
ブクログより
帯を見ただけで重い・・・
内容が想像ついて読むのをためらう。
でも、桐野さんだから。
神奈川県近郊で、母親と父親の違う弟と一緒に、母親の付き合っている男の部屋で暮らす小学生の優真。
男からは疎まれ、母親も男の機嫌を取り男のいいなり、わずかな食料を置いては留守にして、しばらく帰ってこない。
空腹に耐えかねた兄弟は近くのコンビニで、廃棄の食料を分けてもらって凌いだりしていたが、その縁で優真は、コンビニのオーナー目加田に世話になり、児童養護施設に入所して、後には目加田夫婦に引き取られる。
そういう善意の目加田夫婦は、障害を持った娘を亡くしたばかりで、気持ちにも生活も余裕があるわけではない。
ともかく、優真が今まで生まれてから経験したことのなかった、普通の家庭、普通の生活を手に入れることができ、読んでいる方もほっとしたのもつかの間、学校に通い始めてもいつの間にか優真の過去、出自はどこからともなくみんなに周知されることとなり、疎外感、孤独感を抱え、うまく社会に馴染めないことで、目加田夫婦ともうまくいかず、そのはけ口はやがてゆがんだ感情を生みだしていく。
という何とも切ない救いようのない、希望のかけらも見いだせないまま話は終わる。
こんな終わり方で読者はどうしろというの?
結局いろいろな問題を起こしたけれど優真は悪くない。
育った環境、強いてはそれを取り巻く社会の是非。
大きな問題を提起された、ということなのだろうか。
桐野夏生 / 砂に埋もれる犬