ロビンソン本を読む

本とデザイン。読んだ本、読んでいない本、素敵なデザインの本。

2020-04-18 16:05:17 | 読書
 アンナ・カヴァン『氷』





 ちくま文庫の表紙は、周囲を白く縁取り、中には果てしない闇がある。

 その真ん中に白抜きのタイトル。

 冷たい水面に浮かぶ氷のようで、触れなくともその冷気が伝わってくる。

 見続けると、吸い込まれ、水中を漂うような感覚になる。

 このシンプルさが、この本の表紙にはふさわしい。

 読後、強くそう思うようになってくる。


 説明することのできないストーリーだ。

 読書は、時間、空間をさまよう。

 一瞬で、場所も立場も状況も変わっていて、とても頭がついていけないのに、飽きることなく読みすすめられるのはどうしてだろう。

 冒険をしている感覚だからなのか。

 それとも、危機感、悲しみ、焦りのようなものが支配していて切なくなるからなのか。

 大きな災難を乗り越えたのに、気づいたら汗ひとつかいていなかった。

 そんなスマートさも感じる、非現実。


 カバーデザインは水戸部功氏。(2015)




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