大陽館にて。受付。トイレ。
ここが入り口。
入ってすぐ右に受付がある。
左側にはトイレが4~5つ並んでいる。
トイレはきれいだったし、においもほとんどしなかった。
バケツに水がためてあって、使用後は杓子を使って水を流す。
一番奥の1つだけが、スリッパに履き替えてはいることになっていた。なぜだかはわからない。
大陽館にて。宿泊料金など。
受付で金を払い、宿泊証明書をもらう。
これを持っていれば、一回200円のトイレ使用料はただになる。下山の際も利用させてもらった。
宿泊料は1泊2食付きで9975円(素泊まりは6300円)。
あとからわかったがこの料金は、富士山の数ある山小屋の中でも群を抜いて高い。
富士山山小屋のおおよその相場は1泊2食付きで7350円。素泊まりが5250円といったところのようだ。
山小屋を選ぶ基準は料金ではなく山行計画が優先するから、高いから他に泊まるという選択は普通はしない(と思う)。われわれもそうだった。高い気はしたが、「まあやむをえない」という感覚だった。
部屋に荷物を置いて、まずはビールで乾杯。350㎖の缶ビールが735円。しかし、格別だった。
メニューにはほかにもいろいろあった。
大陽館から見上げた山頂はこんな感じ。
大陽館にて。夕食。
夕食は17:00から。
富士山の山小屋の夕食は、ほとんどがカレーライスと言われるけれど、そんな中、ここ、大陽館は「富士山山小屋随一」と聞く食事が何と言ってもウリらしい。おそらくは、宿泊代が高いのは、まずもってこのあたりに理由があるのだろう。
下界なら特筆すべき点もないが、富士山で食べるとなればやはりちょっとうれしい気はした。しかもご飯とトン汁は食べ放題。
みんな腹をすかせているので、次々とおかわりに手が伸びる。
下手な民宿の「おかわり自由」と違って、何も言わずとも、少なくなった鍋やおひつをすばやく見つけては手際よく補充してくれる。
具だくさんのトン汁は確かにうまい。ご飯もおいしいコメだった。
大食漢なら、9975円でも十分元が取れるかもしれない。
翌朝の出発が4:00なので朝食は弁当にしてもらっていた。夕食時にすでに弁当を受け取る。紙に包まれビニール袋に入っているので中は見えない(みようと思えばもちろん見えるけど)。
細かいことだが、部屋に戻ってザックを詰め直したときに、何気にこの弁当を突っ込んで置いたのが、寝床に入ってから気になって仕方がなかった。
ザックを立てて置いていたので、必然的に弁当も縦になっている。中の汁分が漏れてやしないかと気になったが、静まり返った真っ暗な寝床で、がさごそ動かしようもない。
「早朝出発する方は、寝る前に必ずザックの準備を終わらせて置いてください。起きてから準備をされると眠っている方の迷惑になりますから」
と食事のあとで注意があった。
弁当のことは、またあとで書こうと思う。
大陽館にて。七合目からの眺め。
夕食後、まだ明るさが残っていた。
風呂に入れるわけでもなく、部屋と言っても寝るだけの2段ベッドしかない。中は小暗く、おそらくは深夜に出発する予定の人たちがすでに寝入ってもいる。何一つやることはない。
外に出てテーブルに座って下界を眺める。雲海の中にいくつか見える山や街の名前を教えてもらいながら、しばし景色を楽しんだ。
月も見えた(右上の白い点)。
18:00頃には切り上げて寝床にもぐりこんだ。
大陽館にて。部屋と寝床。
夕食後の注意がもうひとつあった。
「今夜はだいぶ冷え込みそうなので、シュラフだけでなく布団もかけて眠るように意識してください」
我々の「部屋」は二段ベッド--といっても独立した部屋があり、本当にベッドがあるわけではなく一枚の棚を等間隔に柱が隔てているだけで板壁さえない--の上段。幅1mほどのスペースがわれわれ二人分の寝床となる。シュラフが3つ並んでいる。枕はない。梯子を上り下りする。
「布団」がどこにあるのかわからなくて聞きに行ったが、それはつまり、敷布団と思っていたものが、何層にも布団が重ねられた掛け・敷き兼用となっていて、寒い時には上の何枚かをめくってもぐりこむという仕組みなのだった。なるほど。
不潔とは思わなかったが、なんとなく湿気を帯びている感じがするのはやむをえまい。
大陽館にて。眠れない夜
ヘッドランプが必要かと思っていたが、必要最低限の灯りもあった。
明日のことを考えて、なんとか寝ようと努力したが、どうしても寝付けない。すぐ横のKさんは静かに寝息を立てている。さすがだと思った。1人どこかで大きないびきをかいている男がいたが、それほど気にならなかった。念のため用意した耳栓も不要だった。
とにかく、やることがなく、本も読めず、音楽も聴けず、話もできない--寝るしかない。その環境が息苦しくて、「まるでクラシックのコンサート会場みたいだな」と思う。
クラシックの演奏会のほうが、それでもまだ小声で話などはできる。そんなに息をつめて演奏に集中しているのは日本くらいなのだから、ここ、富士山の山小屋には外国人は泊まれないに違いない、などと余計な心配までしたくなった。
20:00頃、どうしても我慢できなくなって、外へ出た。山小屋の若いスタッフ数人が、ボリュームを抑えてミスチルの曲をバック流しながらおゃべりに興じていた。
表にはだれもいなかった。一人坐って、月を見上げた。きれいな月が南の空に浮かんでいた。しばらく眺めていた。さすがに肌寒いが、気分は良かった。
明日は4時前にはここを出て、山頂へ向かう途中でご来光を眺める。山小屋の北側から、暗闇の中この登山道を登ることになるのだった。
≫その5に続く
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ここが入り口。
入ってすぐ右に受付がある。
左側にはトイレが4~5つ並んでいる。
トイレはきれいだったし、においもほとんどしなかった。
バケツに水がためてあって、使用後は杓子を使って水を流す。
一番奥の1つだけが、スリッパに履き替えてはいることになっていた。なぜだかはわからない。
大陽館にて。宿泊料金など。
受付で金を払い、宿泊証明書をもらう。
これを持っていれば、一回200円のトイレ使用料はただになる。下山の際も利用させてもらった。
宿泊料は1泊2食付きで9975円(素泊まりは6300円)。
あとからわかったがこの料金は、富士山の数ある山小屋の中でも群を抜いて高い。
富士山山小屋のおおよその相場は1泊2食付きで7350円。素泊まりが5250円といったところのようだ。
山小屋を選ぶ基準は料金ではなく山行計画が優先するから、高いから他に泊まるという選択は普通はしない(と思う)。われわれもそうだった。高い気はしたが、「まあやむをえない」という感覚だった。
部屋に荷物を置いて、まずはビールで乾杯。350㎖の缶ビールが735円。しかし、格別だった。
メニューにはほかにもいろいろあった。
大陽館から見上げた山頂はこんな感じ。
大陽館にて。夕食。
夕食は17:00から。
富士山の山小屋の夕食は、ほとんどがカレーライスと言われるけれど、そんな中、ここ、大陽館は「富士山山小屋随一」と聞く食事が何と言ってもウリらしい。おそらくは、宿泊代が高いのは、まずもってこのあたりに理由があるのだろう。
下界なら特筆すべき点もないが、富士山で食べるとなればやはりちょっとうれしい気はした。しかもご飯とトン汁は食べ放題。
みんな腹をすかせているので、次々とおかわりに手が伸びる。
下手な民宿の「おかわり自由」と違って、何も言わずとも、少なくなった鍋やおひつをすばやく見つけては手際よく補充してくれる。
具だくさんのトン汁は確かにうまい。ご飯もおいしいコメだった。
大食漢なら、9975円でも十分元が取れるかもしれない。
翌朝の出発が4:00なので朝食は弁当にしてもらっていた。夕食時にすでに弁当を受け取る。紙に包まれビニール袋に入っているので中は見えない(みようと思えばもちろん見えるけど)。
細かいことだが、部屋に戻ってザックを詰め直したときに、何気にこの弁当を突っ込んで置いたのが、寝床に入ってから気になって仕方がなかった。
ザックを立てて置いていたので、必然的に弁当も縦になっている。中の汁分が漏れてやしないかと気になったが、静まり返った真っ暗な寝床で、がさごそ動かしようもない。
「早朝出発する方は、寝る前に必ずザックの準備を終わらせて置いてください。起きてから準備をされると眠っている方の迷惑になりますから」
と食事のあとで注意があった。
弁当のことは、またあとで書こうと思う。
大陽館にて。七合目からの眺め。
夕食後、まだ明るさが残っていた。
風呂に入れるわけでもなく、部屋と言っても寝るだけの2段ベッドしかない。中は小暗く、おそらくは深夜に出発する予定の人たちがすでに寝入ってもいる。何一つやることはない。
外に出てテーブルに座って下界を眺める。雲海の中にいくつか見える山や街の名前を教えてもらいながら、しばし景色を楽しんだ。
月も見えた(右上の白い点)。
18:00頃には切り上げて寝床にもぐりこんだ。
大陽館にて。部屋と寝床。
夕食後の注意がもうひとつあった。
「今夜はだいぶ冷え込みそうなので、シュラフだけでなく布団もかけて眠るように意識してください」
我々の「部屋」は二段ベッド--といっても独立した部屋があり、本当にベッドがあるわけではなく一枚の棚を等間隔に柱が隔てているだけで板壁さえない--の上段。幅1mほどのスペースがわれわれ二人分の寝床となる。シュラフが3つ並んでいる。枕はない。梯子を上り下りする。
「布団」がどこにあるのかわからなくて聞きに行ったが、それはつまり、敷布団と思っていたものが、何層にも布団が重ねられた掛け・敷き兼用となっていて、寒い時には上の何枚かをめくってもぐりこむという仕組みなのだった。なるほど。
不潔とは思わなかったが、なんとなく湿気を帯びている感じがするのはやむをえまい。
大陽館にて。眠れない夜
ヘッドランプが必要かと思っていたが、必要最低限の灯りもあった。
明日のことを考えて、なんとか寝ようと努力したが、どうしても寝付けない。すぐ横のKさんは静かに寝息を立てている。さすがだと思った。1人どこかで大きないびきをかいている男がいたが、それほど気にならなかった。念のため用意した耳栓も不要だった。
とにかく、やることがなく、本も読めず、音楽も聴けず、話もできない--寝るしかない。その環境が息苦しくて、「まるでクラシックのコンサート会場みたいだな」と思う。
クラシックの演奏会のほうが、それでもまだ小声で話などはできる。そんなに息をつめて演奏に集中しているのは日本くらいなのだから、ここ、富士山の山小屋には外国人は泊まれないに違いない、などと余計な心配までしたくなった。
20:00頃、どうしても我慢できなくなって、外へ出た。山小屋の若いスタッフ数人が、ボリュームを抑えてミスチルの曲をバック流しながらおゃべりに興じていた。
表にはだれもいなかった。一人坐って、月を見上げた。きれいな月が南の空に浮かんでいた。しばらく眺めていた。さすがに肌寒いが、気分は良かった。
明日は4時前にはここを出て、山頂へ向かう途中でご来光を眺める。山小屋の北側から、暗闇の中この登山道を登ることになるのだった。
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