去年(2008年)12月に内閣府が出した新しい「青少年育成施策大綱」には、次のような文章がある。日本政府レベルでの青少年施策の「重点課題」として、「困難を抱える青少年」への支援があることを、あらためて強調しておきたい。
③ 困難を抱える青少年の成長を支援するための取組
青少年が様々な困難や不利な状況に直面したり、又はそのおそれがある場合、その個々の困難等の態様に応じ、関係機関が連携し、問題発生の未然防止、早期発見・早期対応及び困難克服までの切れ目ない支援を、青少年本人のみならずその家族に対しても総合的に行う。
また、新しい「青少年育成施策大綱」では、次のような文章で、「青少年教育施設等活動の場の整備」の推進が求められていることも、あらためて強調しておきたい。
③ 豊かな体験・交流のための取組
(体験・交流活動等の場づくり)
青少年が、自然体験や集団宿泊体験等の体験活動を行える青少年教育施設等活動の場の整備を推進するとともに、青少年教育施設と地方公共団体、学校、青少年団体等地域の関係機関の連携により、地域の教育力を向上させる取組を推進する。
また、自然との触れ合い、スポーツ・レクリエーション活動等を行える都市公園の整備や総合型地域スポーツクラブの育成を通じて、総合的なスポーツ活動の機会を充実するとともに、住民のニーズ等に応じた質の高い指導者の養成・確保を促す。
自然公園、河川や海岸などの水辺空間、森林を、環境学習・自然体験等の体験活動の場として利用できるよう保全・整備するとともに、地域ぐるみの活動を推進する。
さらに、具体的に「困難を抱える青少年」への支援の取り組みとして、次のような文章も「青少年育成施策大綱」に盛り込まれている。
(不登校対策)
不登校等への対応の推進を図るため、未然防止、早期発見・早期対応につながる効果的な取組や関係機関等と連携した取組を促進する。
不登校の児童生徒への学校内外における相談体制の整備を進めるなど、不登校の子ども等の教育機会について支援を図る。
また、不登校、ひきこもり、ニートなど自立に支援を要する青少年の社会性等をはぐくむため、自然体験、生活体験、社会体験等の体験活動に継続的に取り組む機会を提供する。
あるいは、小学生期の子どもたちへの取り組みとして、「青少年育成施策大綱」には次のような文章も出てくる。
ⅳ 社会的自立につながる活動機会の保障
(集団遊びの機会の確保)
放課後児童クラブ、児童館、都市公園等の設置を推進し、集団遊びの場を確保するとともに、放課後子ども教室等を通じて、地域住民の参画を得て、学習活動やスポーツ・文化芸術活動、レクリエーション等の機会を提供する取組を推進する。
(地域等での多様な活動)
子どもの心と体の健全な発展を促すため、青少年教育施設や学校、地域の青少年団体、NPO等の様々な場における、環境学習・自然体験、集団宿泊体験、奉仕体験、スポーツ活動、芸術・伝統文化体験、といった様々な体験活動や、異世代間・地域間交流等の多様な活動の機会の提供について推進する。
こういった日本政府レベルでの青少年施策の動向から考えると、どう考えても、その運営形態や維持の方法、事業の内容などには多様な意見があるとしても、児童館・青少年会館・青少年センター・野外活動センターなど、「地域社会における青少年育成の拠点になるべき公共施設」が必要不可欠だという点は、日本政府としても認めているということになる。少なくとも、私はこの「青少年育成施策大綱」からは、そのような理解を得た。
特に、子どもたちの体験活動(自然体験、社会体験、生活体験等)を充実させるような取り組みや、スポーツ・文化活動への参加、世代間交流や地域間交流の可能な施設を中心に、そこが拠点となって、障がいのある子どもや、不登校・ひきこもり経験のある子ども、ニートの状態にある若者等、何らかの「困難を抱える青少年」への支援を実施していく。その方向性が、日本政府レベルでの青少年施策からははっきりと伺えるのである。
このブログを継続してみてくださっている方にとってはあらためていうまでもないことであるが、今まで大阪市内でこのような地域社会における青少年育成の拠点機能を担ってきたのが、2007年3月末で条例廃止を迎えた旧青少年会館である。また、大阪府下の青少年会館・青少年センターや児童館、大阪市内の旧トモノス・児童館などでも、こうした機能は担われてきた。そして、野外活動センター等の青少年の体験学習施設についても、大阪市・大阪府及び府下各自治体が整備し、長年、活用してきた。
ところが、こうした青少年育成の拠点たる公共施設が、地方自治体レベルの財政逼迫の状況下で、利用率の問題や補助金の削減等を理由に、今や、どんどん廃止・統廃合を余儀なくされている。これでは、日本政府レベルでの青少年施策の方向性が大筋ではまだ評価できるものであっても、地方自治体レベルでその方向性に逆行することばかりが行われるようになっていく。
このままでは、「青少年育成施策大綱」は「絵に描いた餅」のような状態になっていくのではないだろうか。また、日本政府が本気でこの「青少年育成施策大綱」にある取り組みを実施しようと思うのであれば、地方自治体に対して、積極的に財政支援を行うべきではないのだろうか。特に、「財源がないから」「補助金がつかないから」という理由だけで、青少年育成の拠点整備から手を引きたがっている地方自治体にたいして、日本政府として本腰を入れて青少年施策をやろうとする気があるなら、財政面からのてこ入れも必要ではないだろうか。
ところで、大阪府の補助事業としての「地域青少年社会教育総合事業」が、今すすめられている橋下知事の行財政改革の下でなくなることによって、今後、府下の各地方自治体で、社会教育・生涯学習分野での青少年施設の統廃合が行われる危険性が高まってきた。まだ詳しい情報が入っていないのでなんともいえない面があるのだが、茨木市あたりでは、すでに市内の4つの青少年センターのうち3つを廃止する方針を行政当局が示している、という。これがどこまで確かなのか、本当に実施されるのかどうかはわからないが、この間の情勢を見ていると「十分、ありうる」と思われる。
しかし、今まで述べてきたことからもわかるように、日本政府レベルでの青少年施策の方向性からすると、今こそ大阪市内や大阪府下で児童館・青少年会館・青少年センター等で取り組まれてきたことに注目し、各地方自治体はその機能の充実等に取り組むべきなのである。
そのことから考えると、やはり、日本政府が本気で「青少年育成施策大綱」の中身の実現に向けて努力するというのなら、地方自治体に対する財政面からのてこ入れ等、さまざまな働きかけをするべきではなかろうか。2兆円の定額給付金で国民ひとりひとりにお金をばら撒くよりも、よっぽど、こうした青少年育成の拠点施設の整備等に国や地方自治体の財源をつぎ込むほうがマシだと思うのは、私だけだろうか。
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