ロビンソン本を読む

本とデザイン。読んだ本、読んでいない本、素敵なデザインの本。

死にたくなったら電話して

2021-10-28 19:50:38 | 読書
 李龍徳『死にたくなったら電話して』




 真っ黒な表紙に浮かび上がる女性の横顔。

 眼差しの強さが印象的だが、タイトル「死にたくなったら電話して」のインパクトがそれを上回る。

 隙間なく並べられたピンクの文字が、いかがわしさを演出する。

 ところどころ文字は赤の濃度を変え、単調にならず、小さな違和感を生んで、さらに忘れがたくさせる。

 鬱陶しさを感じさせるのは、おそらく帯の文字だろう。

 表紙のほぼ半分を埋める黒い帯に、タイトルと同じように字間を詰めた「文学のスキャンダル」。

 隣に並ぶ著名人の推薦文がおとなしく見え、落ち着いて読むことができる。

 背のタイトルは、帯に隠れて一部分が見えない。

 面出しに特化した帯に、版元の意気込みが感じられる。


 カバーを見ているだけで満腹になる。

 読むと食べ過ぎた気分になる。

 後半になるにつれ悪意が加速し、ぐったりしてくる。

 それでも不思議ともたれないのは、悪意に含まれる悲しみが毒を中和させるからだろうか。


 装画は赤、装丁は鈴木誠一デザイン室。(2021)




最新の画像もっと見る

コメントを投稿