ロビンソン本を読む

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七つのからっぽな家

2023-04-15 16:41:09 | 読書
 サマンタ・シュウェブリン『七つのからっぽな家』



 電車の中で、前に座る女性に違和感を覚えた。

 すぐに気づいた。

 マスクをしていない。

 見慣れないものを目にしたとき、心にしっくりこないものが残る。

 マスクの生活がどれほど長かったのか思い知る。


 7つの短編が収められた小説集。

 そのうちのひとつ『ぼくの両親とぼくの子どもたち』。

 全裸で庭を走り回る両親。

 元妻に、彼らは病気なんだと言い訳をする男。

 ホースで妻の裸体に水をかける夫。楽しげな様子の老人たち。

 この情景に、彼らの息子だとしたら、どんな説明をしたらいいのだろう。

 普通ではないとしか言えないに違いない。

 ところが、彼らを目にした幼い子どもたちの反応は違った。


 公共の場ではマスクをするのが普通なのか。

 それともしなくていいのか。

 個人の判断とは曖昧だ。

 知らない人の口元を目にする新鮮さと、なぜこの場で外すのかという少しの疑問。

 やがて、ほとんどの人がマスクをしないようになり、違和感はなくなる。

 いまは、このあやふやな状況の浮遊感を覚えておこうと思う。

 
 装丁は佐々木暁氏。(2023)




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