最近読んだ本から、簡単に感想を残しておきます。
マッケンジー・ファンク
地球を「売り物」にする人たち 異常気象がもたらす不都合な「現実」
アメリカのジャーナリストが24か国訪れて書き上げたルポルタージュ。センセーショナルなタイトルですが、原題はWindfallで”棚ぼた”という意味です。地球規模の問題として認識されている気象変動ですが、それをビジネスチャンスと捉えている人たちがいるという現実に衝撃を受けました。
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例えば、北極圏の氷の下には豊富な地下資源が眠っていると考えられ、周辺諸国はひそかに期待を寄せています。やがて資源大国となるグリーンランドでは、デンマークからの独立が議論されています。また、北極圏の氷が解けると、太平洋・大西洋間が北極圏を通って行き来できるようになり、新たな航路としてカナダとアメリカが注目しています。
このほか、古代より干ばつに悩まされてきたイスラエルによる淡水化ビジネスや降雪ビジネス、山火事に悩まされているカルフォルニアの保険会社による顧客向け民間消防サービス、海抜0mのオランダがノウハウをもつ防波壁ビジネス、将来を見据えて高緯度の農地を買いあさっているウォール街のファンドなど。
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ピンチをチャンスに変える人間のたくましさに圧倒されますが、こうした恩恵にあずかれるのは、温暖化を引き起こした張本人である先進国で、温暖化に関与したわけではない、いわば被害者ともいえる途上国は、なすすべもなく、ますます厳しい状況に追いやられていくという現実に胸を衝かれます。
日本は先進国として温暖化ガスを排出している”加害者”の側ではありますが、一方で毎年のように、大雨、洪水、大雪...とさまざまな異常気象の被害も受けています。自国の環境・エネルギー問題を解決することが、ひいてはビジネスチャンスにつながり、他国への支援にも貢献できる。そんなウィンウィンなシナリオが描けたら理想的ですが...。