ブクログより
訳者のあとがきによると、この本は1941年に発表されている、著者はパリで生まれるが、シャモニーに魅せられ移住して山々を歩くうち、有名なガイドに見込まれ自らも高山ガイドとなった。
第二次世界大戦ではナチスにつかまるも脱獄して、探検家として各地を旅する。
同時にフランス山岳ガイド組合の会長も務めた、とあります。
「結ばれたロープは」休戦協定でアルジェリア通信の記者をしていたころ、新聞に連載されたものをまとめたもので、雪と氷の物語は、海と砂漠のアルジェで執筆された、と。
若いころに親しんだ山々がどんな時代でも著者の心のよりどころであったということなのでしょう。
その頃の、ガイド仲間との山行での出来事、ガイドとしての仕事中のエピソード、悲惨な山での事故、そういったエピソードの数々が物語の中に織り込まれ、実在する人たちも名前を変え登場して、そうして生まれたのがこの話です。
書かれてずいぶんの年月が経っていますが、古いということは全く感じられません。
山はもちろん昔から変わりませんし、目の前の山に登りたい、という人々の熱望もいつの時代でも同じだからでしょう。
時折当時の写真が参考に掲載されているのを見て、その服装などで、あぁこの時代の話だったんだな、と再認識するくらい違和感はないです。
元ガイドをしていた著者ですから、その臨場感や細やかな描写は、素晴らしいものです。
雷がだんだん自分たちのほうに近づいてくる気配を感じながら、この岩壁から、一刻も早く少しでも下に降りようとする(こんな時でもお客を優先で)焦る気持ち、自分もその場にいるようで、手に汗握ります。
遭難により生まれたトラウマはやはり山でしか克服できないと、若いガイドが立ち直り、またガイドの登録をするというところで話は結ばれます。
この小説がまた新たに今年刊行された意味が分かる気がします。
結ばれたロープ / ロジェ・フリゾン=ロッシュ
干し柿日和