すでに報道されているとおり、昨日の大阪市長・大阪府知事のダブル選挙は、橋下陣営というか、大阪維新の会サイドの勝利におわりました。
今後は、このブログで前から批判してきた「教育基本条例案」の成立に向けて、大阪府議会での動きが活発になるでしょう。また、いったん否決された大阪市議会でも、なんらかの手直しをして、再び「教育基本条例案」の提出、再審議入りがあるかもしれません。
ほんとうに大事なのは、ここからです。選挙で当選した新市長・新知事が、いったい何をしてくるのかをよく見て、徹底的に「だめなものはだめ」と批判していく姿勢が大事です。
そのときに、今後、大阪のマスメディア、特にテレビが流す情報をうのみにしてはいけません。先週の月曜日、堤未果さんの講演(岩波新書の『ルポ貧困大国アメリカ』などの著者)を聴きに行ったとき、アメリカ社会で教育や福祉、医療などに「市場化」が取り入れられたときのやり方だいって、 彼女はこんなことを語っていました。
1.敵をつくる。2.ワンフレーズをばらまく。3.内容をぼかす。4.議論させない。5.マスコミは一部しか伝えない。
いかがですか? 今回のダブル選挙でも、見事にこんな感じで、テレビを中心とする大阪のマスメディアの動きは、きわめて橋下陣営有利に情報を流していた感じがしませんか?
だとすれば、テレビなどのマスメディアから流れる情報はいったん、疑ってかかるくらいでちょうどいい、ということになるわけですよね。ついでにいうと、このような話は、すでに何人もの「識者」の方が指摘されていますし、また、大阪市の青少年会館条例廃止以来の数々の大阪をとりまく政治的な動きを見ていれば、こういう事態が起こりそうなことは、かなり予想できたのではないのか、とも思います。なにしろ、あのときに大阪市政改革のブレーンだった方が、いまや「大阪維新の会」の顧問になっているわけですから。過去からの連続性において今の事態をちゃんととらえていれば、おのずから、今後を予想できることもあるはずです。
したがって今後は、「物事を過去との連続性の上において、きちんととらえることのできる人」や、「マスメディアから流れる情報をうのみにせず、本や雑誌など別のところから流れる情報も見たうえで、きちんとした検証・批判のできる子ども・若者の育成」こそが、このような社会の流れに歯止めをかける大きな取り組みになるのではないか、と思います。
そして、そのとりくみこそ、これからの大阪の人権教育や子どもの人権に関する運動が引き受けていくべき、大きな課題なのではないでしょうか。本気で今の状況を転換したければ、まずは足元から見つめなおさなければいけません。私たちのこうした課題への取り組みの弱さが、やはり、今の事態を招いたところもあるのではないでしょうか。
ただそれでも、あれだけマスメディアが橋下陣営有利になるような報道を続けていながらも、おおよその数ですが、市長選挙では平松氏に52万票(橋下氏75万票)、府知事選挙では倉田氏に120万票、梅田氏に37万票(松井氏に200万票)入っているわけです。
大阪市の人々、大阪府の人々は、けっして、マスメディアの流す「劇場型選挙」情報に踊らされるだけの人々ばかりではありません。
むしろ、あれだけマスメディアが橋下陣営や大阪維新の会に有利な情報の流し方をしていながらも、これだけの票が反対側の陣営に集まったということ、そのことの重みを考える必要があります。
やっぱり、政治家が選挙にあたってマスメディアをつかっていくら情報を自陣営有利に流しても、その街に暮らす住民の側にきちんとした問題意識があれば、「ごまかされないぞ」という層は一定、でてくるということです。
そういうマスメディアを使って政治家の言うことに簡単に「ごまかされないぞ」という住民を育てることこそ、本来、人権教育として取り組むべきこと、子どもの人権に関する運動が取り組むべきことではないでしょうか。ここをこれから、徹底的に地道に取り組む。そういうことを私はやっていきたいと思います。少なくとも、自分ところの団体だけ「いい活動を」、自分ところの学校だけ「いい実践」をというような動きだけでは、もうダメなんだと思います。
最後にひとつ、今朝の毎日新聞のネット配信記事から。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20111128-00000010-mai-pol (<大阪ダブル選>圧勝の維新 2段構えで「国政に足かける」、毎日新聞2011年11月28日ネット配信記事)
この記事のなかに、民主党の大阪府連幹部の話として、次の言葉が出てきます。色を変えて紹介します。
「大阪で国会議員は維新と手を握らんと選挙を戦えんようになった。民自公3党内で維新との連携を目指す動きが強まるだろう。こうした動きが全国的に広まれば既成政党の枠組みは崩れ、政界再編につながりかねない」
民主党府連幹部はため息をついた。民主、自民両党の府連は市長選で平松邦夫氏(63)、知事選で倉田薫氏(63)を支援したが、両党国会議員の動きは鈍かった。自らの選挙への影響を懸念した国会議員が慎重姿勢に転じたためで、近畿圏の自民党議員からは早くも「都構想に賛成。大阪だけでなく『関西都』まで広げればいい」との声が出始めている。
こういう政治家たちに、みんな嫌気がさしているんではないですかね? 自分たちにほんとうに「この日本社会、この大阪を、こんな感じで変えたい!」という「目指すべきもの」があるのなら、少なくとも、こんな動き方はできないし、「ため息」ついているばかりではありません。それこそ、こんな動き方は、今回の選挙で平松氏や梅田氏、倉田氏に投票した人々に対して、大変失礼なことだと思います。いい加減、目を覚ましてほしいです。