横浜焼売(シウマイ)物語2024

2年ぶり再開。ハマっ子のソウルフードは崎陽軒のシウマイ。漫画書き柴犬溺愛。落語らぶ。晴れ時々ランニング、更新随時

河北新報の一番長い日

2011-12-20 | BOOKS & DISCS


今から約5ヶ月前、横浜駅東口の地下の小さなイベントスペースで、ある写真展が開かれました。



恥ずかしい話ですが、『河北新報』という地方新聞社の名前を知ったのは、この震災の直後です。震災の翌日に朝刊を発行、一部は無料で配布したというニュースきいた時、全身鳥肌が立ちました。
何故,そんなことができたのか。

新聞協定(緊急時の新聞発行相互協定)という耳慣れない言葉も、ここで知りました。
これがなければ、創刊以来1日も欠かす事なく発行し続れた『河北新報』は震災当日と翌日休刊を余儀なくされたでしょう。

未曾有の災害だから、と、言い訳も立派に立ったはずです。
しかし、それを許さなかった、許せなかった人たちが確かにそこにいたのです。
ですが彼らもまた被災者でした。
当時の現場の葛藤、混乱はこの3ヶ月後、一冊の本にまとめらました。

河北新報のいちばん長い日 震災下の地元紙
河北新報社 単行本: 272ページ
文藝春秋


この本の最後で、河北新報社は問いかけています。
地元紙とは、報道とは何か?




このイベントの写真パネルとは別のコーナーにひっそりと百科事典ほどの厚さの冊子が置かれていました。
河北新報が震災直後から一ヶ月の間に発行した朝刊と夕刊の縮刷です。
ずしりとした表紙を開くと、次々に記事が飛び込んできます。
写真というより、その当時の緊迫した息づかいのようなものが、紙面からダイレクトに伝わってきました。
重い重い冊子でした。

年末です。
挨拶の最後に「良いお年を!」ときかれるようになりました。
今年は間もなく終わりますが、今春の震災が起こした現象までが終わるわけではありません。
忘れようとするのではなく、なんとか後世に伝えようとする動きに、希望を託したいと思っています。


合わせて再読。

三陸海岸大津波 (文春文庫)
吉村昭 文庫: 191ページ
文藝春秋


奇しくもこの二冊、どちらも文芸春秋社発行でした!!



書いた人にきくのが一番、福島第一原発事故と放射線。水野倫之さんの声にウットリ

2011-09-14 | BOOKS & DISCS



どうしても欲しい本があって、それを買うつもりで書店に入りました。ところがレジに持っていったのは、全く想像だにしなかったこの本。

まあ、この帯、卑怯っちゃ卑怯。
いやいや、まんまとノせられちゃったよ。だって帯がなければ

こんな感じ….

恐るべし、帯。

内容は私みたいな度素人でも、ホントによくわかる。3人の解説者が一章ずつ担当。最終章が座談会という構成。
声高に叫んでいるわけではありませんが、一環しているのは『原発事故は人災である』というスタンス。実際に目でみて、耳できいて、心に感じたことを、更に頭で整理をして淡々と語っています。文章が機をてらっていないので、何を伝えたいのかよくわかります。何より説得力があります。
これから自分がどう考え、何を選んでいくか考えるための足がかりになる良書だと思います。

で、いってきました。
青山一丁目のNHKカルチャーへ。


いやもう、満員御礼。時間帯のせいもあるようですが、女性比率格段に多し。男性は年配の方が奥様と、という感じでちらほら。気のせいか、カルチャースタッフの女性もこの会場の広さにしては若干多め?

講演は1時間半たっぷり。原発事故の概要から。あとからわかったこと、わかることが沢山あることにビックリ。シュミレーションという言葉が何度も出ました。開発はするが、実用に至らない残念な技術のことや、先の国会に提出された東電の黒塗り報告書のことなど。

さて、先の本の中で水野さんは、日本の原発に対する姿勢を解説しています。
エネルギーの平和利用が目的なのだから、原子力発電の技術だけを輸入して開発すれば良いという日本。かたや、原子力の開発に一から取り組み、歴史的には批判されるような失敗をくりかえしながら、原子力エネルギーの怖さも充分知り尽くそうとしているアメリカ。この両者の違いがもっとも顕著に現れているのが、原子力発電所の安全対策。
その一つに有事を想定した防災訓練があります。
その代表的なものは避難訓練。日本ではその行程を一覧にして参加者に『公開』します。
何月何日にどういう事故であるかという設定で避難訓練が始まります。シナリオがあって、何時何分に揺れ。5分後に揺れがおさまったので避難開始、点呼。そのつどアナウンスが入り、ゾロゾロと移動。停電、復旧、どこそこ発火、数分後無事に鎮火、再三アナウンスがあり、またゾロゾロ。最後は、『みなさんご協力ありがとうございました。』で無事終了。

アメリカでは.訓練の参加者には『非公開』。訓練の日にちは事前に知らされていますが、開始時間も内容は全く知らされません。現場はその時の事故内容によって対応を考えなくてはならず、訓練とわかっていても緊張の連続です。つまり常に抜き打ち。そしてその対応はそのつどチェックされて、何がまずかったか後日徹底的にディスカッションされるそうです。

この話がものすごく印象に残っていたのですが、この日の話の流れで質問タイムに質問できませんでした。
そこで思いきって帰り際に、直接声をかけさせていただきました。ええぃ!ダメ元だ!!

すると思いもかけずこんなお話をしてくださったのです。
実際に取材にいかれたアメリカの原子力発電所で、この避難訓練について質問しようとした時のこと:
日本は訓練の行程を参加者に公開しているという意味の英単語が思いつかない。なんとかその意図を伝えて質問したのですが、逆に驚かれてしまったというのです。それは、シナリオの有る無しということではありません。訓練とは参加者に非公開であることが当たり前なので、その行程を参加者に公開する、という発想自体がありません。それを示す言葉もないのです。ひえええええええ~っ!!これには驚きでした。

ふと気がついたら後ろに人がズラリ。な、なんで??!!
すかさず主催者のほうから『サインはダメ、撮影もダメです~!!』
後ろにならんだ一部の人たちからは『せっかくきたのに~ぃ』『しゃしんくらいいいじゃな~い』との叫びが……。

えええええええ!そんなつもりでは~っ!!と、お礼もそこそこに私は会場を飛び出してきました。


外に出たら空の青いこと!!

無防備に空を見上げることができるなんて、幸せなことだよね!



水野倫之さん、ありがとうございました。

緊急解説! 福島第一原発事故と放射線 (NHK出版新書 353)
水野 倫之,山崎 淑行,藤原 淳登
NHK出版

つむじ曲がりのメアリーさん、あなたの間取りをどうする気?

2011-07-05 | BOOKS & DISCS

佐藤和歌子/(株)リトル・モア社/2003.4


マドリスト、というらしい。窓のリストではありません。間取り図のコレクター。
これに、間取り図をみるのが好きな人もくわえていいんじゃないでしょうかね。

遠い昔、誰もが一度はシート一枚でおままごとをしたり、地面に書いた四角い枠を秘密基地に仕立てたりしたのではないかしら。限られた空館を仕切るというDNAは人間の記憶の何処かに紛れ込んでいるに違いない、と思う。だって、自分ん家以外の間取り、気になりませんか?

私は気になる、ものすごーく。例えば歴史の授業中。資料に描かれている「寝殿造り」とか、「パルテノン宮殿」とかの平面図を眺めながら、「寝殿造り」なのに、寝室が見あたらないとか、宮殿なのに柱ばかりで人は何処に暮らしているのかとか考えていたくらいですもん。
鉄道の時刻表を眺めるだけで旅行した気分になれる人がいるくらいだから、間取りを図を眺めているだけでその家に住んだ気分になれる人もいるはず。間取り図は空想への扉。

さて、この本には普通の間取りはありません。風変わりな間取り(それも実在している)ばかりをたっぷり収納。
本のカバーがまた凝っていて、外して広げると裏には…


何処をどうひねると、この限られた空間をこんな風に仕切れるのか不思議不思議。一つ一つの小さな間取りを眺めながら、一時その部屋の住人になってみるのもまた、楽しいですよ。





余談ですが、この本の初版が2003年。巻末の著者プロフィールに宅建資格取得に向けて勉強中、とありました。当時何の事かさっぱりわからなかったのだけれど、この5年後にまさか自分が挑戦するハメになるとは思いもよらなんだ。