チャイナドレスと女スパイ。～ 鄭蘋如（テンピンルー）。

ほんの手すさび、手慰み。
不定期イラスト連載・第七十七弾は、日中混血の美しき女スパイ「鄭蘋如」。

川沿いに林立する摩天楼。
世界中から流れ込む金。
ジャズ、酒、阿片、売春。
手招きするあらゆる娯楽。
暗躍する有象無象の輩。
１９２０～１９３０年代の“魔都”上海で生まれたファッションが「チャイナドレス」。
そのタイトでセクシーな衣装に身を包んだ「鄭蘋如」は、
若い身空で命を散らす。
自ら炎に飛び込み燃え尽きる、妖しく美しい蛾のように。

中国・国民党高官の父と、日本人の母との間に生まれた彼女は、才色兼備。
雑誌の表紙を飾るほどの美貌と、日中両国語を流暢に操る知性を武器に、
中国側のスパイとして活動した。

舞台は、上海。
１９世紀からイギリス・フランス・アメリカが租界（治外法権居留区）を開き、
モダンな街並みの裏では、各国の権謀術数が渦巻いていた。
やがて、日本が大陸へ侵攻。
各地を次々と傘下に治めてゆくが、半ば西洋である上海はアンタッチャブル。
租界を舞台に親日ＶＳ抗日の情報戦とテロの応酬が始まった。

「鄭蘋如」は、中国側のスパイ活動に身を投じ、
日本の首相の子息や親日派の大物と、次々と恋仲になる。
彼らから得た情報を元に、日本側要人の暗殺計画に加担。
結果、失敗に終わり捕縛。
銃殺刑に処せられた。
その時「顔だけは撃たないで」と懇願したという。
享年２５。
（※諸説アリ）