかなか湧いてこない。
わたし個人的には、このうちのどれかの配管経路で問題が発生しても
自分でどうこうしようとかは、考えられないだろうと思われる。
それにこれらはすべて電気でうごくメカだろうから、
太陽光発電を自家利用するための転換スイッチなどが
明示的にわからないときには、大規模な災害での停電時、
どこをどうすればいいのか、理解するのは相当苦労しそうです。
また、そういう大災害が発電している昼間であればいいのですが、
深夜になった場合、一般人の「緊急時対応能力」範囲に収まるかどうか、
というように思われた。
他方で原始のひとびとは、こういったメカ能力はなかったけれど、
危機管理能力は現代人のレベルとは異次元的に高かっただろうと想像する。
まったく情報がないなかでも、直感力を働かせて
どうすれば生き延びられるか、対応していったのだろうと。
とりあえず、火をおこして暖を取らなければならないとか、
彗星が生存域に落下して、そこからの脱出をしなければならないとか、
気候変動が急激に襲ってきて、それに対応しなければならないとか、
そういった生存の基本的な能力に於いて、対応力が優れていたのだろう。
だから、全地球上のほぼすべての大陸にまで進出する生物的成功を得た。

そう考えると、これらの現代的エネルギー設備は
「快適」を支える欲望維持装置ではあっても、
生存のための不可欠装置であるのかどうか、ふと考え込む。
子孫のために生き延びる知恵をどう伝えるべきか、わたしたちは、
本当の意味でわかっているのだろうか、と。
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