丸の内の三菱一号館美術館で開催中の「オルセーのナビ派展:美の預言者たち―ささやきとざわめき」(~5月21日まで)を見に行きました。
こちらの美術館では毎月第2水曜日の17時以降、女性は1000円で入場できます。開館時間も20時までとなっていて、女性にかぎらず男性の姿もありました。夜の美術館はほのかにライトアップされ、いつもとひと味違うしっとりとした雰囲気でした。
ナビ派は19世紀末のパリで、ゴーギャンから影響を受けて結成された前衛的な芸術家集団です。ナビとはヘブライ語で預言者という意味。彼らは自らを”美の預言者”と称しました。代表的な作家は、ボナール、ヴュイヤール、ドニ、セリュジェ、ヴァロットンなど。本展は、オルセー美術館のナビ派コレクションから約80点を紹介する、国内初の展覧会です。
ポール・セリュジエ「タリスマン(護符)、愛の森を流れるアヴェン川」 1888年
ナビ派結成のきっかけとなった作品。ブルターニュを訪れたセリュジエが、ゴーギャンに教わって描いた風景画は、単純化した形、大胆な色彩とまるで抽象絵画のようでした。パリにもどったセリュジエがアカデミーの仲間たちにこの教えを伝え、共鳴した画家たちによってナビ派が結成されました。
ピエール・ボナール「庭の女性たち」(左から)白い水玉模様の服を着た女性、
猫と座る女性、ショルダー・ケープを着た女性、格子柄の服を着た女性 1890-91年
ナビ派は日本文化の影響も多大に受けています。この作品は掛け軸のように細長いキャンパスを使い、春・夏・秋・冬を表した連作となっています。構図や女性たちのポーズ、植物のあしらいに、浮世絵の影響が見て取れます。私事ですが、私もボナールのTable Set in a Gardenという絵が好きで、家に飾っているんですよ。
アリスティード・マイヨール「女性の横顔」 1896年
これもすてきな作品。柔らかい色彩が好みです。どことなく(昔流行った)カシニョールの絵を思い出しました。彫刻家として知られるマイヨールですが、もとは画家として活動していたそうです。
フェリックス・ヴァロットン「ボール」
赤いボールを追いかけている少女をとらえた作品。背後に広がる影、遠く離れたところにいる母親たち。少女が駆けだしていった先は、見知らぬ世界とつながっていて...ジブリのようなストーリーがふと浮かびました。
エデュアール・ヴュイヤール「ベッドにて」 1891年
これも心惹かれる作品。抑えた色調とデザイン性に魅せられますが、十字架の一部や白いベッドリネンなど、信仰上のメッセージも感じ取れます。
モーリス・ドニ「ミューズたち」 1893年
9人のミューズたちに加え、中央奥にうっすらともうひとりのミューズが見えます。
装飾画として人気を博したというナビ派の作品は、個人の邸宅を思わせるクラシックな美術館のギャラリーに、まるであつらえたようにマッチしてすてきでした。贅沢で心豊かなひと時でした。