ロビンソン本を読む

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悪魔はいつもそこに

2023-07-24 18:23:24 | 読書
 ドナルド・レイ・ポロック『悪魔はいつもそこに』



 理不尽な仕打ちを受けた人が、相手に向かって拳を握りしめる。

 そいつを殴ってしまえ!

 読みながら心の中で叫ぶ。

 そんな暴力性が自分の中にあると気づき、恐くなる。

 物語に同調し、ときどき起こる気持ちの動き。

 それは、小説家の巧みな筆力が引き起こす。


 タイトルの「悪魔」、カバーの十字架を見て、オカルトものを想像した。

 怖いもの見たさでページを繰るが、ここにそういう恐怖はない。

 ただ、暴力の匂いが充満する文章で、いつ誰かが殺されても不思議ではない雰囲気が絶えず漂っている。


 1960年代のオハイオ州。

 極貧の中、暴力を振るうことを意に介さない父に育てられた少年の話が、いくつかある軸のひとつ。

 少年はその後両親を亡くし、愛情深い祖母とともに暮らす。

 やがて、彼は人を思い遣る大人へと成長していくように見えるのだが。


 悪は善良な人を飲み込んでしまう。

 そいつを殺ってしまえ!

 暴力が最上の解決に見えてしまうのは、ぼくの中に棲む悪魔のせいか、あるいは作家のチカラなのか。


 装丁は新潮社装幀室。(2023)




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