新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、東京都などでは季節性インフルエンザが流行期入りし、都内の発熱外来はコロナとインフルの同時流行による患者増加への対応に追われている。年末年始は休診となる医療機関も多く、一時的に発熱外来にかかりにくい状況が生じる懸念がある。医療関係者は、検査キットや市販薬の購入など事前の備えを呼びかける。(榊原智康)
◆「発熱に備え、検査キットや市販の解熱鎮痛薬を用意して」
「発熱患者数はコロナの感染が落ち着いていた10月に比べると今は6倍近くまで増えた。夏の第7波のピークに近い状況だ」。都内と千葉市内の計3カ所で発熱外来を設ける「東京ビジネスクリニック」の内藤祥医師は、医療逼迫への警戒を強める。
クリニックでは対面に加え、オンラインも活用し、発熱患者の診察を行う。10月の発熱患者は1日当たり40〜50人だったが、最近は200〜250人。患者は20〜40代が中心で、軽症の人が多いが、中には40度近い高熱を出す人もいるという。
先週から、インフルと診断するケースが増えている。都内では定点医療機関で報告された患者数の平均が18日までの1週間で1.12人となり、都は22日、インフルの流行開始を宣言した。内藤医師は「クリニックを訪れる発熱患者の6割がコロナ、インフルが2割、残りの2割はそれ以外の風邪など」と言う。
東京都北区の「いとう王子神谷内科外科クリニック」の伊藤博道院長は発熱患者増を受け、今月中旬から、小学生以下の子どもや高齢者などを優先的に診察する。若者など重症化リスクが低い人には、都が開設した「臨時オンライン発熱診療センター」の受診を促す。土日も診療を行っているが、25日の日曜日は設けている受診枠がすぐに埋まり、受診を希望する小児や高齢者でも診察できない患者が出たという。
都内ではコロナの新規感染者数の1週間平均が8週間連続で増加傾向にあり、27日時点では1万7000人を超える。年末年始は帰省などで人と人との接触機会が増え、厚生労働省に助言する専門家組織は「増加傾向の継続が見込まれる」と予測する。一方、インフルも例年1〜2月ごろに流行のピークを迎える。
発熱患者を診察する「いとう王子神谷内科外科クリニック」の伊藤博道院長(右)=東京都北区で(伊藤院長提供)
伊藤院長は「診察の需要に応じられない状況になってきており、年末年始はさらに状況が厳しくなる恐れがある。発熱に備え、検査キットや解熱鎮痛薬などの市販薬を用意しておいてほしい」と話している。
◆重症化リスクが高い人はかかりつけ医か電話相談窓口へ
年末年始に発熱などの症状が出た場合、どうしたらいいのか。診療を行う医療機関が限られるため、厚生労働省は、基礎疾患のない若者など重症化リスクが低い人は新型コロナの抗原検査キットで自ら検査し、陽性であれば自宅療養するよう協力を求めている。陰性の場合は季節性インフルエンザの可能性があり、希望者は電話やオンラインなどで診療を受ける。
重症化リスクが高い人は、診療を行っている医療機関を速やかに受診するのが基本になる。まずは、かかりつけ医に電話で相談する。休診している場合やかかりつけ医がいない人は、居住している都道府県などが開設している電話相談窓口に連絡すると、対応可能な医療機関を教えてもらえる。診療を行っている医療機関は都道府県のホームページにも掲載されている。
帰省や旅行で移動する人が多くなる。「かずえキッズクリニック」(渋谷区)の川上一恵院長は「出かける前に検査をしておけば帰省先などで安心して過ごせる」と、抗原検査キットの積極的な活用を勧めている。