函館市国際水産都市・海洋総合研究センターを会場とした、退職組織の講演・研修会に参加してきた。演題は「もし日本海がなかったら…スルメイカは?」。
会場となった函館市濃国際産都市・海洋総合研究センターとスルメイカの写真
講師は、国内のイカ研究の第一人者 函館頭足類科学研究所所長・北海道大学名誉教授 桜井泰憲氏。
講演の趣旨は、最近激減したスルメイカを中心とした、最近の獲れる魚種の変化とその原因が主な内容であった。
まずは、「イカの種類やイカの生態(泳ぎ方・空を飛ぶ・捕食行動・墨を出す・体色変化など)」について説明があった。
その中で、興味深かったのは、イカは漁火となる集魚灯に集まると思われているが、実は光は嫌いだけれど関心がある習性を利用しているとのこと。昼は海底の薄暗い所にいて、夜は海面近くに上がってくる。そこに集魚灯を照らさせると、眩しいのでそれを避けようとして陰になる舟底に集まるのだそうだ。そこに針を垂らすから釣れる・・・ということらしい。
スルメイカの寿命は1年で、日本海がその産卵と回遊場所なので、日本海の環境が大きく影響するらしい。
次に、スルメイカを中心とする獲れる魚種変化についての状況の説明があった。
特に2010年以降、その変化が大きくなっているとのこと。スルメイカは2016年~2017年激減、サケ激減(やや回復)、サンマ激減(やや回復)、ホッケ大不漁(やや回復)、小型マグロ大量入網、ブリの北上と漁獲増、二シン増加などなど・・・。
その原因は、地球規模の温暖化ではある。ただし、偏西風の蛇行によって、局所的な異常寒冷・高温化の影響が大きい。今冬季の日本周辺は異常寒冷、しかし、春以降は高温化が進行中。特にスルメイカは、冬季の異常寒冷の影響が大きいとのこと。
最後に、スルメイカの産卵の生態・行動の研究から、スルメイカがいなくなった原因についての説明があった。
冬の季節風が強く海面気温が低いと、水温躍層が深くなって、一部の卵塊は海底まで沈み壊れてしまうことが分かった。2015以降同じことが起きているのではないかとのこと。
また、産卵場は1年を通して季節的に移動する。2016年~2018年の産卵場の広がりは開腹していない。特に今年1月の産卵場の縮小が顕著で、冬生まれ群の復活にはもう少し時間がかかるとのこと。
さらに、スルメイカの成長に適する水温範囲は12℃~15℃。成熟が進行する水温範囲15℃~18℃、採卵適水温は19℃~23℃、生存に不適な水温は12℃以下23℃以上である。
なお、生け簀イカより活〆したイカの方が10時間後は活きが良いことが分かっている。今後は、魚介類の高鮮度・高付加価値化(地産地食の薦め)の研究も進めていく必要があるとのこと。
昭和30年(イカ刺しをどんぶりで食べたころ)の函館市入舟漁港付近の「イカブスマ」の光景
○施設見学
入居型の貸研究施設として、学術試験研究機関や民間企業が入居できる研究室を備えている。隣接する岸壁には調査研究船が直接接岸でき、また、函館港外から直接採取した海水を水槽実験に使用することができるなど、水産・海洋分野の研究開発や、産学官連携の拠点としてご活用されている。さらに、来館者が自由に見学できる大型の実験水槽や、函館港が一望できる展望ロビー、海水を使用できる実習室、学会開催を想定した会議室なども備え、まさに、函館国際水産・海洋都市構想のシンボルとしての役割を担っている。
展示ホール
海洋総合研究センターに入っている研究機関と関連企業。
それぞれ連携することの利点があり、成果が上がっている。
大型実験水槽・・・今はカメラを付けた亀の生態を実験しているが、9/7からスルメイカの群れが入る。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます