ロビンソン本を読む

本とデザイン。読んだ本、読んでいない本、素敵なデザインの本。

間道

2019-06-17 17:35:32 | 読書
坂入尚文『間道』





 この本の中に、写真は1点も入っていない。

 にもかかわらず、古いモノクロ写真を目にしているような感じがしていた。

 あるいは、音のないフィルム映像。

 荒い画質の中、男たちが酒を酌み交わしている。ときおり破顔するが、どんな話をしているのかわからない。


 1979年、著者は誘われて見世物小屋の旅に出る。

 全国の祭りにあわせて移動し、露店が並ぶ中、蝋人形館を設置する。

 何年も旅を続けるうちに、ほかの見世物小屋の人たちとも親しくなり、高市(たかまち・祭り)のしきたりにも慣れてくる。
 

 見世物という言葉には、いかがわしさがついてくる。

 見てはいけないものを、こっそり見るというやましさもある。

 その裏側を、著者は丁寧に書き綴る。

 ときおり「残雪があったかもしれない」という不確かな記憶が混じり、あやふやで怪しげな膜に覆われる。

 後半、飴細工師としてテキヤになった著者の話も興味深い。

 一般の世界とテキヤの世界の狭間で、両方を見ているような気分になる。


 カバーに使われている、フランス語混じりのチラシと、タイトルなどの配置のアンバランスさが、普通ではない雰囲気を醸し出している。


 デザインは赤崎正一氏。(2019)





コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« パルプ | トップ | ありきたりの狂気の物語 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

読書」カテゴリの最新記事