『木琴デイズ』 通崎睦美著 講談社刊
マリンバ奏者の通崎睦美さんは2005年2月に東京フィルハーモニー交響楽団定期演奏会で平岡養一氏(1907-1981年)の木琴を演奏しました。演奏会での平岡氏の木琴の音色に惚れ込んだ通崎さんは遺族から彼の木琴とバチと楽譜も譲り受けました。この事がご縁で通崎さんは平岡氏の伝記を後年、書く事を決心しました。平岡氏は子供の頃は体が弱くて友達にからかわれて悔し涙を流したり、学業優秀ながら其の栄誉を讃えられる事もなく落胆する彼に母親がいつも言っていた言葉。
「神様というのは、人間に何か一つ足りないものをつけていますが、一方で、世界中のだれにでもないような良いものをつけてくれているものです。お前は必ず、今に人並みすぐれた、世界で一人の人間になれるということを忘れてはなりません。ただ、それが何であるかということは、お前が自分で見つけなくてはいけないんですよ。」
平岡養一氏は単身アメリカに渡り様々な苦労を重ね、日本に帰国後も世界一の木琴奏者と言われるまでに努力を重ねました。
平均寿命から言えばリコはその2/3を過ぎたシニアになって自分の人生を振り返ると、私は特別の才能は無かったし、大凶も大吉も無かった普通の人生でした。「普通が良い、普通で良い」の人生です。ただ、60代で短歌に出会ったことは僥倖だと思っています。短歌によって自分の想いを整理して、皆と分かち合える。それが悲しみ、怒り、喜び、うぬぼれであっても短歌誌に載ることにより私の経験がみんなの経験となる。