アレッサンドロ・マンゾーニ『いいなづけ』
古いイタリアの小説、翻訳は絶版になっているだろうと思っていた。
ところが、書店で河出文庫を見つけた。
イタリア・ミラノの高校で、校長が生徒に向けたメッセージが話題になったのは、新型コロナウィルスの感染が広がってきた頃のこと。メッセージのなかで『いいなづけ』に触れている。
『いいなづけ』では、ペストが蔓延するミラノの様子が描かれている。
17世紀の話だが、現代のコロナに対する人々の反応ととても似ている。
ただ、これは物語のほんの一部だ。
物語の中心になるのは、タイトル「許嫁(いいなづけ)」の通り、婚約をした2人の男女。
横恋慕、脅迫、屈従、対抗、逃走、誤解、さまざまなことが起こり、2人はなかなか結ばれない。
登場する人物、ひとりひとりの心理が細かく描かれ、脇道にそれた感じはあるものの、それがひとつの独立した物語としても読めるくらい興味深い。
コロナ渦で、過去に出版されたパンデミックを扱った本が復刊されている。
そこには、自戒しなくてはならない出来事が多く書かれているが、単純に娯楽として読むだけでも面白いものもある。
『いいなづけ』のなかで、ペストに罹患しながらも生き延び、行方不明の婚約者を探すレンツォのたくましさには、希望の光を見る。
装丁は渋川育由氏。(2020)
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