ロビンソン本を読む

本とデザイン。読んだ本、読んでいない本、素敵なデザインの本。

ラヴェル

2019-07-11 18:33:37 | 読書
ジャン・エシュノーズ『ラヴェル』




 作曲家ラヴェルをモデルにした、ノンフィクションのような小説。

 事実を基に、丁寧に晩年の姿を描いている。

 帯に『まるで音楽みたいな小説』とあるが、残念なことに音感の良くないぼくには、音の調べは聞こえてこない。

 でも、ラヴェルの姿、場面の情景は、驚くほど鮮明に現れる。

 それは、文の多くが現在形で書かれているからだろう。

 

 『彼は階段を駆け上がる。……見えない。……しようとする。……止まっているだけだ。……包んでいる。』



 最新のVRを使ったように、ラヴェルとの距離が近い。


 有名人であり、いつも周りに人がいるのに、どうしてか寂しさがまとわりついている。

 実際にこんな雰囲気の人だったのか、それとも作者が意図して作り上げたのか。


 カバーの素っ気なさは、とても地味な物語をイメージさせる。

 薄い本なのに、難しい曲が掲載された楽譜のようで開くのをためらう。

 でも読んでみると、わりと簡単で、思いのほか深みがあって、繰り返して読みたくなる。

 曲の練習をするかのように、少しずつ理解を深めていけるのだ。(2019)




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