食べ物の「賞味期限」については、今では常識のようになっていますが、これを絶対的なものととらえる傾向があり、ちょっとでも期限が過ぎると捨ててしまうということもあるようです。ある知人の女性は友達から中国茶をもらいましたが、先月期限が過ぎていると言ってみな捨ててしまったと言っていました。いき過ぎだと思いますが、売る方にとっては神経質にならざるを得ないようで、近所のスーパーでは期限が近くなると値引きします。私がよく行く輸入食品を扱う店では、私が好きなフランスやイタリアのナチュラルチーズは期限を過ぎると半額にします、ナチュラルチーズは少々高いものですから半額になるとありがたいし、買えばどうせすぐに食べてしまうので歓迎しています。その他の食品も買って日にちがたった物は、色を見たり、においを嗅いだり、少しかじってみて、何でもなかったら食べますが、これまで中ったことはありません。
もう10年も前のことですが、近くのデパートで出店していたある中華料理の惣菜店が、賞味期限が切れているのに売ったというので問題になりました。私は見ていませんが、女性の社長がテレビ取材を受けた時に、なぜそういうことをしたのかと問われて、「だって美味しかったのですもの」と答えたようです。この店は神戸の商社が経営し、かなり手広く各地のデパートなどに店舗を出していたようですが、全て出店を取り消されましたし、社長の発言はひどく叩かれました。販売されたのは「ベトナム風蒸し春巻き」などでしたが、社長の指示で賞味期限を最大5か月オーバーした冷凍春巻きを調理して、販売していたようです。このことは当時大きく報じられて問題になりましたが、神戸市保健所は食品衛生法に基づく立ち入り調査で、売られた商品については事実を確認し、「好ましくない」として文書による指導を実施しています。
しかしこの社長を弁護するつもりはありませんが、賞味期限については「美味しかった」は一理はあります。「賞味期限」、別名「品質保持期限」は、加工品や冷凍品について「正しく保存していればおいしく食べられます」という目安の時間です。これはメーカーが独自の判断で決めているもので、実際に品質に問題が出る時間の半分以下にしておくのが普通だそうです。品質に問題がなければ、期限切れでも販売することに法的な規制はありません。問題になった冷凍食品の食品としての劣化期間は正確にはどれくらいのものかわかりませんが、普通の感覚では5カ月も過ぎると品質が劣化しているのではないかと疑われるでしょう。
賞味期限は消費期限とよく混同されますが、賞味期限とは、「劣化が比較的遅い食料品を包装状態のまま所定の環境に置いた状態で、製造者が安全性や味・風味等の全ての品質が維持されると保証する期限を示す日時」とされ、「製造日を含めておおむね5日以内に急速な品質の低下が認められる食料品については『消費期限』で表現される」となっています。2008年の農林水産省と厚生労働省の新聞広告でも、おおよそ次のように解説されています。
「賞味期限とは 『美味しく食べられる期限』です。開封していない状態で、表示されている保存方法に従って保存したときに、美味しく食べられる期限を示しています。賞味期限内に美味しく食べましょう。ただし、期限が過ぎても食べられなくなるとは限りません。”美味しく食べられる期限”を示します。賞味期限を表示した食品は傷みにくいので、期限を過ぎても、すぐに捨てる必要はありません。」
こういうことですから、あまり神経質になって、期限が過ぎると即廃棄というのはもったいないことです。しかし、どっと買い込んで冷蔵庫や冷凍庫に入れ、長い間放置すると当然劣化します。これは私もよくやっていたので、もったいないことをしたと反省しています。