ロビンソン本を読む

本とデザイン。読んだ本、読んでいない本、素敵なデザインの本。

魔法にかかった男

2019-06-29 19:38:52 | 読書
ディーノ・ブッツァーティ『魔法にかかった男』




 表紙いっぱいに折り返し階段の写真。

 階段の中央から階下を見下ろしているものだが、じっと見ていると、果てしなく、異界に落ちていくようだ。

 一般的な新書より若干大きいサイズ。

 天地が短めの黒い帯が巻かれている。

 その上辺に「Buzzati」と、白抜きの文字の下半分だけが大きく入っている。

 帯を取ると、カバーの同じ場所にまったく同じ文字が入っている。

 カバーと帯が一体になっているのだが、わずかに左右のズレがあって、文字は綺麗に重ならない。

 これは仕方がないことだ。

 パソコンのデータ上のようにはいかない。

 印刷して折った紙がぴったりうまく重なるのは難しい。

 でもそのズレがあるために、文字に奥行きが生まれている。

 文字の先には、吸い込まれそうな階段がある。

 
 イタリア人作家の短編集。

 不気味で、ちょっと怖い感じの話。

 恐る恐る歩いていると、突然落とし戸が大きな音を立てて閉まるような終わり方をする。

 文字のない、ページの白さに戸惑う。

 引き返して、もう一度読んでみる。

 一体何が起きたのだろうと。
 

 デザインは塙浩孝氏。(2019)





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