補足:「大河への道」とは、立川志の輔師の創作落語です。郷土の偉人伊能忠敬をなんとか大河ドラマ化しようと奮闘する人々の話。志の輔師が佐原市(現・香取市)の伊能忠敬博物館を訪れた時の感銘をもとに2011年に初演。以来人気の演目として同時になかなかチケットの取れない高座として不動の地位にあります。映画化決定。5月ロードショー。
第一章・ドタキャンへの道はこちら
第二章・佐原への道はこちら
さて私はちょっとウキウキしていました。
目指す伊能忠敬博物館は佐原にあります。今回の旅行のコースには入っていませんでしたが、自由時間があるのでこの時に訪問できるかも!付き添いとはいえなんという幸運。
が、現実はなかなかスムーズにはいかないのでした。
昼過ぎに佐原に到着。酒蔵見学の後次の移動時間までが自由時間になりました。
40分。
行くなら今しかない!他の皆さんが佐原の町並みを堪能しているこの時がチャーンス!!
休憩の酒蔵から博物館までの距離は私の足で5分くらい。しかし、母は足が悪くて早く移動はできません。往復におそらく30分はかかってしまう。あいにく車椅子の貸し出しはなく、いっそ背負って行こうか、いや悩んでいる間時間はなくなる…
「ママ。伊能忠敬の博物館に行かない?」
「伊能忠敬なら前に見たからいいわ。」
「え??」
「佐原も来たことがあるし。」
は、初耳ですよ、お母様!!
(母は油絵が趣味です。元気なころは同好のグループであちこちスケッチ旅行に出かけていました。)
「Sっちゃん、あんた行きたいところがあるなら行ってくれば。私はここで休んでるから」
ああ、お母様!ありがたや〜!!
と、母の愛に甘えて一人いざ伊能忠敬博物館へ向かいました。(ルンルン♪)
ご存じでしょうが、
伊能忠敬は初めて正確な日本地図を作った人です。
ドローンも航空写真もコンピューターもない時代に、日本国中を徒歩で歩いて測量をして回った想像を絶する行動力の人です。
その期間17年!!
50歳まで佐原の米問屋の主人として地域に貢献し、
隠居後に江戸へ出て有名な学者に弟子入りをし一から測量の勉強をし、
幕府の許可を得て日本中を歩いて測量しまくり計算をしまくり
まるで空中から映し取った如くの日本地図を完成させました。
凄いロマンチック。どんなすごい資料があるのかしらと期待は高まります。
しかし、私はやってしまいました!!!
あはははは…
もう笑うしかない…
フラフラしていて
曲がる道を一本間違えてしまったらしい…
んが!!
神様はちょっといた!!
目の前にあったのが
伊能忠敬旧宅!!
日本地図作成の旅に出られる前の伊能忠敬様はここで米問屋を営んでおられたのです。
もう迷っている時間はない!
高なる胸を抑えつつチケットを購入
…しようとしたその時、たからかに携帯が鳴ったのです!
みれば着信は『母』から。
何かあったのか?やっぱり置いてこなければよかった!
過日の風呂騒動が思い出されます。
「ママ!どうしたの??!」
「どこにいるの?早く戻ってらっしゃい」
「何かあった?」
「そうじゃないけど、心配だから」
「まだ休憩時間があるから、そこにいてね。見学したらすぐ戻るから。○○さん(ツアコン)はいるの?」
「ここにいるわよ。」
あーーよかった。何かあったわけじゃなかった…。
「待っててね。すぐ戻るから」
さあ、見学だ!!
するとまた携帯が。
着信は、母。
今度こそ何かあったのでは?!
慌てて取ると
「Sちゃん、どこにいるの?」
「今、伊能忠敬さんち(博物館ではない)」
「早く戻っていらっしゃい。」
「わかった、でもちょっと時間かかるかも。」
ああ悪かったなあ、やっぱり顔見知りの幹事さんが一緒とはいえ心配なんだなあ。急いで見学して戻ろう。(でも、見学はする)
ここからは写真もほとんど取らずに超早足です。
説明文も斜め読み。
大急ぎで出口へ向かいました。
でも心にしっかり焼きついたものがあります。
わかる人にはわかる!
この道具を持って測量したのですよ!
御用の旗はいわば黄門様の印籠のようなもの
これがなければ旅はおろか測量などできません。当時は誰もが気軽に旅行などに出かけることは許されていませんでした。
そして手作りの測量器具。
これを大八車に積み、わずかな同行者と共に『歩いて』測量をしたのです。
後で知ったことですが、伊能忠敬は自らが測量機となるために
自分の歩幅が常に一定になるよう歩いたそうです。
不覚にも鳥肌が立って涙が出そうになりました。
伊能忠敬が測量に費やしたのは17年。
私が見学に費やしたのは10分ほど。
(おまけに目的地が微妙に違ってしまったし)
感傷に浸る間もなく
旧宅を後にいたしました…
ダッシュ!!
あ!また携帯が……。
せっかくなので
素敵な佐原写真と博物館のリンクを貼っておきます。
第四章(最終章)に続く!!
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