★全国の病院でつくる全日本病院協会、日本病院会、それに日本医療法人協会の3団体が7~15日に加盟する全国の4332病院を対象に調査を行ったところ、有効回答があった1049病院の4月の利益率はマイナス9・0%。医療従事者へ敬意を持とうと多くの声がありながら、コロナ禍の生命線の病院は今苦境に立たされている。全国の病院のおよそ8割で外来や入院の患者数が減少して経営が悪化し、特に新型コロナウイルスの入院患者を受け入れた病院では、経営の悪化がより深刻という。

★コロナ禍では医者は積極的に感染者を受け入れようと努力する。医者としての使命感がそうさせる。しかし医療従事者への不当な差別や暴力、風評被害によりコロナ感染者に関わると病院に悪いうわさが立つと、病院の経営者や事務方は感染者受け入れを極端に嫌う。その実態がこの数字だ。多くの病院で「経営悪化で今後の感染症の対応が適切にできなくなる恐れがある」と危機感を持つとともに、批判や排除の現状を憂い社会の分断を危惧している。

★「院内感染が起きたら、病院はつぶれてしまう」と感染者受け入れを拒否する病院が増えているだけでなく、全国の医師会がPCR検査を行うことになりつつあるものの「地方の医師会は幹部に開業医が多く、いざ検査をやるとなると手を挙げる医師や病院が少ない。やはり病院やそこの医者が関わっていることを隠したがるので、検査が進まない実態がある。それで一般患者が減り経営を圧迫する」(地方の中堅医院院長)。加えて覚悟して感染者受け入れを決めたとしても、病院はそれに対応する医療機器を自腹で購入するしかない。自治体によっては助成金が出る場合もあるようだが、医師や看護師たちへの手当を出すなどの措置は立ち遅れている。「大学病院は規模も医療機器も人材も豊富だが満床を理由にコロナ感染者の受け入れを拒否している。それならほかの患者を引き受けてくれればと思うが、そうするとこちらがつぶれてしまう」。規制緩和に前のめりな政府は第2波、第3波を乗り切る手だてを病院に施すべきだ。(K)※敬称略