できることを、できる人が、できるかたちで

京都精華大学教員・住友剛のブログ。
関西圏中心に、教育や子ども・若者に関する情報発信を主に行います。

大阪市の小学校長から松井市長への「提言」に関して(その2) 先週(5月23日)時点でわかった経過に即して考える

2021-05-30 14:39:09 | 受験・学校

今度は「その2」です。かなりの長文になりますが、先週日曜日(5月23日)時点までにわかった事実経過に即して、大阪市の小学校長から松井市長への「提言」に関する動きについてのコメントをしておきます。

なお、以下に書く内容のうち、事実経過の部分は、次のブログの内容を参考にしています。

「大阪で、いま起こっていること/事実経過のまとめ」
http://www.labornetjp.org/news/2021/1621915486160staff01
(2021年5月21日付け)

また、ここで私が星印をつけてコメントしている内容は、上記の「事実経過のまとめ」のもとになった部分に対して、フェイスブック上で5月23日時点でコメントをした内容を手直しして掲載しています。したがって、その後わかってきたことは、まだ反映されていません。その前提で読んでいただければ幸いです。

また、下記の文中の黒字部分が、上記ブログの文章。星印をつけ、色を変えている部分(紫色)が、私のコメントです。

〈1発端〉
 ことの発端は、4月19日記者会見で松井市長が、何の権限もないにもかかわらず“緊急事態宣言が発令された場合、大阪市立の小学校と中学校を原則オンライン授業に切り替える”意向を示したことです。マスコミは一斉に報じ、学校現場は不安に陥りました。

https://youtu.be/KQ9BfK51dqk

※ 大阪市立小中学校、宣言発令なら原則オンライン授業に(日経)

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF1944K0Z10C21A4000000/

★この段階で、なぜマスコミは市教委(教育長・教育委員の合議体及び事務局の双方)に「裏づけ」を取らず、一斉に報道したのか? もしもここで最初にマスコミが「裏づけ」をとって、「市教委としてはなんの連絡もない」という話を確認できていれば、松井市長の「暴走」ということが明らかになったかと思います。したがって、マスコミは松井市長の動きを「追認・加担」したのではありませんか。マスコミの責任が問われます。もしこの時、マスコミが松井市長のいうことをすぐに報道するのではなく、「もうちょっと慎重に市教委などに裏とってから、発言の問題点を含めて情報を流しておこう」と最初から動いていれば、もっと状況は違った展開になったでしょう。

〈2大阪市教委の奇妙な方針〉
 4月22日大阪市教育委員会が小中学校に通知した方針は何とも奇妙なものでした。“小学校は、2限目までオンラインやプリントで自宅学習を行い、登校後4限目のみ教室での「指導」、給食を食べたあと帰宅させる。中学校は、午前中は自宅でオンラインやプリント学習、登校して給食を食べたあと、教室での「指導」を行う”というものでした。大阪府内の他の小中学校は、“通常通り授業を行う”ことが通知されるなか、大阪市の小中学校だけが「通常授業」ができないことになったわけです。
★この件が事実としたら、市教委事務局はなぜ松井市長の暴走に対して「まだ総合教育会議を開いて正式な市長からの要請も出てないのだから、そこまで動きを待とう」と言えなかったのか。なぜここで市教委事務局の「忖度」が働いて、マスコミ報道された松井市長の動きを「後追い」するかのような方向性で学校現場に方針を出す形で動いてしまったのか。その「検証」が必要です。

〈3現場は大混乱〉
 4月25日緊急事態宣言が発出され、翌26日から、この奇妙な方針を実行することが求められた大阪市の小中学校では大混乱が起こります。
 一部ですが生の声を紹介します。中学生からは、「緊急事態やのに給食を食べる意味がわからん。不正会食?じゃないのか」「去年の分散登校でいいんじゃないのか」。保護者からは、「オンラインも、通信テストして以来全く進んでいません」「保護者、子どもでさえも中途半端な事してるなーってわかってるのに上の人達は何故それがわからない?って疑問です。しかも大阪市だけこのスタイル…この大阪スタイル、ほかの自治体から馬鹿にされてる事気付いてないの?って言ってほしいです」「小学4年生男子の保護者です。オンラインテストではログインすら出来ていない子がたくさんいたように思います。すぐにログイン出来た子は持て余し、ログイン出来ない子は苦戦してるのか諦めモードなのか…とても授業が成り立つには程遠い感じでした」。
 そして教員からは、「3時間目から登校して給食を食べて5時間目までの3時間授業です。国語や算数などの授業をしていても時数計算は全て特別活動の時数で計算せよと、わけのわからん指示が教育委員会から出されました」「うちで(タブレットが)配布されたのは今年の4月で、子どもたちは、ほとんど触れることなく、緊急事態宣言に入りました。低学年の子どもは、IDとパスワードの入力だけで、たくさんの時間がかかり、操作どころではありませんでした」「teamsの接続テスト、ネット環境がない生徒への対応、予備の接続テストなどに追われ、教育に充てる時間がない。学校がお客様サポートセンターのようになり、明らかに教員の業務の枠を越えている。もちろん、去年から準備はしていたが、それでもこの状況」。
 つまり、大阪市の小中学校ではハード面でもソフト面でも「オンライン授業」の基盤は整っていないにもかかわらず、その実施が求められたわけです。小中学校の中には、子どもの現状や保護者の希望から、子どもの登校を朝から受け入れるところも出てきました。

※ブログ「子どもを追いつめるな!市民の会」
緊急事態宣言下の大阪市の学校は?!
http://no-testhyouka.cocolog-nifty.com/blog/2021/05/post-b6f01b.html

★この1年ちょっとの間に、松井市長と大阪市教委は、もしも本気でオンライン授業を全面的に大阪市内の小中学校に実施するなら、それが可能になるための条件整備を「すべての子どもと家庭」を対象にやるべきでした。それは、国連子どもの権利委員会の「新型コロナ感染症に関する声明」(2020年4月)の趣旨に沿う取組みです。それができていない以上、学校現場で混乱が生じるのは「当たり前」のこと。とすれば、やはり松井市長と大阪市教委は「教育の条件整備、特にオンライン授業実施に関する条件整備を怠ってきた」「子どもの権利保障の観点から言えば、市長と市教委には、オンライン授業実施に関する条件整備をこの1年ちょっとの間にきっちりやるべきだった」という話になります。

〈4教育委員会会議で出た驚くべき内容〉
 5月11日開催の大阪市教育委員会では、事務局の報告に約40分の質疑応答が行われました。委員から、“4月中教育委員会議が開かれなかったため、大阪市の方針(オンライン授業や給食)をテレビニュースで初めて知った”という事実にも驚きました。また、ここで文科省の見解では、“オンライン授業”は、授業時数としてはカウントできないこともわかりました。

※2021.5.11大阪市教育委員会会議動画 https://youtu.be/_wb0vFaDvog

★いったい大阪市の教育長及び教育委員の合議体は、今年4月から5月11日までのあいだ、いったい何をしていたのでしょうか? 市長の「暴走」した要請をテレビニュースで初めて知ったとして、その時点で教育長及び教育委員が全員臨時に集まって、対応を協議することもできたはず。また、そこで「正式に総合教育会議を開いて、市長としてあらためて要請を」と記者発表するなどの対応もできたはずです。あるいは、市教委事務局からも、そういう「意見具申」を、教育長及び教育委員に対してできたのではありませんか? 「市教委(合議体部分と事務局の双方)は、ただ市長の意向を<後追いして尻拭いする>だけの機関ですか? ただ市長の意向を学校現場に伝えるだけのメッセンジャーですか?」と、この際、言っておきます。

〈5知らなかった松井市長〉
 5月13日松井市長は記者からの質問に“なんのためにオンライン授業をしてきたか、授業時数としてカウントされないのはおかしい。今日にでも萩生田文科相に電話する”と回答しましたが、文科省が、現時点で教員の立ち会いのないオンライン授業を「授業」として認めるとは思えません。このニュースに学校現場はますます疲弊していきます。
※2021.5.13松井市長記者会見書き起こし
https://news.yahoo.co.jp/articles/4b0b028129672b2b33305ca560d7e4f112de94b4?page=3
※同上文字起こし
https://news.yahoo.co.jp/articles/f411d4dbd5a840c9a3005437e022582c8aed9bf9?page=2

★要するに上記の経過からすると、4月の時点で、これが「授業時数にカウントされないことすら知らない」のに、松井市長は「オンライン授業をやれ」と要請したということになりますね。「だから首長主導の教育改革って危ない! 首長が教育の細かいことわからずに、好き勝手な提案して暴走する恐れが高いからだ」と、この場で言っておきます。でも、松井市長の要請を「既定方針」であるかのように「裏づけ」を取らず報道したマスコミと、市長「要請」を「忖度」した方針をおろしてしまった市教委のあり方も、この経過のなかでは併せて問われます。

〈6現職校長の提言〉
 その最中に大阪市立木川南小学校久保敬校長が松井市長に「提言」を出したことがわかりました。私が知ったのは5月17日でしたが、正直感動しました。大阪の学校現場で長年携わってこられた方ならではの視点からやむに止まれず書かれたことが伝わってきました。翌18日には共同通信がこのニュースを取り上げ、ヤフーニュースでも掲載され多くの人が知ることになりました。

※2021.5.18yahooニュース

https://news.yahoo.co.jp/articles/0a02728a512af57721ab28ab434595528a82e515

★久保校長が「提言」というかたちで、きわめて穏やかに、この間の松井市長や大阪市教委の対応に対して意見を述べているのは、とても「まっとうな行為」です。また、久保校長が「提言」を出す前から、今回の緊急事態宣言が出たあと、一部の教育ジャーナリスト(下記参照)などが大阪市の学校の混乱ぶりを伝えていました。なので、久保校長が伝えていることは、すでにある程度「公に知られている事実」も混じっていることです。

※前屋毅「そもそも実施は無理だった大阪市のオンライン授業、学校現場は大混乱」

https://news.yahoo.co.jp/byline/maeyatsuyoshi/20210514-00237736/ (2021年5月14日)

〈7弾圧のはじまり〉
 すると、何が起こったか?!5月19日大阪市教育委員会は久保校長を呼び出し事情聴取を行いました。それがわかったのは、5月20日大阪市会教育こども委員会で、大阪維新の会杉村幸太郎委員がこの件について質問したことによります。事務局は、事実関係の調査中であると断りながらも、大阪市職員基本条例4条、地方公務員法33条を持ち出し、一般論として懲戒処分の可能性もあると示唆しました。
※ブロググループZAZA
現職校長から大阪市長への提言ー大阪市会教育こども委員会における質疑応答

★そもそも、松井市長のオンライン授業実施に対する要請内容自体に問題があるとともに、たとえば「総合教育会議の開催」等の首長としての手続き面でも怪しい点があります。また、そういう問題含みの学校現場への要請を「追認」するかのように動いた市教委事務局や、5月になるまで会議を開かずなにもしてこなかった教育長及び教育委員の「不作為」も、責任を問われてしかるべきです。そう考えると、本来、学校現場の混乱を引き起こしたことを「陳謝」すべきなのは、松井市長です。また、市教委の教育長、教育委員や、市長の「暴走」を忖度したような指示を学校現場におろした市教委幹部級職員もまた、「陳謝」すべきです。その上で、もしも大阪市の市会議員が「追及」すべき問題があるとしたら、久保校長への処分ではなく、これまでの松井市長の一連の市教委に対する「要請」のあり方と、そういう松井市長の動きを「追認」するばかりの「合議体」部分の教育委員会(教育長・教育委員)のあり方です。そう考えれば、久保校長の「処分」を市議会で言う維新の議員の対応は、「市議としてやることが見当違い、一から考えなおすべし。たとえ自分の出身会派から出た市長でも、ダメなものはダメというしかない」と思います。

〈8弾圧は許さないーー支援の声広がる〉
 久保校長に「処分」?!ーー絶対に許せないという声が次第に広がり大きくなっていきました。また、久保校長とともに人権教育を担われてきた方からは、携帯ショートメールによる「提言」賛同署名も始まっていました。

★ネット署名自体は大事な取組みなので、続けてください。その上で大事なことは、身近なところに居る人にクチコミでいいので、「これは松井市長や維新の教育施策が間違っているのだ」ということを伝えてください。ネット経由だけでは、情報が伝わらない方が多々いますので。あと、できれば、たとえば署名活動のように「首長や市教委がまちがっている」と直接物申す市民の活動を拡げてください。

〈9松井市長の反論〉
 5月20日記者会見で、松井市長は自らの教育観を述べ、久保校長については「社会人として外に出たことがあるのか」「ルールに従えないなら、組織を出るべきだと思う」と批判しました。
※2021.5.20 松井一郎大阪市長 囲み会見
https://youtu.be/aNa2EN7osnU
※上記より抜粋(23秒)
https://twitter.com/senseiwakame/status/1395990755957633026?s=21

★先ほども述べたとおり、「オンライン授業が授業時数にカウントされるかどうか」も市教委に確認しないまま、先走った要請をマスコミで流す松井市長の動き方こそが問題でしょう。また、そういうことも市教委に確認しないまま要請を出す首長に、教育行政への介入権限を持たせていることも問題です。併せて、久保校長に「組織を出ろ」と言う前に、「市長もまずは臨時の総合教育会議の開催を要請して、その場でオンライン授業を要請すべきだったのでは? また、そのための条件整備のために臨時予算を組むなどすべきだったのでは?」と、松井市長には言っておきます。もうひとつついでに、「では市長は、学校で20年、30年と子どもと向き合って仕事をしてこられたのですか? そういう学校を支える教育行政の実務を、市教委で20年、30年とやってこられたのですか?」と、こちらからも逆に質問しておきます。

〈10朝日新聞、大きく報道〉
 5月21日朝日新聞朝刊は、この件を大きく取り上げました。また「提言」全文も掲載しました。全国から久保校長の提言に賛同し、支援の声が集まっています。
※ 「学校は混乱極めた」 現職校長、実名で大阪市長を批判
https://news.yahoo.co.jp/articles/fb11429d3463b5af3cf97ca88ae613e16f775b4ffbclid=IwAR1RyyjQMsFAuqB6VwfT1C8YAKQuVdbx17VLA41hu29CVu5_nEGr7bjKq7s
※ 大阪市立木川南小学校・久保校長の「提言」全文
https://digital.asahi.com/articles/ASP5N6KWMP5NPTIL00R.html?fbclid=IwAR2gor1f3QWHkbX4rfsREQCwEI6iYMXLJTVlsqS_4P929KzYEOuy3BDR1IM

★朝日新聞が大きく取り上げ、全国から支援の声が寄せられている点は大事です。もっと大きく「大阪の首長はおかしい」「維新の教育施策はまちがっている」ということが広く知れ渡ってほしいです。そのためには、久保校長と松井市長の主張の「両論併記」的記述ではなく、私がいま、星印をつけながらコメントしているようなことを、マスコミがはっきりと言えなければいけないでしょう。その点では、まだ朝日新聞のこの書き手では「ものたりない」というところでしょうか。

〈11萩生田文部科学大臣も発言〉
ついには、萩生田文科相も、21日の閣議後会見で、この件について聞かれ、「(校長から)不具合があったという報告であれば、耳を傾けて改善したらどうか」と市側に促すことになりました。
※ 文科相が大阪市側に「耳を傾けて」校長らの『学校現場は混乱を極めた』提言に対し
https://www.mbs.jp/news/kansainews/20210521/GE00038405.shtml

★ここでつい文科大臣がこのような発言をすると、何かいいことやっているように誤解してしまうのですが…。本来、この件では文科省(大臣及びそのもとにいる官僚層)も責任の一端を負うべきです。というのも、2012~13年ごろに大津中2いじめ自殺事件や、大阪市の桜宮高校事件などに「便乗」するかのように、「首長主導の教育改革」ができるように、たとえば「総合教育会議」設置とか、首長が任命する「新・教育長」を教育委員会の責任者とするような諸改革をしてきたのが、時の文科省であり、政権与党です。また、そのような「首長主導の教育改革」路線の導入は、当時の橋下大阪市政の教育改革をアシストするようなもの。その結果が、今の大阪市教委(合議体部分も、事務局も)の市長への「忖度」体質をつくりだしてしまったのではありませんか。だから、文科省や文科大臣には、ご自身たちがこの数年やってきた「首長主導の教育改革」路線自体を、「教育に見識のない首長が<暴走>する場合がでてきた場合どうするのか?」を考えなかったという点を含めて、あらためて反省・総括していただきたいと思います。
 なお、この点は文科省をやめて以後、今頃になってからくり返し「ええことをいう」前川元文部科学事務次官に対しても、「あなたが高級官僚として在職した時代の施策の問題点を反省し、それを指摘する作業をぜひ、お願いしたい」と言いたいです。今回も松井市長に対する苦言をマスコミで前川氏は言っていますが、「首長主導の教育改革」路線を導入した当時、前川氏は文科省の官房長や初等中等教育局長、そして事務次官を歴任した人ですからね。

〈12賛同・支援の声大きく広がる〉
 そして、大阪では、久保校長の「提言」に賛同し、大阪市立中学校校長が自らのフェイスブック(公開設定)で、賛同者の声を松井市長に届けると呼びかけておられます。すでにTwitterにおいて「#木川南小学校校長を支持します」は6万件を超えています。
★もっともっと、幅広い市民層から、松井市長に対する疑義等を出していただければと思います。同時に、松井市長が何か言ったときに「それ、おかしい」と言えない教育長・教育委員ら大阪市教委の合議体部分、市教委事務局の幹部級職員に対しても、あわせて疑義を示していただければ幸いです。さらに維新の大阪市議団に対しても、「久保校長の処分をちらつかせるような質問をするのは、許さない」という意見を表明して、そちらもけん制していく必要があると思います。

〈13「提言」に応えるために〉
 今回の件は、オンライン授業の強制をきっかけとして起こったことですが、提言をお読みいただければおわかりいただけると思いますが、現在の大阪の公教育が果たして子どもの学びを保障し、未来につながるものであるのか、という現場からのまさに私たちへの「提言」であると考えます。この問題は今後も続きますが、今、私たちがしなければならないことは、久保校長を「弾圧」から守り「処分」をさせないことだと思います。そして、大阪の子にとってどのような公教育が必要なのか、私もこの提言を真摯に受け止め考えていきたいと思います。

★この問題は今、大阪市の小学校長が市長に投げかけた「提言」をめぐって起きていますが…。本質的には「首長主導の教育改革」を是認する2010年代の教育改革動向の問題でもあります。また、「首長主導の教育改革」を可能にする教育行政のシステムを、一定の法令上の歯止めをかけつつも、文科省(国)は是認しています。だから、日本各地どこの自治体でも、「首長が積極的に提案し、教委にやらせた改革が根本的に的外れだったり、かえって学校現場を混乱させることについて、どのような想定がなされているのか?」という問題として考える必要があります。いま、大阪市で起きているこの問題は、理論上は大阪市だけでなく、他の自治体(都道府県・政令市及びそれ以外の市区町村)においても「起こりうる」問題でもあります。そのつもりで、他の自治体に暮らすみなさんも、「わが街はどうなんだ?」とぜひ、考えていただければと思います。

<追記> なお、先ほども書きましたが、この内容は5月23日(先週日曜日)時点でわかったことを前提にして、なおかつ、他の方がまとめられた事実経過にコメントするかたちで書いたものです。また、すでにほぼ同趣旨のものをフェイスブックに書いていて、それを修正しながら今回、文章をまとめ直しました。

ただその後の1週間で、たとえば「大阪市総合教育会議」の去年9月の議論や、学校の新型コロナ対応に関するオンライン学習以外の対策等について、私なりに調べてわかってきたこともあります。そういったことを今後、同じタイトルの記事の「その3」「その4」などのかたちで、次々に出していく予定です。そのこともここでお断りしておきます。

 


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大阪市の小学校長から松井市長への「提言」に関して(その1) そもそも大阪市教育行政基本条例に立ち返って検証を

2021-05-30 13:50:16 | 受験・学校

先日から話題になっている久保校長の松井市長への「提言」に関する朝日新聞の次の記事を、あらためて先ほど読み直しました。すると、ある一文にひっかかりました。まだだれも他の研究者たちもひっかかってないようなので、指摘しておきます。

「学校は混乱極めた」 現職校長、実名で大阪市長を批判
https://digital.asahi.com/articles/ASP5N6HGBP5NPTIL00F.html
(2021年5月20日付け朝日新聞デジタル記事、ネット会員限定記事)

この朝日新聞の記事のなかに、次の一文があります。

「自身が大阪府知事だった時代に府教育基本条例を成立させ、教委でなく首長が教育目標を決められる形を作ったことも説明した。」

いま、松井さんは大阪市長であって、府知事ではありません。
政令市としての大阪市の教育行政は、基本的には府の教育行政から別建てのはずです。別自治体の大阪府の条例など「関係ない」としかいいようがないです。
松井市長はどうもまだ気分は「大阪府知事」のようで、「大阪市長」ではない感じですね。
そこからして、何か勘違いしていますね、松井市長。

また、「大阪市教育行政基本条例」第4条では、次のように定められています。
この条例上、市長が勝手に教育振興基本計画を決められるのではなくて、「市教委との協議」「市議会(市会の議決)」が必要です。また、「学識経験者の意見聴取」「市民の意見の反映のための措置」も必要です。
こういう条文、松井市長は読んだのかしら? 公用車でのスパ通いで忙しくされていても、月に数日しか市役所に出勤できないほど多忙であっても、このくらいは読めるでしょう。

※なお、予想される市長や市教委側の反論として、「総合教育会議で(自分たち好みの学識経験者である)特別顧問の意見と、市教委の意見(市長の気に入るような提案をするような話)を聴いた」「(あんまり誰にも気づかれないうちに)パブリックコメントを求めて市民の意見を聴いた(その上で、都合のいい意見だけ振興計画に反映させた)」「市議会(市会)の意見も聴いている(市長支持の維新が多数派ですけど)」があると思います。この点は別途、検証します

(教育振興基本計画の策定手続)
第4条 市長は、教育委員会と協議して、教育振興基本計画の案を作成するものとする。
2 教育振興基本計画は、市会の議決を経て定めなければならない。
3 市長は、第1項の規定による協議が調わなかったときは、教育委員会の意見を付して教育振興基本計画の案を市会に提出しなければならない。
4 教育振興基本計画には、次に掲げる事項を定めるものとする。
(1) 本市における教育の振興のための基本的な目標及び施策の大綱
(2) 前号に掲げるもののほか、本市における教育の振興のための施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項
5 市長及び教育委員会は、教育振興基本計画の案を作成するに当たっては、その基本的な事項についてあらかじめ学識経験を有する者の意見を聴くとともに、市民の意見を反映するための適切な措置を講ずるものとする。
6 市長は、第2項の議決があったときは、遅滞なく、教育振興基本計画を公表しなければならない。
7 前各項(第4項を除く。)の規定は、教育振興基本計画を変更する場合について準用する。

さらにこの「大阪市教育行政基本条例」第5条では、次のように定められています。
たとえば「オンライン学習」実施にあたって、市民に向けてどのような説明をしたのか。また、その施策がどのような意味で「子どもの最善の利益」に合致すると考えていたのか。その市教委及び市長は、自分たちの責任が問われますね。
それこそ、一度でも緊急事態宣言発出時の「オンライン学習」導入にあたって、市長や市教委は住民向けの説明とかしたのかしら? あと、まだ調べていないのですが、その緊急事態宣言発出時の「オンライン学習実施」は、いまの大阪市の教育振興基本計画に出ていることなのかしら? 「大阪市教育行政基本条例」を読むと、なぞは深まるばかりです。

(開かれた教育行政)
第5条 本市は、市民に対し、本市における教育の振興のための施策について説明する責任を果たし、保護者及び地域住民その他の関係者(以下「保護者等」という。)との連携及び協力を図り、並びに子ども及び保護者の判断及び選択を支援する等により、教育の振興に資するため、子どもの最善の利益に反しない限りにおいて、本市における教育の状況に関する情報を積極的に提供するものとする。
2 本市は、子どもの最善の利益を実現するために、市民の意向を的確に把握し、教育行政に適切に反映させるよう努めなければならない。

あわせて、先ほどの「大阪市教育行政基本条例第5条第2項」を読む限り、「子どもの最善の利益」実現のために、市長や市教委は常に子どもも含めた「市民の意向」を的確に把握し、教育行政に反映させなければなりません。
たとえば「教育振興基本計画」つくるときに、大阪市では子どもを含めた「市民の意向」の把握、それをどこまで今までやってきたのか? それこそ「オンライン学習」を緊急事態宣言発出時に実施するという方針を決める際、そういう手続き踏んだのかしら? この条例の一文がある限り、市長や市教委のあり方が問われます。
また、この一文が大阪市教育行政基本条例あるかぎり、常に大阪市の教育振興基本計画を含め、大阪市教委や市長の実施する教育施策は本当に「子どもの最善の利益」実現に即したものなのかが問われます。

これにくわえて、このたびの新型コロナ禍における各国政府の対応に関して去年4月、「国連・子どもの権利委員会:新型コロナ感染症(COVID-19)に関する声明」がでています。
その「声明」のなかには、次のような内容が含まれています。

・今回のパンデミックが子どもの権利に及ぼす健康面、社会面、情緒面、経済面およびレクリエーション面の影響を考慮すること。
・子どもたちが休息、余暇、レクリエーションおよび文化的・芸術的活動に対する権利を享受できるようにするための、オルタナティブかつ創造的な解決策を模索すること。
・オンライン学習が、すでに存在する不平等を悪化させ、または生徒・教員間の相互交流に置き換わることがないようにすること。
・今回のパンデミックに関する意思決定プロセスにおいて子どもたちの意見が聴かれかつ考慮される機会を提供すること。

このたびの緊急事態宣言下での市長「要請」による「オンライン学習」実施や、それで授業時数が足りなくなって急遽「50時間やれ」という指示を市教委が出すことが、はたしてこの上記の国連子どもの権利委員会の声明や「子どもの最善の利益」に即して適切なのかどうか。「大阪市教育行政基本条例」第4条の趣旨に則って、あらためて市議会は検証すべきだと思います。

と同時に、そういう問題提起だと久保校長の「提言」を受け止めた場合、責任を問われるべきは本来、松井市長と市教委上層部、さらには総合教育会議に関わってオンライン学習導入を提案した特別顧問らの側であって、久保校長ではありません。

したがって、維新の市議で久保校長の「処分」の件を大阪市会の方でちらつかせた人がいますが、その人の見識も疑われてしかるべきです。そもそもその市議も、「大阪市教育行政基本条例を読んだことがあるのか? 自分の都合のいいところしか読んでないのではないか?」と、私などは見識を疑います。

<追記>この件は今後も先ほどの「検証」等の作業が進み次第、折にふれてブログやフェイスブック等で情報発信を行います。


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今日(5月30日)のプリキュアの話です。

2021-05-30 11:07:12 | プリキュア話

気付けばもう1週間たって、今日は5月30日、日曜日。またまた朝からプリキュアと仮面ライダー見てました。今日は他のこともブログで後ほど書きたいので、先に今朝のプリキュアの話を書いておきます。

そうそう。例年よりも半月以上も早く「梅雨入り」しましたね。昨日あたりからは早くも「中休み」状態で、お天気はけっこういい感じですけど・・・。おまけに4月末に出た「緊急事態宣言」も、6月20日頃まであらためて「延長」だとか。また後日ブログで書きますけど・・・。「対面授業」には対面の、「ネット利用での遠隔授業」には遠隔の、それぞれ独特の疲れ方・弱点と面白さ・良さがありますね。

さて、今朝のプリキュアですが、思いっきり目線を主な視聴者層である「幼児」の世界に、放送内容を下げてきた感じでした。というのも、今回の話は、プリキュアたちの通う中学校の「トロピカる部」が、顧問の先生のすすめで「一日保育士体験」をするため近所の保育園に行き、幼い子どもたちと遊ぶというもの。学校外だから人魚のローラも参加できるということで、ローラも保育園で子どもたちとかかわってました。こういうところは、「いま、いちばんやりたいと思ったこと(=トロピカること)をやる部活」としての「トロピカる部」という設定がうまく活かされているなあって思います。要するに部員たち=プリキュアたちがやりたいと思うことは、部活として「なんでもあり」なんですよね。

ただ実際に保育園に行きますと、4人のプリキュアとローラ、それぞれのキャラクターの特徴が子どもとのかかわりにでてきますね。まなつ(キュアサマー)は、かけっこで保育園児と正々堂々と勝負して、自分が勝って大喜びしてしまうし、大きな泥だんごを作って喜ぶし…。サンゴ(キュアコーラル)は、一方でゆっくりと園児に負けるような速度で走ってみたり、あるいは、園児にコスメの使い方を教えたり…。他方で、本が大好きなみのり(キュアパパイア)は絵本の読み聞かせにチャレンジするけど、表現力に難ありで「もっとおもしろく読んで!」と園児に指摘される…。あるいは、アスカ(キュアフラミンゴ)は「今まで兄貴たちと遊んでいたから…」といって、おままごとでの赤ちゃん役とか、着せ替え人形遊びなど、園児の女の子たちとの関わりに戸惑う。まあ、そんな感じです。ちなみに妖精のくるるんは、「しゃべるアザラシのぬいぐるみ」というかたちで、保育園になじんでました。

その一方で、ローラは園児たちの女の子を集めて「お姫さまごっこ」をしています(=というか、自分が将来人魚の世界の女王さまになるから、そのレッスンをしている感じですけど)。その「お姫さまごっこ」の最中に、ローラは部屋の片隅で昆虫の本を読んでいるワタルくんを見付けます。サンゴがワタルくんに「あそぼう」と声をかけると、「ぼくは昆虫学者になりたい。鬼ごっことかより虫が好き」と言います。そんなワタルくんの様子を見て、「今から将来のことを考えるなんて、私みたい」とローラは思い、ワタルくんに接近します。

そんなワタルくんはローラに「アゲハチョウのさなぎ、見る?」と声をかけます。ローラはいっしょに園庭の片隅にある葉っぱで、アゲハチョウのさなぎを見ます。「このさなぎのなかで、チョウになるんだ」というワタルくんの説明を聴いて、ローラは「おもしろいわね」と言います。そのローラとワタルくんの様子を、遠くから見ている女の子・ルリちゃんがいます。そのルリちゃんの様子に、サンゴは気づき声をかけると、どうやらルリちゃんも昆虫が好きなようです。

そんなかたちでプリキュアたちの保育士体験がすすんでいるところに、エルダがゼンゼンヤラネーダを連れて攻撃をしかけてきます。ゼンゼンヤラネーダの攻撃から園児たちを逃がして、さっそくプリキュアは変身、巨大積み木からできたゼンゼンヤラネーダとたたかいはじめます。ですが、何度攻撃してバラバラにしても、そのパーツをつなぎあわせて、かたちをかえて復活してくるので(=積み木だから)、プリキュアたちは苦戦します。

一方、ローラは園庭の水道の裏に隠れているルリちゃんとワタルを見付けます。どうやらふたりは、園庭の葉っぱにあるチョウのさなぎを守りたいようです。また、ふたりでいる間に、ワタルくんはルリちゃんに自分の描いた虫の絵を見せて、お互いに昆虫が好きだということに気付きます。そんなふたりを、ローラが守ろうとします。ローラは「プリキュアは絶対に負けない。必ず助けてくれる」と言って、ローラ・ワタル・ルリの3人でプリキュアに声援を送ります。その声援に勇気をもらったプリキュアたちは、「ここで負けていられない」と思い、「みんなで連携して、積み木が再び積みあがらないくらいのスピードで連続攻撃をかける」というキュアサマーのアイデアで、なんとかゼンゼンヤラネーダをバラバラにしてしまいます。その上で、4人の合体技・ミックストロピカルを出して、ゼンゼンヤラネーダを退治。エルダを追い帰します。

ラストの場面で、保育士体験を終えて帰るプリキュア4人とローラに、保育士さんが「また来てくださいね」と声をかけます。ローラはワタルくんとルリちゃんに、「プリキュアのことはないしょだよ」と伝えます。ワタルくんは「ひとりもいいけど、友達もいいね」と、ルリちゃんのことを意識して、ローラに伝えます。そしてその帰り道、サンゴはローラに「いい保育士さんになれそうね」と伝えます。ちなみに「まなつは保育士体験というより、園児体験」で、みのりは「もっと読み聞かせの練習しなくちゃ…」と思ったようですが。あと、来週の予告編では、ローラとみのりの心が入れ替わる話になるようですね。

まあ、こんな感じで、思いっきり今日のプリキュアは目線を下げて、主たる視聴者層である幼児の世界に降りてきた・・・って感じです。でも、それでも「中学生たちの保育士体験」「トロピカる部」という設定があるので、別段違和感がありません。そこが上手に設定をつくっているところだなあって思いました。

ということで、今日のプリキュアの話はここで終わります。このあと、ちょっと休憩をはさんで、他の大事なことを今日からブログで続けて何度か(時々休む日もはさみながら)書いていこうと思います。

 


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