1950~60年代、異人種間の結婚が違法とされていたアメリカ・ヴァージニア州で、愛と自由をかけて戦ったラビング夫妻を描いたヒューマンドラマ、「ラビング 愛という名前のふたり」(Loving)を見ました。ジョエル・エドガートン&ルース・ネッガ主演。コリン・ファースが製作に参加しています。
1958年、レンガ職人のリチャード(ジョエル・エドガートン)は、恋人のミルドレッド(ルース・ネッガ)から妊娠を告げられ、結婚を申し込みます。当時、ヴァージニアを含むアメリカの一部の州では異人種間の結婚が認められなかったため、リチャードとミルドレッドはワシントンD.C.まで出向き、晴れて夫婦となりました。
誇らしげに結婚証明書を壁に掲げ、故郷での幸せな新婚生活がはじまったのもつかの間、何者かに通報され、ある夜 保安官たちが自宅のドアを押し破り、2人は逮捕されてしまいます。そして離婚するか、あるいは少なくともどちらかが州を出るか、究極の選択を迫られるのでした。
離れて暮らすなどありえない2人は、しかたなくD.C.の黒人街に引っ越しますが、親兄弟と離れ、人の多い都会でのびのび子育てできないことにミルドレッドは疑問を覚えます。時は公民権運動のただ中。テレビで”ワシントン大行進”を見ていたミルドレッドは、友人の助言で、ロバート・ケネディ司法長官に手紙を書くことを決意します。
かつて住んでいたヴァージニアが舞台とあって楽しみにしていた作品ですが、いろいろな思いが去来して、何度も涙ぐんでしまいました。無骨で男くさいイメージのエドガートンが、こんなにも愛情深く一途な夫を演じることへの驚き。そしてあの時代に肌の色の違いを気にせずに愛し合ったラビング夫妻は、真に自由な心の持ち主なのだと心打たれました。
国の法律を変えたのが、こんなにも慎ましやかな一組の夫婦であったことに驚きますが、彼らは正義を振りかざしたわけでも、社会を変えたい野望があったわけでもありません。ただ、好きな場所でいっしょに暮らしたいというささやかな、でもあたりまえの願いを訴えただけ。しかしそれが、アメリカの歴史を塗り替えることとなったのです。
ケネディ司法長官が一市民からの手紙に目を留め、すぐにACLU(アメリカ自由人権協会)が弁護士を派遣してきたというのもすばらしい。弁護士2人は、異人種間の結婚を認めないこと、居住地を制限することは、重大な人権侵害であり、憲法違反にあたるとしてヴァージニア州を訴え、ついに1967年、最高裁でみごと勝利を収めたのでした。
今も人種差別や偏見など、さまざまな問題を抱えるアメリカですが、こういう作品を見ると、トライ&エラーはあっても、人々の良心がこの国を支え、歴史を作ってきたのだという誇りが伝わってきて、大きな希望を与えられるとともにちょっぴりうらやましくなります。
すてきな2人にすっかり魅了されましたが、本名がラビング(Loving)というのもすごい。最高裁の判決の出た6月12日は、”Loving Day”という記念日になっているそうです。