ロビンソン本を読む

本とデザイン。読んだ本、読んでいない本、素敵なデザインの本。

忘れたとは言わせない

2024-05-28 17:04:29 | 読書
 トーヴェ・アンステルダール『忘れたとは言わせない』


 川岸にたたずみ、こちら側を振り返った女性の泣きそうな困惑したような表情が印象的で、思わず書店で手に取った。

 このカバー写真はこの本のために撮影されたものではなく、ストックフォトから選ばれたものだが、タイトルの『忘れたとは言わせない』によって深い意味があるように感じさせる。


 舞台はスウェーデン。

 広大な森を抜け、砂利道を車で走る男。

 山と湖、そして廃屋。この寂しい土地に久しぶりに帰ってきた男は、実家の浴槽で父親の遺体を見つける。

 慌てて逃げ出す男。

 やましいことはないはずなのに、この男、どこか奇妙だ。

 駆けつけた刑事は地元の女性。彼女はまだ幼かった頃、男がこの地を去ることになった事件をぼんやり覚えていた。

 男は服役を終え帰ってきたのだが、その事件にははっきりしない部分が多いことに刑事は気づく。

 男の父親の刺殺と過去の事件には何か関連があるのか。

 
 霧の中を進むように、はっきりしたことがなかなか見えてこない。

 事件はまだ終わっていない、すぐ手の届くところに解決の糸口があるのかもしれない。

 湿気を含んだ重い空気を感じさせる世界で、きっと幸せな終わり方はしないのだろうという予感が離れない。


 装丁は國枝達也氏。(2024)



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