H・G・ウェルズ『ポリー氏の人生』
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H・G・ウェルズの小説なのに「本邦初訳!」。
帯のコピーを見て、いままで訳されなかったのは面白くないから、あるいは日本人には馴染めないからではと疑ぐる。
冒頭「あーなーぼーこー!」と叫ぶポリー氏に、これはどうかな、ついていけるだろうかと心配になった。
中年のポリー氏は、アホな穴ぼこに落ちたような人生を後悔している。
消化不良に苦しみ、妻に当たり散らす、まったく好感が持てない人物だ。
彼はときどき奇妙な言葉を話す。
十分な教育を受けられなかったからだが、若い時に好奇心から、あえて間違った発音をしていた。
「セスクイプルダン」
「ラプソドゥース」
翻訳なので、この後ろに小さく注釈が入るが、このカタカナ語がそもそも間違った、意味不明な言葉なのだ。
あまりに多用するので、少し不愉快になってくる。
ぼくがポリー氏を好きになれない理由のひとつだ。
ところが時代を遡り、彼の若い頃が語られると、印象がちょっと違ってくる。
ナイーブなのだ。
純真な恋をするのだ。
若い頃を知ると、好感が持てなかった中年男に、少し哀れみを感じるようになった。
そして、ある事件以降、彼は大きく変わっていく。
あんなに嫌いだった男が、最後にはちょっと好きになる展開は予想できなかった。
装丁は緒方修一氏。(2020)
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