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否定と肯定

2017年12月14日 | 映画

レイチェル・ワイズ主演、ホロコーストの存在をめぐって2000年にイギリスで争われた裁判を描いた法廷劇です。「ボディガード」のミック・ジャクソンが監督を務めています。

否定と肯定 (Denial)

ホロコースト研究家でアメリカの大学で教鞭をとるデボラ(レイチェル・ワイズ)は、自著の中でホロコースト否定論者であるイギリス人歴史学者アーヴィング(ティモシー・スポール)を批判したとして、アーヴィングから名誉棄損で訴えられます。

アーヴィングが訴えを起こしたイギリスの司法制度では、訴えられた側に立証責任があり、すなわちデボラたちが”ホロコースト否定論”を崩さなければなりません。デボラのために、ランプトン(トム・ウィルキンソン)を中心に大弁護団が組まれ、アウシュヴィッツへの現地調査やアーヴィングの20年分の日記の精査など、入念な準備が進められます...。

”ナイロビの蜂”以来のレイチェル・ワイズによる久しぶりの社会派作品を楽しみにしていました。ナイロビ~と同じく、ヒロインのまっすぐな正義感が伝わってくる作品。イギリスの司法制度の特殊性もはじめて知りましたし、勝つためのアプローチの仕方も興味深かった。裁判官や弁護士の時代がかった衣装など、裁判風景も新鮮でした。

それにしても21世紀の今もなお、ホロコーストを否定する学者がいることに驚きます。アーヴィングの物言いを見ているだけで不快で吐き気がしてきました。”その刺青でいくら稼いだんだ”発言には、あまりの情けなさ、愚かしさ、悔しさに涙がこみ上げました。この最低に嫌らしい悪役をみごとに演じたティモシー・スポールの勇気を讃えます。

デボラたちにとっては”ないことはない”ことを証明する難しい裁判であり、アーヴィングはそれを見越してイギリスで訴えたのでした。ランプトンが立てた戦略は、陪審員をつけずに裁判官に審議してもらうこと、そしてホロコースト生存者やデボラに証言の機会を与えないこと。

デボラとしては不本意ですが、ランプトンは、感情に訴えて証言することはアーヴィングに付け入る隙を与えてしまうとし、事実を積み重ねることによって論理的にアーヴィングの主張の虚偽を証明するという方法をとるのです。また過去の日記からアーヴィングが差別主義者であることも明らかになるのでした。

結果は予測できたものの、ぎりぎりまで予断を許さない展開にはらはらしました。そして改めて、裁判というのは民主主義国家の根幹をなす神聖な場所だとも思いました。アーヴィングは人として最低ですが、それでも証拠書類としてプライベートな日記を隠さず提出するフェアな精神をもっていたことに救いを覚えました。

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