逮捕許諾請求で、検察庁法改正案審議に重大な影響も~重大局面を迎えた河井前法相に対する検察捜査
共同通信が、今朝、「検察当局が公選法違反(買収)の疑いで河井克行氏を立件する方針を固めた」と報じている。自民党の河井案里参院議員が初当選した昨年7月の参院選をめぐり、夫で前法相の克行衆院議員が地元議員らに現金を配ったとして捜査が進められており、連休中には任意で河井夫妻の事情聴取が行われたと報じられていた。「方針を固めた」ということは、最高検も含めて検討した結果、公選法の買収罪の罰則適用が可能との判断に至ったということだろう。問題は、国会会期中に議員を逮捕する場合に必要な「逮捕許諾請求」を行うか否かだ。県政界の有力者に多額の金銭がわたったとされているので、金銭を受領した側だけ逮捕というのも考えにくく、通常であれば、供与した側、受領した側双方を逮捕する可能性が高い。しかし、金銭授受が選挙公示日の3か月程度間であり、従来であれば、(政治活動としての「地盤培養行為」に関する資金提供と判断する余地があるため)公選法による罰則適用が行われてこなかった事案だ。しかも、原資が自民党本部からの1億5000万円の選挙資金である疑いがあるということもあり、許諾請求について審議する両院の議院運営委員会では、自民党側から異論が出て大荒れになる可能性がある。しかし、これまで、このような選挙に関する不透明な金の流れが、公選法違反の摘発の対象外であったこと自体が問題なのであり、それが、選挙資金をめぐる不透明性の原因となってきたことは否定できない。今回の事件に対する検察の積極姿勢の「正義」は揺るがないだろう。現在、法務大臣も出席しない内閣委員会で審議が行われている「検察庁法改正案」は、検察最高幹部の定年延長を内閣の判断で認めることで、内閣が検察に介入する可能性が指摘されている。このような状況で、1億5000万円の選挙資金提供に関わった疑いが指摘されている自民党側が、逮捕許諾請求を拒否して検察捜査を妨害すればするほど、政治の力で検察捜査が封じ込められることが印象付けられることになり、検察庁法改正案の審議にも重大な影響を与える。まさに「検察庁法改正」の「実害」が明らかになるということだ。
【河井前法相「逆転の一手」は、「選挙収支全面公開」での安倍陣営“敵中突破”】で詳細に述べたように、ここで絶体絶命の状況に追い込まれた克行氏が、政治家としての生命を保つ「唯一の方法」は、公職選挙法に基づいて提出されている選挙運動費用収支報告書の記載を訂正し、県政界の有力者に現金を供与したことを含め、選挙資金の収支を全面的に明らかにすることだ。選挙に関する支出である以上、違法な支出も記載義務があることは言うまでもない。そして、記者会見を開くなどして、自民党本部から1億5000万円の選挙資金の提供を受けたことについて、その経緯・党本部側からの理由の説明の内容・使途など、それが現金買収の資金とどのような関係にあるのかについて、すべて包み隠すことなく説明するべきだ。国政選挙である参議院議員選挙において、急遽立候補することにした河井案里氏を当選させるために巨額の資金が飛び交ったという「金まみれ選挙」、その資金は自民党本部から提供されたもので、そこに、安倍晋三自民党総裁の意向が働いている疑いがあるという、日本の政治と選挙をめぐる極めて重大な事件だ。選挙に関する金銭の配布が、どこからどのように得た資金によって、どういう目的で誰に対して行われたのか、国民にすべてが明らかにされなければならない。それを、「国会議員の逮捕」という検察の強制捜査に委ねることになるのか、前法務大臣として自らの説明責任を果たすのか、克行氏にとって残された時間は僅かだ。
☕歌謡浪曲 -島津亜矢- ~ 5曲 33分 ~
声をあげれば政治動かせる
三権分立脅かす検察庁法改定案止めよう
オンライン各党会見 志位委員長が発言
![]() (写真)Choose Life Project主催「検察庁法改正案に関する緊急記者会見」で発言する志位委員長(上段中央)と各党の参加者ら。上段左端は司会の津田大介氏=12日 |
日本共産党の志位和夫委員長は12日、有志の映像グループ「チューズ・ライフ・プロジェクト」の「緊急記者会見」に各党代表らとオンラインで参加し、政府が検察人事に介入する仕組みを制度化する検察庁法改定案について議論しました。(志位委員長の発言)
志位氏は、そもそも検察官は、人を罪に問える――逮捕し、起訴するという強い権力があたえられた唯一の職であり、「一般の公務員とはまったく違う」と指摘。これまで政治的独立性、中立性を厳格に守るため、例外のない定年退官制を採用してきた検察幹部の定年延長を内閣ができるようにすれば、「検察官はそのキャリアの一番最後のところで生殺与奪の権を内閣に握られてしまい、検察全体が萎縮し、時には内閣総理大臣経験者まで逮捕したこともあったチェック機能を失ってしまう」「違法なやり方で決めた黒川氏(弘務東京高検検事長)の定年延長を後追い的に合法化し、それが制度化されてしまえば、検察機能そのものが損なわれ、三権分立、法治国家が土台から危うくなります」と強調しました。
さらに、新型コロナウイルス危機のもと、政府が国民に一致結束を求めながら、不要不急の同法改定を強行するのは“火事場泥棒”的なやり方で、「絶対に許してはいけない」と批判しました。
立憲民主党の枝野幸男代表は、定年延長のために権力・政権の意向に反することがやりにくくなり、「検察の中立性・公正さが明らかにゆがめられるのは間違いない」と強調。国民民主党の玉木雄一郎代表も「司法大臣が検察官の定年を延長できた戦前の制度をなくし、内閣の影響を排除し、定年延長を不可能にし、今日まで運用されてきた」と指摘。「これまで慎重に扱ってきた検察官の独立性や中立性を大きく損ねてしまう」と批判しました。社会民主党の福島みずほ党首も、「政府によって検察官の定年を延長するなどということは戦後一度もなかった」と、法改定に厳しく反対しました。
日本維新の会の足立康史衆院議員は、黒川氏の定年延長のためだとの指摘は「陰謀論」だなどと批判。枝野氏は、国家公務員法の下位規定である人事院規則の定年延長条件に当てはまらない黒川氏の勤務延長を法解釈変更で決めたのは「違法」だと指摘しました。
志位氏は、検察官の65歳退官と、検察幹部は63歳までとするシンプルな当初の政府改定案(昨年10月時点)を大きく変えた理由について説明した政府の文書を示し、「黒川さんについて、国家公務員法を適用し、定年の延長を決めたから、それにともなって法案も変えますよと書いてある。違法な定年延長を『後追い』して、法律を変えてしまおうというのが今度の経緯です」と指摘し、「陰謀論」だとの指摘の誤りを明らかにしました。
司会の津田大介氏は、ツイッターでの600万件を超える抗議の声の受けとめを質問。志位氏は、コロナ禍で大きな集会ができないもとで、これまで声をあげてこなかった人たちも含めツイッターで“みんなで声をあげよう”という動きが広がり、メディアも大きく扱ったと指摘。「みんなで声をあげれば政治を動かせるということがこの流れのなかで示されています。日本の民主主義の希望を感じます」として、今週にも狙われる衆院通過を許さないというツイートを全国に広げてほしいと呼びかけました。
田崎史郎が検察庁法改正問題で「黒川検事長と安倍首相は近くない」と嘘八百の政権擁護! 大谷昭宏、ラサール石井にツッコまれ馬脚
TBS『ひるおび!』5月12日放送より
多数の有名人を含む多くの国民からTwitter上で「#検察庁法改正案に抗議します」の声が上がっているというのに、安倍首相は昨日の国会で「さまざまな反応があるんだろう」とあっさり片付け、与党は予定どおり今国会での成立を目指しているという。つまり、これほどまでの国民の反対の声を無視して押し切る気でいるのだ。
言うまでもなく、いまは新型コロナの影響で待ったなしの状態にある人たちを救うための生活支援策に早急に取り組むべきときだ。だが、その肝心の第二次補正予算案は今月中を目処に編成するなどというタラタラした対応しかしていないのに、政権が検察人事に介入できるようにする法案は国民の声を一顧だにせず信じられないスピードで審議を進めるとは……。
コロナ禍での安倍政権のこの横暴に、さすがに一部のワイドショーも検察法改正案の問題を取り上げたが、そんななか、本日放送の『ひるおび!』(TBS)で、またもあの人が露骨な政権擁護を繰り出した。言わずもがな、政治ジャーナリストの“田崎スシロー”こと田崎史郎氏だ。
まず今回の問題をおさらいしておくと、“安倍政権の番犬”とも呼ばれる黒川弘務・東京高検検事長は今年2月に63歳の誕生日を迎え定年退職となり、次期検事総長には黒川氏と同期の林真琴・名古屋高検検事長が就くことになると見られていた。ところが、今年1月に安倍内閣は、検察官に適用される検察庁法ではなく国家公務員法を適用するという脱法行為によって、黒川氏の定年を半年延長することを閣議決定。だが、1981年の政府答弁では「国家公務員法の定年延長は検察官に適用しない」としており、そのことが指摘されると、安倍首相は唐突に「法解釈を変更した」と言い出したのだ。
さらに、昨年の秋に内閣法制局が審査を完了させた検察庁法の改正案では、検察官の定年を現行の63歳から65歳に引き上げ、ただし63歳になったら検事長や次長検事などの幹部の役職から退かなければならないという“役職定年制”を設けたものだったにもかかわらず、今回国会に提出された法案では役職定年に例外を設け、内閣や法務大臣が「公務の運営に著しい支障が生じる」と認めれば最長3年そのポストにいつづけられる、という特例をあとから付け足したのだ。
ようするに、今回の検察庁法改正案は、後付けで黒川氏の定年延長を正当化する上、時の政権が検察幹部の人事に介入することが可能になるという、三権分立を崩壊させる内容になっているのだ。
いかにこの改正案が民主主義を破壊するものであり、だからこそ多くの人が声をあげているわけだが、こうした問題点を踏まえ『ひるおび!』のMCである恵俊彰は「(黒川氏を定年延長させたことの)後付けみたいにこの法律が見られてしまうわけですよね?」と田崎氏に質問。すると田崎氏は、いけしゃあしゃあとこんなことを言い出したのだ。
「まあ、これ仮に(法案が)成立しても、夏の人事で黒川さんが仮に最高検の検事長になられたときに『はい、そうですか』と言う人はいないでしょうから、後付けにもならない、正当化にもならないと思いますよ。別個の問題なんです、これ」
黒川氏が検事総長になってもどうせ文句は言われるんだから後付けにも正当化にもならない……って、そんなバカな話があるか。しかも「別個の問題」などと言うが、検察庁法改正案に特例が設けられた経緯を見ても、あきらかに黒川氏の人事のために付け加えられたとしか思えない。いや、黒川氏の問題を抜きにしても、検察幹部人事への権力の介入を可能とする大問題なのだが。