ゆく河の流れは絶えずして

2008年04月23日 | お客さん宅で

                          (Kさん宅の、清らかな川水)

夏の海水浴シーズンを終えた、浜辺の寂しさに似て、冬のスキー場の今は、つい先日まで若者で賑わっていた事もあり、宴の後のようなとても寂しい風情が漂っています。
Kさん宅へエアコンの点検に伺いました。
お年寄り夫婦で切り盛りしていたスキー民宿も、ご主人が冬のシーズンに入ったとたん入院する羽目となり休業、いまだにおばあさん一人、何かと大変です。
車を止めた横の川には、雪融けの澄んだ水がどうどうと流れています。

『ゆく河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。よどみに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたる例(ためし)なし。世の中にある人と住かと、またかくのごとし。』

約800年前、鴨長明が晩年に小さな庵で書き記した、「方丈記」の冒頭です。
人生の無常、世の遷り変る無常観を著した随筆の傑作です。
雪が融け小川となり、山を下り大河を満たし、海に注ぐも、流れる水は、二度と戻らないことを見て、
「常に同じものはこの世には無い」という、仏教用語の「無常」を書き示したものです。
一人暮らしのおばあさん、二人がより添って暮らす老夫婦、お客様の中にとても多くいらっしゃいます。
清らかな川の流れを見ながら、ふっと「方丈記」の一節を思い浮かべてしまいました。