http://mainichi.jp/kansai/news/20100218ddf041010007000c.html
(毎日新聞のネット配信記事・2010年2月18日付け、「大阪市:生活保護費急増、一因に市外転入者 支給適正化、就労支援16億円計上」から)
今日はこの記事の内容から。とはいえ、全体的な論調というよりも、ただ一点、この記事の中にある次の文章のところへの疑問というか、「取り組みの方向性がちがうのではないか?」という違和感からのコメントです。
(以下、青字部分は新聞記事からの引用)
「貧困の世代間連鎖を断ち切る」との目的で、モデル地区に指定した受給世帯の中・高校生を対象に、進学指導や生活全般のアドバイスをする社会福祉士の配置も始める。
「あの~、それって本来、社会福祉士の仕事ではなくて、中学校や高校の生徒指導や進路指導の担当教員の仕事ではないのでしょうか?」とか、「こういった仕事こそ、かつて、青少年会館に配置されていた社会教育主事や指導員のみなさんが担ってきたのではないのでしょうか?」というのが、私の率直な疑問であり、この施策に対する違和感です。
それこそ、「こういうことに取り組むのだったら、今こそ青館を復活させて、地区だけでなく、中学校区くらいを単位に、貧困世帯の多い大阪市内の各地区すべてに建設してみたらどうか?」とか、「そこには、社会福祉畑から出向した職員と、社会教育や青少年育成に長けた職員、さらには学校教育や保育から出向した職員とが常駐して、子育て支援や児童福祉、教育などが一体となった子ども家庭支援活動を展開したらどうなのか?」とか、そんなことも思ってしまいますね。
たしかに、『子どもの貧困白書』(明石書店、2009年)や岩川直樹・伊田広行編『貧困と学力』(明石書店、2007年)には、東京都江戸川区で福祉事務所勤務の生活保護担当のケースワーカーが中学3年生を対象に行った学習会の事例が出てきます。
また、生活保護世帯などの子どもの支援には、社会福祉・社会保障と教育との連携が必要であることは、私自身もこれまで主張してきたことであり、そのこと自体についての異論はまったくありません。
しかし、だからといって、こういった生活保護世帯などの子どもに見られる教育・学習や文化活動面での諸課題への対応まで、すべて社会福祉士が担うとか、福祉事務所勤務のケースワーカーが担うとなると、また話がちがいます。「子どもの学力形成や進路形成への支援に取り組む前に、もっとほかに、社会福祉士が担うべき仕事があるだろう」と思うのです。
さらに、「貧困の世代間連鎖を断ち切る」ということを真剣に考えるのであれば、子どもが中学校・高校卒業後に進学機会を得ることだけでなく、「就労」にまで視野に入れた取り組みが必要になります。その「就労」の部分での支援については、本人の努力だけでなく、雇用先の側が積極的にこうした生活保護世帯の子どもを受け入れ、支えていこうとする努力が必要とされるはずです。
また、「進学」ということについても、たんに受験「学力」の形成や、それに向けての学習習慣の形成面での支援だけでは不十分でしょう。それこそ、大学等への進学時の学費の問題、在学中の生活保障面での問題にまで目を向けないといけないはずです。そういった個人の教育費や生活費の負担軽減策が政策的に準備され、さまざまなオプションが整っていないと、いくら社会福祉士が投入されても、その人も、本人や家族に「がんばれ」というしか手がないのではないかと思います。
やはり、本気で「貧困の世代間連鎖を断ち切る」ということをいうのであれば、抜本的に教育・福祉連携のあり方(さらには就労や社会保障まで視野に入れた連携のあり方)を見直し、自治体レベルでの子どもや若者の生活支援に関する行政システムの整備をしなければいけないのではないでしょうか。
いまこそ、そういう議論を大阪市あたりから巻き起こしていくチャンスだと思うのですが・・・・。少なくとも、今起きている現象への対応をとりつつも、将来的には「こんな制度的な保障がないといけない」ということを国にも、市民社会にも言い続けていく。そんなスタンスが大阪市の行政には必要な気がするのですが。
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