金メダルを手に笑顔を見せる大橋悠依選手=25日、東京アクアティクスセンターで
そして誰もいなくなった――となりかねない。
7月13日に開村した東京五輪選手村。政府や組織委がうわごとのように繰り返す「安心安全」の文句と裏腹に、連日のように新型コロナの陽性者が出ている。22日にはチェコの卓球選手ら、1日の最多記録の4人が感染。すでにチリのテコンドー女子選手、英国の射撃女子選手が陽性判定され、棄権を表明した。24日にビーチバレー女子で日本ペアと対戦する予定のチェコのペアの1人が陽性となり、こちらも棄権が濃厚となった。
クラスターまっしぐらの選手村に「NO」を突き付けたのが米国の体操チームだ。一度は選手村に入りながらも、19日に女子チームのコーチがツイッターで「我々全員で決めたことです」として、選手村からの“脱出”を発表。「ホテルの方が選手や我々の安全をより管理できる」として、ホテル宿泊を決めた。男子チームもこれに追随するという。
組織委によるバブル方式はとっくに崩壊。選手村外に宿泊するチームスタッフは日刊ゲンダイの取材に、「試合や練習の際は選手村から会場までの貸し切りバスが出る。ただ、我々スタッフは選手村までは電車かバスなどの公共交通機関で来いと言われた。これでは自分たちが選手に新型コロナを感染させかねない」と、自分たちが村内にウイルスを持ち込む可能性を危惧していた。
本来、米国体操チームの“わがまま”を注意すべき組織委は、米放送局の取材に「個々のチームのこと。我々が口を出すべきではない」と、弱腰もいいところ。ことさら安全を強調していた選手村から次々と感染者が出ている以上、強く出るに出られないのだろう。
となれば、今後も選手村からの脱出を試みる選手団が増えても不思議ではない。組織委が注意すらできないとなれば、なおさらだ。総工費約1000億円といわれる選手村が廃虚同然となるのは、時間の問題である。
週のはじめに考える 危機に乗るな、風に乗れ
◆コロナ禍便乗の改憲戦略
◆「脱炭素・脱原発」の未来
★悲喜こもごもの東京オリンピック(五輪)が開幕した。この五輪開催までの関係者にとって、開会式はどんなものだったのか。開閉会式は開催国や開催都市の特徴や歴史、最先端技術などが披露され、スポーツの祭典でありながら、文化芸術の粋を披露する場所でもある。都知事・石原慎太郎時代に1度は落選した招致合戦。2度目の立候補でタレントが「おもてなし」といい、当時の首相・安倍晋三は13年のIOC総会で福島第1原発の汚染水に関し「アンダーコントロール」と説明し、復興五輪と名付けられた。その安倍は20年に「完全な形で開催する」と宣言し、1年延期を決定したものの、開会式には出ないという愚行で締めくくった。
★招致に成功した都知事・猪瀬直樹は「コンパクト五輪」でカネはかからないとしていたが、自らのカネの問題で招致から3カ月で辞任。東京五輪のエンブレムに選定されたデザイナーの佐野研二郎はデザイン盗用疑惑で白紙に。その後も国立競技場は国際デザインコンクールで選ばれたザハ・ハディドの当初デザインを予算がかかりすぎると白紙撤回、再コンペで現在のものになったが、建築費は逆に高くなった。19年3月には招致委員会の2億円にも上る裏金疑惑を仏当局が捜査、JOC(日本オリンピック委員会)会長・竹田恒和が辞任。今年2月には女性蔑視発言などで元首相で組織委会長・森喜朗が辞任。
★問題はここからだ。3月には演出の総合統括だったクリエーティブディレクター・佐々木宏がタレントの容姿を侮辱するような演出を提案していたことが発覚し辞任。今月19日には作曲の小山田圭吾が辞任、22日には開閉会式演出の小林賢太郎が解任された。内容は周知のとおりだ。22日の会見で大会組織委員会事務総長・武藤敏郎は「昔の行動まで調査するのは実際問題として困難」としたが電通に丸投げし、仲間内を集めた結果でしかない。彼らに五輪憲章への宣誓ぐらいはさせるべきではなかったか。(K)※敬称略
◎まっ、寝転んでさ~五輪でも~テレビ観戦しようよ>>皆の衆
「五輪は家で応援」も、熱中症には要注意! 4割以上が自宅で発症
◆小まめな水分補給、目で見る室温管理を
五輪入場行進にすぎやまこういちの曲はありえない! 杉田水脈のLGBT差別に「ありがたい」と同調 南京虐殺否定の歴史修正主義
『チャンネル桜』に出演するすぎやま氏
小山田圭吾、小林賢太郎の問題があっても、東京五輪組織委員会は結局、なんの反省もしていないということだろう。昨日7月23日におこなわれた東京五輪大会の開会式。もっとも注目を集める入場行進のオープニングで、作曲家・すぎやまこういちが手掛けた「ドラゴンクエスト」の代表曲「序曲:ロトのテーマ」が流された。
じつは、開会式の前日である22日に一部報道が、式典内ですぎやまの曲が使用されると伝えたときから、SNS上ではこんな指摘が相次いでいた。
〈小山田、小林とやってきて、最後にこれが出てくるのは悪夢だよ〉
〈すぎやまこういちの曲を開会式で使えば、今までの謝罪が嘘だったことの証明になるな〉
〈すぎやまこういちは現在進行形でガチのアウト〉
〈うわぁ。開会式、すぎやまこういちの音使うんかい。レイシストによるレイシストのためのオリンピックて、丸まんまあのナチスの1936ベルリンオリンピックのコピーやないか〉
実際、すぎやま氏の過去の発言を振り返ると、それは小山田圭吾と同じく、とても国際イベントの開会式で大々的にその作品を使用できるようなものではない。
その典型が、LGBT 差別への同調発言だ。すぎやま氏は2015年、のちに「LGBTには生産性がない」という差別論文で大きな非難を浴びる自民党の杉田水脈・衆院議員(同番組出演時は議員落選中)と「チャンネル桜」で共演しているのだが、その際、杉田氏は「生産性がない同せい愛の人たちにみなさんの税金を使って支援をする。どこに大義名分があるんですか」などと主張。ところが、すぎやま氏は杉田氏について「男性からは言いにくいことをガンガン言っていただくのはありがたい」「正論ですよ」などと同調しているのだ。
また、杉田氏はこのとき、テレビ局からLGBTの教育の是非について取材を受けたエピソードを紹介。笑いながら「『同せい愛の子どもは、普通に正常に恋愛出来る子どもに比べて自殺率が6倍高いんだ』と。『それでもあなたは必要ないと言うんですか』みたいなことを言われまして」と、LGBTの人たちを小馬鹿にするような発言をしたのだが、この杉田氏の発言にすぎやま氏は一緒になって笑っていた。さらには「決定的なことは、同せい愛から子どもは生まれません。これも大きい」などと、杉田氏の生産性発言に通じる発言もしている。
このすぎやま氏の言動は、2018年に杉田議員の差別論文が問題になった際、アメリカの大手ゲームメディアでも批判されているが、すぎやま氏の態度は性的マイノリティに対する差別を是認する、オリンピック憲章に掲げられたあらゆる差別の禁止に反するものだろう。
五輪開会式演出の小林賢太郎が“ユダヤ人大量惨殺”ギャグで解任! 問題人選続発の背景に政権とメディアの”差別・歴史修正主義”蔓延
東京2020オリンピック競技大会公式ウェブサイトより
開会式作曲担当の小山田圭吾、東京五輪の文化プログラムに出演する予定だった絵本作家・のぶみに続いて、今度は開会式・閉会式の演出トップであるショーディレクター・小林賢太郎に問題発言が発覚。報道では、開会式前日にもかかわらず、急遽解任されることになったらしい。
問題になったのは、小林がラーメンズ時代、自作コントのなかで「“ユダヤ人大量惨殺ごっこ”やろう」というセリフのあるギャグをつくっていたことだった。
問題のコントは20年ちょっと前のもので、NHKの人気教育番組『できるかな』をパロディにしている。小林が「ノッポさん」に、片桐仁が「ゴン太くん」に扮し、以下のようなやりとりが展開される
片桐「来週、何やるか決めちゃおうね。そういうことはちゃんとやんなきゃダメだから。何やる、何やる?」
小林「ああ、じゃあ、トダさんがさ……ほらプロデューサーの。『つくって楽しいものもいいけど、遊んで学べるものもつくれ』って言っただろ? そこで考えたんだけど、野球やろうと思うんだ。いままでだったらね、新聞紙を丸めたバット。ところが今回はここにバットっていう字を書くんだ。いままでだったら、ただ丸めた紙の球。ここに『球』っていう字を書くの。そしてスタンドを埋め尽くす観衆。これは人の形に切った紙とかでいいと思うんだけど、ここに『人』って字を書くんだ。つまり文字で構成された野球場をつくるっていうのはどうだろう?」
片桐「いいんじゃない? ちょっとやってみようか。ちょうどこういう人の形に切った紙いっぱいあるから」
小林「本当? ああー! あの“ユダヤ人大量惨殺ごっこ”やろうって言ったときのな」
片桐「そーうそうそうそうそう! トダさん怒ってたなあ」
小林「『放送できるか!』ってな」 ネットなどに流れている当該コントの内容を確認する限り、ユダヤ人大量虐殺=ホロコーストに、「ごっこ」と付けて矮小化し、何の批判もなくただ笑いにしているだけ。
SNS上では、脳科学者の茂木健一郎氏が〈コメディを、文脈から切り離してこのように取り上げることに私は断固反対。小林賢太郎さんがどのようなクリエイターか、わかっているはず。著しくフェアでない〉とツイートしたのをはじめ、お笑いのネタまで問題にするのはおかしい、という擁護論も出ているが、オリンピック・パラリンピックという大会の性格、そしてユダヤ人虐殺の歴史的な経緯を考えれば、非難され、解任されるのは当たり前だろう。