ペーター・テリン『身内のよんどころない事情により』
カバーの絵は、男2人の後ろ姿。
ルネ・マグリット「不許複製」で、帯がついていると気づかないが、取るとわかる。
この絵は「何か変」だ。
この小説も「何か変」だ。
読み間違えたのか? と感じる程度のちょっとしたこと。それが何度か繰り返され、確信に変わる。やっぱり変だ。
この著者の企みは、不安を呼ぶ。
まるで、地図を持たずに見知らぬ街を彷徨っている気分。
ガイドが欲しくなる。
読後、案内所へ駆け込むように解説へ向かう。
解明されない謎にヒントをもらう。
著者の意図したことを、半分も読み取れていなかったことに驚く。
もう一度最初から読んでみる。
解説を読んでいないとわからなかったことが見えてくる。
手間のかかる読書。
でも、最初に読んで感じたことだけで、実は満足している。
十分面白く、心に残る。
著者の策略は、ぼくにはたいして関係ない。
装丁は新潮社装幀室。(2021)
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