どうしても欲しい本があって、それを買うつもりで書店に入りました。ところがレジに持っていったのは、全く想像だにしなかったこの本。
まあ、この帯、卑怯っちゃ卑怯。
いやいや、まんまとノせられちゃったよ。だって帯がなければ
こんな感じ….
恐るべし、帯。
内容は私みたいな度素人でも、ホントによくわかる。3人の解説者が一章ずつ担当。最終章が座談会という構成。
声高に叫んでいるわけではありませんが、一環しているのは『原発事故は人災である』というスタンス。実際に目でみて、耳できいて、心に感じたことを、更に頭で整理をして淡々と語っています。文章が機をてらっていないので、何を伝えたいのかよくわかります。何より説得力があります。
これから自分がどう考え、何を選んでいくか考えるための足がかりになる良書だと思います。
で、いってきました。
青山一丁目の
NHKカルチャーへ。
いやもう、満員御礼。時間帯のせいもあるようですが、女性比率格段に多し。男性は年配の方が奥様と、という感じでちらほら。気のせいか、カルチャースタッフの女性もこの会場の広さにしては若干多め?
講演は1時間半たっぷり。原発事故の概要から。あとからわかったこと、わかることが沢山あることにビックリ。シュミレーションという言葉が何度も出ました。開発はするが、実用に至らない残念な技術のことや、先の国会に提出された東電の黒塗り報告書のことなど。
さて、先の本の中で水野さんは、日本の原発に対する姿勢を解説しています。
エネルギーの平和利用が目的なのだから、原子力発電の技術だけを輸入して開発すれば良いという日本。かたや、原子力の開発に一から取り組み、歴史的には批判されるような失敗をくりかえしながら、原子力エネルギーの怖さも充分知り尽くそうとしているアメリカ。この両者の違いがもっとも顕著に現れているのが、原子力発電所の安全対策。
その一つに有事を想定した防災訓練があります。
その代表的なものは避難訓練。日本ではその行程を一覧にして参加者に『公開』します。
何月何日にどういう事故であるかという設定で避難訓練が始まります。シナリオがあって、何時何分に揺れ。5分後に揺れがおさまったので避難開始、点呼。そのつどアナウンスが入り、ゾロゾロと移動。停電、復旧、どこそこ発火、数分後無事に鎮火、再三アナウンスがあり、またゾロゾロ。最後は、『みなさんご協力ありがとうございました。』で無事終了。
アメリカでは.訓練の参加者には『非公開』。訓練の日にちは事前に知らされていますが、開始時間も内容は全く知らされません。現場はその時の事故内容によって対応を考えなくてはならず、訓練とわかっていても緊張の連続です。つまり常に抜き打ち。そしてその対応はそのつどチェックされて、何がまずかったか後日徹底的にディスカッションされるそうです。
この話がものすごく印象に残っていたのですが、この日の話の流れで質問タイムに質問できませんでした。
そこで思いきって帰り際に、直接声をかけさせていただきました。ええぃ!ダメ元だ!!
すると思いもかけずこんなお話をしてくださったのです。
実際に取材にいかれたアメリカの原子力発電所で、この避難訓練について質問しようとした時のこと:
日本は訓練の行程を参加者に公開しているという意味の英単語が思いつかない。なんとかその意図を伝えて質問したのですが、逆に驚かれてしまったというのです。それは、シナリオの有る無しということではありません。
訓練とは参加者に非公開であることが当たり前なので、その行程を参加者に公開する、という発想自体がありません。それを示す言葉もないのです。ひえええええええ~っ!!これには驚きでした。
ふと気がついたら後ろに人がズラリ。な、なんで??!!
すかさず主催者のほうから『サインはダメ、撮影もダメです~!!』
後ろにならんだ一部の人たちからは『せっかくきたのに~ぃ』『しゃしんくらいいいじゃな~い』との叫びが……。
えええええええ!そんなつもりでは~っ!!と、お礼もそこそこに私は会場を飛び出してきました。
外に出たら空の青いこと!!
無防備に空を見上げることができるなんて、幸せなことだよね!
水野倫之さん、ありがとうございました。