蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

パリわずらい 江戸わずらい

2024年11月17日 | 本の感想
パリわずらい 江戸わずらい(浅田次郎 集英社文庫)

浅田さんの作品で初めて読んだのはエッセイシリーズの「勇気凛々ルリの色」。主に作家になるまでとなりかけのあたりの経験を綴ったものなのだけど、これが滅多やたらに面白かった。その後、「蒼穹の昴」を読んで、エッセイとはかけ離れた真面目さ?とスケールに圧倒されて、本当に同一人物が書いたのか?と疑ってしまった。
その後も小説はたいてのものは読んで、どれも面白かったのだけど、なぜかエッセイは読むことがなかった。

本作は、航空会社の雑誌(機内誌?)に長期連載されているもの。なので、押しも押される大作家になって編集者同伴のアゴアシ付海外旅行談などばかりなのでは?人気が出た作家のエッセイの陥りがちなパターンなのでは?いやあ、あけすけな失敗談が面白かったんだけどな。。。などと思って手が出ていなかったが、図書館で見かけて読んでみた。

たしかに大名旅行の話もあるんだけど、「勇気凛々・・」ばりの自虐?ネタも豊富で、電車の中で読みながら思わず笑ってしまえるような面白さは健在だった。
面白すぎて「これは実話ではないのでは?」と思える物も多いのだが、小説家のエッセイなので「いやたまに創作も交えています」というのも趣きだと思える。

代々?いいかげんに決めてきた浅田家の家紋の話「家紋のゆくえ」

著者自らがそうだという金縛りに関する経験を綴った「カナシバリ同好会」

三連単で大穴をあけたはずが・・・という「貴族的ふるまい」(これはあまりに内容がベタなのでかえって実話かも)

変わった形の郷土自慢「続・消えた2千円札」

最も爆笑したのは最後の「真冬の帰り道」。→はしごを外された友人が「裏切られたカエサルのような表情」をしていた、という表現はお見事。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 夜明けのすべて(小説) | トップ | なずな »

コメントを投稿

本の感想」カテゴリの最新記事